- 著者
-
富永 健一
友枝 敏雄
- 出版者
- The Japan Sociological Society
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.152-174,268, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
-
1
1
戦後四十有余年を経た今日、日本の社会科学は戦後の社会変動の帰結を実証的に明らかにする時期にきている。本稿の目的は、SSM調査三時点 (一九五五年、一九六五年、一九七五年) データの分析によって戦後日本社会の地位非一貫性の趨勢を明らかにすることである。この目的のために用いた分析手法は、 (1) 地位非一貫性スコアによる分析と (2) クラスター分析である。分析の結果、 (1) 一九五五年から一九七五年までの二〇年間に地位の非一貫性が増大したこと (2) 地位の非一貫性の増大は、この二〇年間の高度経済成長が下層一貫の人びとの地位の部分的な改善をなしとげることによっておこったこと (3) 主観的階層帰属や政党支持などの社会的態度に関して、非一貫の人びとは、上層一貫の人びとと下層一貫の人びとの中間に位置しており地位非一貫性が欲求不満やストレスをひきおこし、革新的な政治的態度と結びつきやすいというレンスキーの仮説は、日本社会にはあてはまらないこと、が明らかになった。以上の分析から、地位非一貫性は、地位の結晶化が不十分な場合に生ずる異常な状態ではなくて、むしろ高度産業社会においては正常な状態であり、しかも階層構造の平準化や平等化をもたらす重要なメカニズムであると考えられる。