著者
真鍋 祐子
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.46-67, 1996-06-15 (Released:2017-07-18)

1970年11月13日、ソウルにある零細裁縫工場の労働者であった全泰壹は、勤労基準法の遵守を叫ぶ示威の最中、抗議のための焼身自殺を遂げた。体制をはじめとする他者たちに向けて演じられた彼の死は、60年代以降の飛躍的な経済成長め裏側で生存権を剥奪された民衆が、初めて歴史の主体として登場した事件と評される。伝統的な儒教の孝倫理に背く自殺という手段が敢行されたにもかかわらず、むしろ「冤魂」をめぐる両義性のゆえに、彼は韓国の民衆運動において尊崇されるべき殉教者のモデル、すなわち「烈士」に祀られた。本稿はその神話化過程を分析する試みであり、趙英来著『全泰壹評伝』(1983年)を資料とする。著者の析出した全泰壹闘争の在り方からは自己スティグマ化による価値逆転の過程が見出され、また生と死に関する記述から「民族民主主義」のための供犠としての意味づけが示唆された。ゆえに、それは80年代へ通ずる殉教者神話となりえたのだろう。

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@netsensor1 日本ではあまり聞かない抗議方法ですが韓国ではポピュラーな抗議方法のようですね。名誉のために殉じると烈士になれるとかで(^_^;) しかし国葬阻止で自傷とか馬鹿げていますよね。 「韓国の民衆運動にお ける殉教者神話の形成」 東京大学東洋文化研究所 真鍋祐子 教授 https://t.co/UhcIYEgPHa
焼身自殺事件。 真鍋祐子教授の韓国運動史の論文を1つ貼ってみる。 ネットで前に読んだ記憶がちょっとあって。 私自身は、焼身自殺という行為は基本的に称揚すべきじゃないとは思ってるけど、そう割り切れるモンでもないトコもあるよなぁと、と思わせられた事案もある。 https://t.co/LJCxZfzZfX
@cischaba https://t.co/OA4K4KmZvV https://t.co/4Sbd2xwl3G https://t.co/WaWRXRT6rO
韓国の民衆運動における殉教者神話の形成 全泰壹の生と死をめぐって 真鍋祐子 PDF https://t.co/fb9nggwCPS

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