- 著者
-
外枦保 大介
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.1, pp.40-57, 2012-01-01 (Released:2016-12-01)
- 参考文献数
- 115
- 被引用文献数
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本稿の目的は,進化経済地理学の主要業績を読み解くことを通じて,進化経済地理学の発展経路を探索し,今後の可能性を検討することである.進化経済学は,ルーティンを鍵概念として議論を展開しており,議論の特徴の一つである方法論的な多様性や開放性は,進化経済地理学に受け継がれている.重層的空間スケールにおける経済システムの進化を議論する進化経済地理学のうち,本稿では,経路依存性と一般ダーウィニズムのアプローチの議論動向を取り扱った.前者のアプローチでは,地域の発展経路を描く手法が開発される一方で,経路依存性と均衡・非均衡との関係が再考されている.後者のアプローチでは,生物学の概念が導入され,特に「関連した多様性」は関心を呼んでいる.今後の可能性として,理論と実証をつなぐ中間概念の整備,有意義な事例研究の蓄積と既存研究の再評価,重層的な空間スケールにおける多様な主体の進化を取り扱うことを指摘した.