- 著者
-
村中 亮夫
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.13, pp.903-923, 2004-11-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 46
- 被引用文献数
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本稿では,面的に偏在する空間財を評価する仮想市場評価法 (CVM) として,支払意思額 (WTP) を距離帯別仮想市場から推定する方法論を提示した.この手法を用いて,スギ花粉飛散量の減少による健康リスクの削減を意図した,スギ人工林整備の便益を評価した.その結果,便益に対するWTPは,世帯年収の影響を受けていることがわかった.そして,所得変数による便益移転評価モデルを用いて便益移転を行うと,山口県におけるスギ人工林整備事業(2002~2011年度)の便益は,山口県民にとって約144億円(現在価値化)の効果が期待できると推定された.このスギ人工林単位面積当たり便益は,スギ人工林密度の低い地域,世帯密度の高い地域で高くなる.また,便益の値は,スギ人工林密度の高い地域の中でも,世帯密度の高い山陽側で高いことがわかった.この推定便益は県林業費の約2割を占めている.