著者
児玉 謙太郎 岡﨑 俊太郎 藤原 健 清水 大地
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.593-608, 2021-12-01 (Released:2021-12-15)
参考文献数
119

This review article addresses behavioral synchronization between people, which is widely observed in daily communication. In particular, researchers have investigated the social function, cognitive processes, and mechanisms of behavioral synchronization from various perspectives. It is suggested that behavioral synchronization is one of the bases of human communication. However, researchers face difficulties in providing an overview of research on synchronization because previous studies have covered a broad range of topics. Furthermore, these studies have been subdivided and often include their own individually developed theories and methodologies. We categorized a vast range of existing literature into three research approaches to review synchronization studies and related research topics: 1) the social psychology approach, focusing on social factors and effects, 2) the cognitive approach, based on shared representation and predictive mechanisms, and 3) the dynamical systems approach, derived from the self-organization theory. We discuss their commonalities, differences, and mutual connectivity while considering the future direction of synchronization studies.
著者
清水 大地 児玉 謙太郎 関根 和生
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J104-A, no.2, pp.75-83, 2021-02-01

上演芸術の一つの魅力として,複数名の演者間に生じる複雑な関わり合いが挙げられる.近年では,この関わり合いの特徴を同期・協調の理論を適用し,定量的に検討する試みが営まれつつある.以上の研究は,主に単独の表現チャンネル(頭のリズム運動,歌声,腕の運動等)を対象とし検討を行ってきた.一方で上演芸術では,表情,ジェスチャー,リズム運動等のように複数の表現チャンネルを通して演者達が関わり合う様子が観察されており,その過程に魅力が含まれるとする理論的提案もなされつつある.本研究では,以上の複数の表現チャンネルを通した関わり合いの探索的・定量的検討を試みた.具体的には,近年演者間の同期・協調の検証対象として着目されている競争的場面としてフリースタイルラップバトルを対象とし,熟達したラッパー2名の関わり合いを手,頭,腰の同期・協調の様相に着目して測定・解析した.結果,複数の表現チャンネルにおいて演者間の同期が生起する様子,手では同位相同期,頭・腰では逆位相同期と演者間の同期の様相がチャンネルにより異なる様子,手と頭・腰を異なる役割を担うチャンネルとして利用していた様子,が観察された.
著者
児玉 謙太郎 牧野 遼作 清水 大地
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J102-A, no.2, pp.26-34, 2019-02-01

本研究では,じゃんけんというマルチモーダルなコミュニケーションにおいて,音声による聴覚情報が参与者間の身体の協調・同期に及ぼす影響を実験的に検討した.その際,力学系アプローチという視点からコミュニケーションを自己組織化現象と捉えた.そして,コミュニケーション過程を参与者間の知覚情報を介したリアルタイムな行為の調整過程とみなし,身体協調を非線形時系列解析により評価した.実験により「最初はグーじゃんけんぽん」という掛け声を発する通常条件と掛け声を発しない声なし条件を比較した結果,じゃんけんの最終段階での参与者2名の手の振り降ろしの時間差には,条件間で有意な差はみられなかった.一方,行為の開始から終了に至る過程の参与者の手の協調における安定性と予測可能性に有意な差がみられ,通常条件のほうが,参与者間の手の協調が安定し,予測可能性が高い動きをしていたことが明らかとなった.これらの結果から,ヒトは数秒という短い時間に行われるコミュニケーションであっても,1)聴覚情報が利用できない条件では参与者らはリアルタイムに視覚情報を利用し,結果的に同期を達成できるよう柔軟に振る舞うこと,ただし,2)その行為の調整過程での身体の協調には聴覚情報が影響すること,が示唆された.
著者
児玉 謙太郎 山際 英男
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回 (2017)
巻号頁・発行日
pp.1O1OS30a2, 2017 (Released:2018-07-30)

本研究では、綱渡りを競技化したバランス・スポーツ“スラックライン”がバランス能力に及ぼす影響を調べる。スラックラインでは、不安定なラインの上で全身を協調させ動的にバランスをとる必要があり、アスリートやリハビリテーション対象者の体幹・姿勢バランスのトレーニングとして着目されている。本発表では、スラックラインでのトレーニング(週1回20分×4週間)を行った事例研究の結果を報告する。
著者
児玉 謙太郎 園田 耕平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

近年、認知科学分野でSynergyという概念が着目されている。Synergyとは、多自由度複雑系が、安定的な振る舞いを柔軟に組織化する事態を説明するために考案された概念であり、次元の縮減(微視的には多自由度な系が如何に自由度を減じるか)、相互補償(要素間の柔軟な相互作用関係)などの特徴をもつ。本発表では、運動研究等の事例を通しSynergyの現代的解釈を紹介し、内部観測理論との関連について論じる。