著者
牛山 克己 天野 達也 藤田 剛 樋口 広芳
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.88-96, 2003 (Released:2007-09-28)
参考文献数
81
被引用文献数
6 6

近年,ガン類と農業との軋轢が高まっているが,これらのガン類の中には保全の対象とされている種も多い.行動生態学的研究は,農業被害管理と保全を共通の視点で捉えることができる.そこで本稿は,ガン類の生息地利用に関する行動生態学的研究がいかに農業被害問題へ応用されているかをまとめた.農業被害の発生メカニズムを明らかにする行動生態学的研究によって,状況に応じた管理方策を提言することができ,効率よく農業被害問題に取り組むことができる.それら管理方策には,防除器具の徹底と代替採食地の提供,そして農業活動や人為的撹乱の管理による生息地管理が含まれる.より大きな空間スケールでは,ガン類の生息地選択を理解することで,保全と農業被害を考える上で重要な,極度に集中化したガン類の分散化対策を生物学的根拠に基づいて行うことができると考えられる.これらの行動生態学的知見を統合することにより,ガン類の分布や個体群動態の予測モデルを構築することができる.個体の行動の進化的背景を組み込んだモデルは,環境の変化に対する個体群レベルの反応を予測することができ,農業被害の予防的管理やガン類の保全における有効な手法となり得る.

言及状況

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餌やりが悪だという風潮に疑問に思った方は読んでみてください。 『行動生態学からみたガン類の保全と農業被害問題 牛山 克己, 天野 達也, 藤田 剛, 樋口 広芳』 https://t.co/ypo0xqcWpk
代替餌によるガン類の農業被害対策はヨーロッパで広く実施されており効果を上げているようだ。しかし、長期的な視点からは生存率の増加を促進して個体数増加を招き、持続的な対策とならない可能性も指摘されている。https://t.co/oFkL0VktpL

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