著者
須藤 靖
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.87-94, 2015-02-05 (Released:2019-08-21)

物理学会誌の記事のほとんどは難しい.私の知る限り少なくとも30年以上前から編集委員会の方々が編集後記で繰り返し,わかりやすい記事をと訴えかけ,かつそれに向けた不断の努力をされてきたにもかかわらず.多分にこれは,非専門家のためにではなく,身近な専門家の顔を浮かべながら執筆してしまう著者のせいである.これが良いことか悪いことかは自明ではないが,著者が「釈迦に説法」を避けるべく書いた解説が,大多数はその分野の非専門家である平均的物理学会員にとって「馬の耳に念仏」になってしまい,ほとんど読まれなくなっているとするならば,あまりにももったいない.一般相対論の研究者ではない私が本特集の序論的解説を依頼されたのは,まさにそのためであろう.というわけで,今回は学生時代に一般相対論の講義は受けたもののほとんど覚えていない,という平均的物理学会員を念頭においた平易な,といっても一般向け啓蒙書とは異なる解説を試みたい.したがって,もしも「釈迦に説法」あるいは「厳密には正しくない」と感じられた方がいたならば今回の試みは大成功だと言える.該当しそうな方はただちに本解説をスキップして以降の記事に進まれることを強くお薦めする.

言及状況

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[物理][相対論][宇宙論] 一般相対論ミニマム
"そ もそ も,物 理 学 とは 常 に 自然 界 の よ り正 確 な記 述 を 目指 した 近 似 理 論 の 一般 化 ・精 密 化 と い う営 み な の で あ り"
"怪しげな実験的/観測的「発見」が取りざたされるたびに,ただちにラグランジアンをちょこまかといじくって膨大な数の「新モデル」を発表することに汲々としている昨今の職業的理論物理屋" どこの業界もそうだよね

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なんだか難しそうな物理学理論の代名詞である「相対性理論」。特に一般相対性理論は難しい理論ですが、一般相対性理論のエッセンスをコンパクトにまとめた素晴らしい記事です。 https://t.co/k07zgjsONF
一般相対性理論って、ミニマムなエッセンシャルだけ抜き出すとコンパクトにこれだけに纏められるのすごいと思う。 https://t.co/zuYn58aRq4
おもしろかった。須藤さん文章うまいなぁ。 J-STAGE Articles - 一般相対論ミニマム(<特集>発展し続ける一般相対論-時空論の起承転"望"-) https://t.co/xggrIdPjlm
須藤 靖「一般相対論ミニマム」 https://t.co/on2nw1VSYq ≪怪しげな実験的/観測的「発見」が取りざたされるたびに,ただちにラグランジアンをちょこまかといじくって膨大な数の「新モデル」を発表することに汲々としている昨今の職業的理論物理屋も,再度本来の一般相対論の心に立ち返り,≫
https://t.co/7cITzitrqS
「日本物理学会誌の記事のほとんどは難しい」 https://t.co/uZxzhRg52C 「著者が『釈迦に説法』を避けるべく書いた解説が大多数の...会員にとって『馬の耳に念仏』になって...」 座標系に依存しないことを「倫理」とする一般相対論。それがテンソル添字で迷子になるのは皮肉。今度こそわかる解説...?

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