著者
梶田 真
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.99-117, 2011-03-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
64
被引用文献数
4 3

本稿では,政策的・社会的背景と関連づけながらBleddyn Daviesの研究を展望し,彼の研究のどの部分がどのような観点から地理学者によって注目・受容されたのか,そして,両者の関係がどのように変化していったのかを考察した. Daviesが地域的公正概念を案出した主たる契機は,10カ年保健福祉計画にあると考えられ,福祉国家の時代における彼の研究は問題告発的なものにとどまらず,問題解決のための政策や制度のデザインにまで広がっていた.福祉国家が転換期を迎えた1970年代後半以降,Daviesと彼を所長とするPSSRUのメンバーはより安い費用でよりよい効果を達成することができるケアシステムの提案のために注力した.彼等の努力はコミュニティケア実験プロジェクトと福祉の生産アプローチに結実した.1970年代における公共サービスの地理学の台頭の中で,地理学者は彼の地域的公正概念に注目した.しかし,体制批判的なスタンスが英語圏地理学において支配的な地位を獲得した1980年代以降,地域的公正概念は改良主義者の道具として強く批判されるようになり,後期のDaviesやPSSRUの研究はほとんど紹介・参照されることはなかった.

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【地理学評論掲載論文】梶田 真 2011.Bleddyn Daviesの研究と英語圏地理学における受容,地理学評論84A,99-117.https://t.co/oghdp311e1

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