- 著者
-
南埜 猛
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.3, pp.160-175, 2005-03-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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本研究は,急速に都市化・工業化が進展している発展途上国の諸都市における都市用水の現状と課題を,インド・バンガロールを事例に,水資源開発と水利用実態の2側面から検討した.バンガロールが500万人もの人口を抱えるまでに発展できたのは,数次にわたる水資源開発が実現できたからである.現在では約100kmも離れたカーヴェーリ川を水源とし,500mも低い地点よりポンプアップし水を得ている.水利用において,水道局からの給水が不確実・不十分であるがゆえに,工場などでは民間水供給会社からの水の購入や自家用井戸の設置,また家庭では地下・屋上タンクの設置などの対応がみられた.このように,用水の確保に関わって水利用者による二重の投資がなされている.さらに都市用水に関わる費用負担については,水道料金体系の見直しにより貧困層の負担が増加し,またスクォッターなど水道契約をしていない者への給水を制限する状況にある.発展途上国では,貧困層が生存権として最低限の生活用水を確保できるよう十分な配慮がなされるべきことが求められる.