- 著者
-
本條 晴一郎
- 出版者
- 日本マーケティング学会
- 雑誌
- マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.2, pp.42-53, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
- 参考文献数
- 29
近年,ケアにまつわる議論が活発化しており,ケアを中心に社会のあり方を考えることが提言されている。ところが,成功するビジネスをケアの考えで構成できるか否かは問われていない。本研究では,ケアの考えで構成されたサービス,つまり,サービス・ウィズ・ケアがビジネスとして成立し成功し得るかを,「北欧,暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコムを対象とした探索的ケース・スタディによって調べた。ケースを特徴付けるファインディングとして(1)独自の文化資産の構築,(2)顧客からの雇用,(3)経営がアジャイルという3つを見出した上,これらがすべて正義の倫理ではなくケアの倫理によって説明されることを示した。このことにより,ケアの倫理に則ったサービス・ウィズ・ケアがビジネスとして成功し得ることを示しただけではなく,ケアを中心にしたビジネスのあり方を探求するための新たな研究課題を見出すことが可能になった。