著者
大和 広明 三上 岳彦 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.325-340, 2011-04-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
17 15

We analyze the influence of sea breeze on temperature distribution in the Kanto Plain (central Japan) on a day that a sea breeze front was detected (known as sea-breeze front days) using high-resolution temperature data observed by our research team. The high-temperature area on sea breeze front days moves northwest from central Tokyo, and was located at Kawagoe city (middle Kanto Plain) at 14 JST, and the northern Kanto Plain at 16 to 18 JST, respectively. This high-temperature area appears at the head of the sea breeze front to the leeward of central Tokyo, where the daily maximum temperature is highest in Kawagoe city and the northern Kanto Plain. After the sea breeze front passes, the area where the temperature is higher than that at the circumference is distributed in the shape of a wedge. This wedge-shaped area is located to the leeward of central Tokyo where the wind from Tokyo Bay and Sagami Bay forms a convergence zone. The high-temperature area around Kawagoe city, which cannot be found on days with strong winds, is formed from the hindrance of cold air advection caused by sea breeze front penetration. On the other hand, high temperatures in the northern Kanto Plain may not be related to the penetration of sea breeze fronts, which do not reach the northern Kanto Plain on days when the daily maximum temperature is recorded. However, the temperature in the northern Kanto Plain is higher on sea breeze days than on strong southerly wind days, and this suggests that local circulation plays an important role in causing high temperatures in the northern Kanto.
著者
三上 岳彦 永田 玲奈 大和 広明 森島 済 高橋 日出男 赤坂 郁美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100193, 2017 (Released:2017-10-26)

筆者らの研究グループでは、東京首都圏におけるヒートアイランドと短時間強雨発生の関連を解明する目的で、気温・ 湿度(143地点)、気圧(49地点)の高密度観測(広域METROS)を行っている。2015年7月24日の14:00-15:00に、東京南部の世田谷区を中心に時間雨量が約50mmの短時間強雨が発生した。そこで、この日の短時間強雨について、事例解析を行った。この事例解析から、世田谷付近で増加傾向を示す短時間の局地的豪雨の要因として、降雨開始3時間前頃に高温域が形成されると、その約1時間後に熱的低気圧が発生し、さらに2時間後には、南からの海風進入による湿潤空気の流入で水蒸気量が急激に増加して豪雨となると考えられる。豪雨開始と同時に急激な気圧の上昇が起こるが、これは発達した積乱雲内部での強い下降流によるものと推察される。
著者
澤田 康徳 高橋 日出男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.509-528, 2002-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
24
被引用文献数
3 1

本研究では,夏季の関東地方におけるメソβスケール降水域の発現・移動に関する地域的特徴を,レーダーアメダス解析雨量に基づく多数事例から明らかにし,それと上層風および地上風系場との関係を考察した.降水域は夕方に八溝山・男体山・榛名山付近や秩父山地など関東平野周辺の山地域で多発する.多くの事例では降水域はほとんど移動しない(停滞型)が,榛名山付近で発現した降水域は熊谷付近を経て東~東南東進する(移動型)ことが多い.上層風 (500~700hPa) の風向は停滞型・移動型とも西よりの風が卓越しており,風速は移動型の方が多少強い傾向があるものの,個々の降水域の移動速度とは相関が低く,降水域の停滞・移動は上層風だけでは説明できない.地上風系場に着目すると,移動型の場合には,降水域の移動方向に沿って侵入経路の異なる海風などにより形成される収束域が存在する.停滞型の場合は,降水域の発現地点付近に収束域が形成され,降水域東側には顕著な収束域は存在しない.収束域は関東平野中央部をほぼ東西に横切って形成されるため,榛名山付近で形成された降水域が熊谷付近を経て東進しやすいと考えられる
著者
岡 暁子 高橋 日出男 中島 虹 鈴木 博人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.233-245, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,東京都と埼玉県を主な対象とし,15年間の夏季(6~9月)における,稠密な降水量観測網(290地点)の時間降水量データを用いて,降水域(≧5 mm/h)の局地性と広域性に着目して強雨(≧20 mm/h)発現の地域的な特性を解析した.その結果,関東山地東麓と都区部西部や北部で局地的強雨の頻度が高く,それによる降水量も多い.全強雨に占める局地的強雨の頻度割合は,都区部北部から埼玉県東部で大きく,総降水量への寄与も大きい.一方,関東山地や埼玉県西部,多摩地域では広域的な降水に伴う強雨の頻度や降水量が多い.また,南風時に都心の数十km風下側の埼玉県東部で夏季を通して局地的強雨の頻度割合が大きいことに関し,強雨発現と風系との関係を調べた.局地的強雨には基本的に風の収束が関与しており,いわゆるE-S型風系だけでなく,関東平野内陸からの北風に伴う収束や,相模湾からの南風と東京湾からの南東風との収束も重要と考えられた.
著者
大和 広明 三上 岳彦 高橋 日出男
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.325-340, 2011-04-25
参考文献数
12
被引用文献数
3 15

We analyze the influence of sea breeze on temperature distribution in the Kanto Plain (central Japan) on a day that a sea breeze front was detected (known as sea-breeze front days) using high-resolution temperature data observed by our research team.<br> The high-temperature area on sea breeze front days moves northwest from central Tokyo, and was located at Kawagoe city (middle Kanto Plain) at 14 JST, and the northern Kanto Plain at 16 to 18 JST, respectively. This high-temperature area appears at the head of the sea breeze front to the leeward of central Tokyo, where the daily maximum temperature is highest in Kawagoe city and the northern Kanto Plain. After the sea breeze front passes, the area where the temperature is higher than that at the circumference is distributed in the shape of a wedge. This wedge-shaped area is located to the leeward of central Tokyo where the wind from Tokyo Bay and Sagami Bay forms a convergence zone. The high-temperature area around Kawagoe city, which cannot be found on days with strong winds, is formed from the hindrance of cold air advection caused by sea breeze front penetration.<br> On the other hand, high temperatures in the northern Kanto Plain may not be related to the penetration of sea breeze fronts, which do not reach the northern Kanto Plain on days when the daily maximum temperature is recorded. However, the temperature in the northern Kanto Plain is higher on sea breeze days than on strong southerly wind days, and this suggests that local circulation plays an important role in causing high temperatures in the northern Kanto.
著者
福島 あずさ 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.127-137, 2012-03-01 (Released:2017-02-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

ヒマラヤ南面のネパールにおいて,長期の日降水量データを用い,降水量と降水特性の季節変化およびその地域性を調べた.クラスター分析によって降水量季節変化の地域性に基づく地域分類を行った結果,西部ミッドヒル・テライ,西部山岳,東部ミッドヒル,東部テライの4地域に分類された.平均日降水量の季節変化の特徴として,4~5月のプレモンスーン季の降水量の増加が,東部地域を中心に顕著であった.また,西部山岳地方では年間を通じて日降水量が少ない.各地域における降水特性の季節変化の比較から,西部山岳地方を除き,夏季に月降水量,降水日数,降水強度の増大期が見られ,ピークは7月であった.また西部の全域と東部ミッドヒル地方の一部では,冬季の降水量,降水日数,降水強度が大きい傾向にある.さらに東部テライ地方は,9月を除く4~11月の降雨強度が他地域と比べて最も大きく,11~3月は最も小さいことから,降水量の季節変化が最も大きい地域といえる.
著者
瀬戸 芳一 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.529-552, 2011-11-01 (Released:2016-09-29)
参考文献数
24
被引用文献数
1

一般には,地上風の収束域では上昇流,発散域では下降流の存在が大気下層で期待される.本研究では,関東平野の夏季日中における局地風構造の把握を目的として,海風日の地上観測風から発散量分布を求め,顕著に認められた収束域と発散域との出現位置や時間的関係について検討した.その際に,風速の観測高度が観測点ごとに異なるため,周囲の土地利用状況をもとに各観測点における地表面粗度を推定し,対数則に基づいて統一高度における風速を求めた.午前中には,水平規模が10~30km程度の典型的な局地循環として,東京湾付近に海風循環,関東北部には谷風循環がそれぞれ独立して存在することが示された.午後になると,谷風循環に伴う群馬・埼玉県境付近の発散域は弱まって,関東北部の谷風循環は不明瞭となり,広域海風の発達に対応した循環構造の変化を観測風の解析からもとらえることができた.
著者
澤田 康徳 高橋 日出男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.70-86, 2007-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
7 3 3

本研究では, 夏季の東京都心部における対流性降水の降水強度と, 関東地方スケールの気温場および地上風系場・気圧場との関係を考察した. 関東平野全域に北東や南よりの風が卓越する場合には降水強度が小さく, 従来指摘されているように, 鹿島灘からの東よりの風と相模湾からの南よりの風の両者が内陸に進入する場合に降水強度の大きい事例が多い. 都心部に顕著な収束域が形成される後者においても, 都心部に対する相対的な低温域は, 海よりの風の進入によって気温上昇が抑制される沿岸域にほぼ限定される. 海よりの東風は, 都心部と沿岸域との気温差の増大に先行して出現しており, 各タイプの風系は, むしろ中部山岳域を含む関東地方スケールの気圧傾度に対応して現れている. 海よりの風の進入や強い雨の発現には, 都心部を含む内陸の高温域が誘因として作用するよりも, 中部山岳域の局地低気圧に関連した関東地方スケールの気圧場の条件が重要と考えられる.
著者
瀬戸 芳一 福嶋 アダム 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.223-232, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では,夏季の関東地方南部を対象として,風向の定常性を示す定常度や風向の日変化に着目し,都市の気温分布とも密接に関連する局地風系の交替時刻の地域分布を検討した.日中と夜間との風向変化が内陸で明瞭な海陸風日を抽出し,定常度の変化から判断した交替時刻の等時刻線を描いたところ,日中には海風前線に対応する海岸線に平行した等時刻線の内陸への進行が認められた.一方,夜間の陸風への交替は海風よりも進行速度が遅く,翌5時においても東京都区部の大部分では陸風への交替がみられなかった.東京都区部など海岸に近い地域ほど,1日を通して南寄りの風が卓越し陸風が到達しない日数の割合が大きく,特に東京湾岸では海陸風日のうちの約60%を占めた.そこで,海陸風日の中で沿岸部まで陸風が到達した日について改めて交替時刻を求めたところ,陸風への交替は海陸風日よりも早く,翌5時には東京都区部のほぼ全域において陸風への交替が認められた.
著者
瀬戸 芳一 福嶋 アダム 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.223-232, 2019

<p>本研究では,夏季の関東地方南部を対象として,風向の定常性を示す定常度や風向の日変化に着目し,都市の気温分布とも密接に関連する局地風系の交替時刻の地域分布を検討した.日中と夜間との風向変化が内陸で明瞭な海陸風日を抽出し,定常度の変化から判断した交替時刻の等時刻線を描いたところ,日中には海風前線に対応する海岸線に平行した等時刻線の内陸への進行が認められた.一方,夜間の陸風への交替は海風よりも進行速度が遅く,翌5時においても東京都区部の大部分では陸風への交替がみられなかった.東京都区部など海岸に近い地域ほど,1日を通して南寄りの風が卓越し陸風が到達しない日数の割合が大きく,特に東京湾岸では海陸風日のうちの約60%を占めた.そこで,海陸風日の中で沿岸部まで陸風が到達した日について改めて交替時刻を求めたところ,陸風への交替は海陸風日よりも早く,翌5時には東京都区部のほぼ全域において陸風への交替が認められた.</p>
著者
高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

はじめに<br>都市特有の環境に伴って現れる大気現象(都市気候)には様々な空間スケールがあり,これまで多様な分野において観測,解析,数値モデルに基づく数多の研究が行われてきた。東京は都区部の直径が約 30 km,都心3区だけでも直径 10 kmに近い大都市であり,都市化した領域は広域にわたる。付表は東京を想定し, 10n mごとの空間スケールで大まかに区分した温度環境を中心とする都市大気の現象例と,それを観測的に扱った研究の主な観測手法・資料の概要をまとめている。本報告では,付表中の①~④に位置付け可能と考えられる,東京およびその周辺を対象として実施,あるいは構想している主として観測的研究を紹介して話題提供とするとともにご意見ご批判を賜りたい。 <br><br>観測的研究<br>①生活空間の温度環境<br> 気象観測は,ある範囲の代表的な値を知るために,一般には観測露場のように整備され人間の立ち入らない環境で行われるが,熱中症対策などの応用面においては,実際の人間の生活空間や1日の行動によって経験する環境を詳細に捉える気象観測が必要であろう。通勤や買い物行動を模し,朝に大学を出発して南大沢駅から京王相模原線に乗車し,日中は新宿駅周辺で行動して,夕方に大学に戻るまでの気温やWBGT等の経過を夏季晴天の複数日について観測した。適切に環境の気温等が得られているかという懸念もあるが,街路上において気温は一般にAMeDASや常監局より高い値を示し,場所によっては5℃以上高く,WBGTも午前中から「危険」レベルを何度も超えていた。熱中症発生の危険性を判断するためにも,気温や相対湿度,放射を含めた都市内部における熱環境の不均一性(場所によるばらつき)の大きさを把握する必要があろう。<br>②~ 1 kmスケールの都市内部構造に起因する不均一性<br>都市表面の幾何学的特徴として,東京都都市計画局作成のGISデータ(平成8,9年)に基づいて 50 mメッシュ内の最大建築物階数を異なる空間スケールで平滑化した建築物階数分布を求めた。平滑化の空間スケールが500 m程度までは主要道路に沿って, 5 km以上では東京駅付近を中心とした同心円状に階数が大きい。一方で, 2 km程度では都心(霞が関・大手町),新宿,池袋などの局所的な階数の極大が明瞭となる。この空間スケールは,集中観測と広域観測(付表)の狭間にあたっており,観測的に気温分布や風系などに与える影響(都市気候への反映)の有無はよく捉えられていない。<br>③ 夜間の都区部気温分布と陸風吹走および都市境界層構造との関係<br>都心と都区部外側との気温差が大きい冬季の晴天弱風夜間には,都区部の西部や東部に明瞭な気温急変域が認められる。この時には夜間の陸風と考えられる内陸からの北西風が吹走するが,夜半前から早朝にかけて内陸側郊外では風速が次第に弱まる一方で,気温急変域の高温側(都心から沿岸部)では風速が維持・強化する傾向がある。こうした差異には,郊外と都心の接地層安定度との関係が示唆される。しかしながら,陸風の気温鉛直構造の変形プロセスや温度場との相互作用はよく分かっておらず,たとえば逆転層破壊と気温急変域との関係や,陸風侵入に伴う都心域の接地層の変化などを,冬季ならびに気温急変域が不明瞭な夏季について明確にする必要がある。<br>④ 日中海風吹走時における都心風下側の大気構造<br>東京都市域の影響によって海風循環が強化される一方で,海風前線の内陸側への進行は都心の風下側で停滞傾向を示すとされる。夏季日中においては,海風前線のやや内陸側に地上気温の極大域の存在が指摘される。また,戸田市荒川河川敷におけるドップラーソーダによる風速三次元成分の観測(高橋ほか 2011地理予)によれば,海風前線通過後においても数百m上空には0.5~1ms-1の上昇流が持続していた。海風前線構造を含む海風循環に与える都市の影響(都市に起因する循環との相互作用など)を明らかにするためにも,海風の都心風下側における境界層構造の観測による把握が必要と考えられる。<br><br>補足<br>Stewart and Oke(2012)は,urbanやruralといっても実際には多様性に富むことから,都市気候(特に気温分布)研究のframework(都市相互の比較を行うための地理的条件に関する「統一的物差し」)として,天空率や地表面粗度,構成物質の熱特性などを考慮した景観に基づくlocal climate zone(数百m~数kmの空間スケールでの地域分類)を提案している。都市気候の現れ方はその時々の気象条件にも大きく左右されることから,「晴天」や「弱風」などの基準についても,研究者間の統一があれば,観測成果や解析結果の相互比較が行いやすいのではないだろうか。
著者
高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.217-232, 2001-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では,梅雨季 (6・7月) の日本における「雨の降り方」の地域性と年乏の差異(「陰性」・「陽性」梅雨)を知るために,梅雨季総降水量に対する日降水量の階級別の寄与にっいて検討した.日本全体を大きく二分する場合,総降水量に対して上位階級(大きい日降水量の階級)の寄与が大きい地域には,九州地方,中国地方西半,四国~東海地方南岸,および中部山岳域西部が該当する.西日本であっても,南西風に対して山地風下にあたる地域では,風上側に比べて上位階級の日降水量の寄与は相対的に小さいことなど,大地形との対応が認められる.総降水量に対して下位あるいは上位階級の日降水量の寄与が大きい場合を,それぞれ「陰性」あるいは「陽性」梅雨と考えるならば,両者の判別は極端な少雨年を除き可能であると考えられ,同程度の総降水量であっても「陰性」・「陽性」それぞれの場合が認あられる.また,「陰性」・「陽性」いずれの場合であっても,平均状態に認められる「雨の降り方」の基本的な地域性は維持されている.
著者
中島 虹 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.92-99, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
21
被引用文献数
1

関東平野南部における光化学オキシダント(Ox)高濃度域と海風風系との関係を解析した。まず、1990年から2011年の7、8月における海風日を抽出した。Ox日最高濃度に対する主成分分析により、海風日を領域全体でOx日最高濃度が高く、かつその濃度が北側で高い日をType 1、南側で高い日をType 2とした。Type 1では相模湾や東京湾からの海風前線はType 2と比較して早い時刻に侵入した。Type 1、2とも、Ox高濃度域は下降流に伴う上空からのOx供給が考えられる海風前線の内陸側に位置した。海風前線が通過した地域では負のOx移流量を示し、海側から低いOx濃度の空気が供給された。そのため、いずれの場合も日最高Ox濃度の出現時刻は内陸ほど遅れる傾向にあり、Ox高濃度域は海風前線より内陸に位置したが、Ox高濃度域の位置は海風前線の侵入の遅速により異なった。Ox高濃度域は海風前線の侵入が速やかなType 1では対象領域北部に、遅延するType 2ではType 1よりも南側に現れた。Type 1の沿岸付近では、速やかな海風の侵入によりOx濃度の上昇が抑制されたと考えられた。以上から、Ox日最高濃度の分布には、関東平野南部の海風風系の違いによる海風前線侵入の遅速が関わっていることが明らかにされた。
著者
高橋 日出男 三上 岳彦 境田 清隆 澤田 康徳 横山 仁 瀬戸 芳一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,降水粒子計測,稠密雨量計網やレーダの観測資料を用いた東京圏における短時間強雨の実態把握,並びに稠密気象観測による短時間強雨の予測手法の検証を目的とした.短時間強雨の開始時には,大粒径の雨滴比率が高く,急激に降水強度が増大する.都区部北部から埼玉県南部では,範囲が狭く集中度の高い強雨域の発現が多い.都区部西部では強雨頻度の極大が16時頃と22時頃にあり,日変化する局地風系との関連が示唆された.多数事例の統計的解析から,短時間強雨発生のシグナルとして強雨開始40,50分前から現れる収束量増大の有効性が確認され,予測手法の確立に向けた課題も指摘された.
著者
三上 岳彦 高橋 日出男 森島 済 日下 博幸
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

東京首都圏 200 カ所の高密度気温観測データと気象庁 AMeDASの風観測データを用いて、夏季気温分布の時空間変動および要因解明を試みた。夏季の海風卓越日と強い単風日について気温偏差分布の日変化のデータ解析および夏季典型日(夏型)を対象とした気温と風の再現実験(WRF モデル)から、関東平野内陸部での高温域に及ぼす風の効果が明らか担った。また、WRF モデルによる都市型集中豪雨の数値シミュレーションを行った結果、都市の存在が首都圏に降雨をもたらす可能性が示唆された。
著者
鈴木 博人 高橋 日出男
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.161-173, 2008-08-31
被引用文献数
1

Detection of the spatial scale of heavy precipitation is important for the prevention of disasters. This study analyzed the spatial scale of heavy precipitation based on observed data at the railway observational stations and the meteorological stations in Kanto Plain. The results can be summarized as follows: The simultaneous occurrence area of precipitation becomes smaller when the criterion of precipitation and/or the distance increases. Heavy precipitation exceeding 30mm (130mm) during 1-hour (24-hour) occurs simultaneously within the distance of about 4km (>30km) at the probability of 0.5. The spatial scale of heavy precipitation is larger in case of typhoon rather than front, low, and thunderstorm. The simultaneous occurrence area of precipitation seems to have southwest-northeast oriented long axis. Moreover, the spatial scale of heavy precipitation is larger in southeastern part rather than in northwestern part of Kanto Plain.
著者
三上 岳彦 森島 済 日下 博幸 高橋 日出男 赤坂 郁美 平野 淳平 佐藤 英人 酒井 慎一 大和 広明
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

東京首都圏に設置した独自の気温・湿度観測網と気圧観測網のデータ等を用いて、夏季日中のヒートアイランドの時空間変動を明らかにするとともに、熱的低気圧の動態と局地的短時間強雨発生との関連およびその要因の解明を試みた。夏季の気温と気圧データに主成分分析を適用した結果、上位主成分に、海陸風循環、ヒートアイランド、北東気流に関連した空間分布が認められた。局地的短時間強雨の事例解析を行い、豪雨発生の前後で気圧の低下と上昇が起こり、海風起源の水蒸気量の増加が確認できた。領域気象モデル(WRF)による都市域での短時間強雨発生に関する数値実験を行い、都市域で夜間の降水が増えていることが明らかになった。
著者
藤部 文昭 高橋 清利 釜堀 弘隆 石原 幸司 鬼頭 昭雄 上口 賢治 松本 淳 高橋 日出男 沖 大幹
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

970年代まで行われていた区内観測による26都府県の日降水量データをディジタル化し, 高分解能かつ長期間の降水量データセットを作成した。このデータや既存の気象データを利用して著しい降水や高低温・強風の長期変化を解析し, その地域的・季節的特性等を見出した。また, 極値統計手法を様々な角度から検討し, 各方法の得失を見出した。さらに, 全球数値モデルを用いて, 降水極端現象の再現性に対するモデルの水平解像度の影響を調べ, 今後モデルと観測データを比較するための統計的手法の検討を行った。
著者
高橋 日出男 三上 岳彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,関東地方南部を対象とした稠密な雨量計とレーダの資料による強雨頻度の統計的解析と,東京都心域に発生した雷雨に伴う短時間強雨の事例解析を行った.都心域では夕刻から夜半に強雨頻度が増加していること,都心風下側で空間スケールの小さい強雨域が多発していることがわかった.また,都心域の強雨発生事例について,高い都市キャノピーによって強雨域近傍で停滞したガストフロントが強雨の維持停滞に関与した可能性が指摘された.