- 著者
-
澤田 康徳
高橋 日出男
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.2, pp.70-86, 2007-02-01 (Released:2010-03-12)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
-
7
5
3
本研究では, 夏季の東京都心部における対流性降水の降水強度と, 関東地方スケールの気温場および地上風系場・気圧場との関係を考察した. 関東平野全域に北東や南よりの風が卓越する場合には降水強度が小さく, 従来指摘されているように, 鹿島灘からの東よりの風と相模湾からの南よりの風の両者が内陸に進入する場合に降水強度の大きい事例が多い. 都心部に顕著な収束域が形成される後者においても, 都心部に対する相対的な低温域は, 海よりの風の進入によって気温上昇が抑制される沿岸域にほぼ限定される. 海よりの東風は, 都心部と沿岸域との気温差の増大に先行して出現しており, 各タイプの風系は, むしろ中部山岳域を含む関東地方スケールの気圧傾度に対応して現れている. 海よりの風の進入や強い雨の発現には, 都心部を含む内陸の高温域が誘因として作用するよりも, 中部山岳域の局地低気圧に関連した関東地方スケールの気圧場の条件が重要と考えられる.