著者
児玉 謙太郎 牧野 遼作 清水 大地
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J102-A, no.2, pp.26-34, 2019-02-01

本研究では,じゃんけんというマルチモーダルなコミュニケーションにおいて,音声による聴覚情報が参与者間の身体の協調・同期に及ぼす影響を実験的に検討した.その際,力学系アプローチという視点からコミュニケーションを自己組織化現象と捉えた.そして,コミュニケーション過程を参与者間の知覚情報を介したリアルタイムな行為の調整過程とみなし,身体協調を非線形時系列解析により評価した.実験により「最初はグーじゃんけんぽん」という掛け声を発する通常条件と掛け声を発しない声なし条件を比較した結果,じゃんけんの最終段階での参与者2名の手の振り降ろしの時間差には,条件間で有意な差はみられなかった.一方,行為の開始から終了に至る過程の参与者の手の協調における安定性と予測可能性に有意な差がみられ,通常条件のほうが,参与者間の手の協調が安定し,予測可能性が高い動きをしていたことが明らかとなった.これらの結果から,ヒトは数秒という短い時間に行われるコミュニケーションであっても,1)聴覚情報が利用できない条件では参与者らはリアルタイムに視覚情報を利用し,結果的に同期を達成できるよう柔軟に振る舞うこと,ただし,2)その行為の調整過程での身体の協調には聴覚情報が影響すること,が示唆された.

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じゃんけんの際に「最初はグー」があることで、ごく短い時間で参加者間の身体の協調や同期ができるという(児玉他 2019)これを広めたのが志村けんさんだったのか... https://t.co/jufL5T6cub https://t.co/KmaoGcUbwc

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