著者
高川 晋一 植田 睦之 天野 達也 岡久 雄二 上沖 正欣 高木 憲太郎 高橋 雅雄 葉山 政治 平野 敏明 葉山 政治 三上 修 森 さやか 森本 元 山浦 悠一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.R9-R12, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
7
被引用文献数
8

全国的な鳥類の分布情報データを用いて,各種の分布を決める要因や生息数の増減に影響する要因等を探る上で,どのような生活史・生態・形態的な特性をもった鳥において変化が見られるのかを検討することは,効果的な解析手法の1つである.こうした解析を行なうためには日本産鳥類の形態や生態に関する情報が必要である.そこで,今回,海鳥類を除いた日本でみられる鳥類493種について,生活史や生態,形態の情報についてとりまとめ,データベース化した.このデータベース「JAVIAN Database(Japanese Avian Trait Database)」は,さまざまな研究を行なう上でも有用な情報と考えられるため,ここに公開した.
著者
牛山 克己 天野 達也 藤田 剛 樋口 広芳
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.88-96, 2003 (Released:2007-09-28)
参考文献数
81
被引用文献数
6 6

近年,ガン類と農業との軋轢が高まっているが,これらのガン類の中には保全の対象とされている種も多い.行動生態学的研究は,農業被害管理と保全を共通の視点で捉えることができる.そこで本稿は,ガン類の生息地利用に関する行動生態学的研究がいかに農業被害問題へ応用されているかをまとめた.農業被害の発生メカニズムを明らかにする行動生態学的研究によって,状況に応じた管理方策を提言することができ,効率よく農業被害問題に取り組むことができる.それら管理方策には,防除器具の徹底と代替採食地の提供,そして農業活動や人為的撹乱の管理による生息地管理が含まれる.より大きな空間スケールでは,ガン類の生息地選択を理解することで,保全と農業被害を考える上で重要な,極度に集中化したガン類の分散化対策を生物学的根拠に基づいて行うことができると考えられる.これらの行動生態学的知見を統合することにより,ガン類の分布や個体群動態の予測モデルを構築することができる.個体の行動の進化的背景を組み込んだモデルは,環境の変化に対する個体群レベルの反応を予測することができ,農業被害の予防的管理やガン類の保全における有効な手法となり得る.
著者
大澤 剛士 天野 達也 大澤 隆文 高橋 康夫 櫻井 玄 西田 貴明 江成 広斗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.135-149, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
54

生物多様性に関わる様々な課題は、今や生物学者だけのものではなく、人類全てに関連しうる社会的な課題となった。防災・減災、社会経済資本、資源の持続的利用といった、人間生活により身近な社会問題についても、生物多様性が極めて重要な役割を持つことが認識されるようになりつつある。これら社会情勢の変化を受け、生物多様性に関わる研究者には、これまで以上に政策とのつながりが求められている。しかし現状では、研究成果が実社会において活用されないという問題が、生物多様性に関係する研究者、行政をはじめとする実務者の双方に認識されている。これを“研究と実践の隔たり(Research-implementation gap)”と呼ぶ。そもそも、社会的課題の解決のために研究者の誰もが実施できる最も重要なことは、解決に必要な科学的知見を研究によって得て、論文の形で公表することである。そのためには、社会的に重要な課題を把握し、それに関する研究成果を適切なタイミングで社会に提供できなくてはならない。これらが容易になることは、研究と実践の隔たりを埋めることに貢献するだろう。そこで本稿は、そのための取り組みの先駆的な実例として「legislative scan」を紹介する。これは、イギリス生態学会が実施している、生態学者や保全生物学者にとって重要な法的、政策的課題を概観する取り組みである。さらにlegislative scanを参考に、生態学の研究者が関わりうる政策トピックの概要を紹介することで、研究者が能動的に研究と実践の隔たりを埋めていくためのヒントを提供する。具体的な政策トピックとして、「生物多様性条約(CBD)」、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」、「地球温暖化適応(IPCCの主要課題)」、「グリーンインフラストラクチャー」、「鳥獣対策」について概要を紹介する。最後に、研究と実践の隔たりの解消に向けて、研究者及び研究者コミュニティが積極的に働きかける重要性と意義について議論する。
著者
天野 達也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.200-205, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

科学研究における共通言語としての英語は,国際的なコミュニケーションを容易にすることで,科学の発展に対して大きな便益をもたらす一方で,いくつかの大きな障壁ももたらしている。本稿では,(1)英語が第一言語でない研究者に対する言語の障壁,(2)科学的知見の応用に対する言語の障壁,(3)科学的知見の集約に対する言語の障壁,という3種類の障壁について,環境科学分野における近年の研究を中心に紹介する。またそれぞれの問題解決のために,研究者個人や学術誌,学会などが実行できる解決策についても紹介し,学術界における言語の障壁という問題について認識を高め,国内外で問題の解消に向けた動きを促進することを目的とする。
著者
山浦 悠一 天野 達也
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.261-276, 2010-07-31
被引用文献数
6

マクロ生態学は、大きな時空間スケールで生物の個体数・分布・多様性を扱う分野である。近年、人類が引き起こしている地球規模での環境変化が生物多様性に及ぼす影響が注目を集めるなか、マクロ生態学の重要性が認識されつつある。本稿では、まずマクロ生態学で扱われてきた課題とマクロ生態学の特徴を整理する。そして、マクロ生態学を発展させるための有望なアプローチの一つとして、生物の生態的特性の活用を挙げる。生態的特性とは、生物の形態的・生理的・表現的な特徴ことのを指し、生物の行動や環境への反応、資源(生息地)要求性、生態系内での機能、他の生物に及ぼす影響力なども含まれることもある。生態的特性を活用することにより、マクロスケールでの生物-環境の関係性の理解・予測が促進されるだろう。マクロ生態学の今後の課題として、局所生態学との統合や時間的視点の考慮などが挙げられるが、生態的特性の活用はこれら課題の解決に大きく貢献するだろう。人類が地球上で優占する現在、生物多様性を理解、予測、保全するうえで、マクロ生態学の更なる発展が望まれる。