著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.397-407, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

本研究の目的は中学校の新入生に「生物多様性」の理解と,その多様性の解析手法である「進化思考」の形成過程を探ることにある。現行(平成20年改訂学習指導要領準拠)の中学校第1学年理科教科書における「生命編」の最初には,近隣のいろいろな環境に生息する「身近な生物」を観察しながら,顕微鏡の使い方など基本的技能の習得が目的とされてきた。平成29年改訂の新学習指導要領では,そこに「分類」の記述が加わり,「生物多様性」の理解が重視されるように改訂された。しかし,中学校現場では「身近な生物の観察」も通り一遍で終えられることが多い。そこで,新入生による初めての観察実習として,科学的な見方・考え方という観点を踏まえた授業を展開した。一方,「生物多様性の理解には進化に関する知識の習得が重要」であり,かつ「分類思考と系統樹思考を柱とした進化思考が多様性の解析手法の基盤である」という2つの提言がある。そこで,本研究ではその2つの提言に基づいて,「身近な植物」としてのタンポポの「分類」を手始めに,雑種タンポポ出現による「多様化」や,水中の小さな生物の「系統的分類」を事例に,進化の入門編を意図した授業を開発した。ワークシートの記述分析や質問紙調査の結果から,「生物多様性」や「科学的進化概念」の理解を一定程度促進することが明らかになった。

言及状況

外部データベース (DOI)

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ちなみにこんな論文も『理科教育学研究』に採録されてますよ。名倉昌巳・松本伸示「中学校新入生に「生物多様性」の理解と「進化思考」を促す理科授業開発」 ここでの「進化思考」は太刀川版ではなく三中信宏『進化思考の世界』ですもちろん。 https://t.co/bw1Li5PGvd
[欹耳袋]名倉昌巳・松本伸示 2019. 中学校新入生に「生物多様性」の理解と「進化思考」を促す理科授業開発:「身近な生物」の観察における「分類・系統樹」思考を導入した学習指導を事例として.理科教育学研究, 60 (2): 397-407. https://t.co/CeJQSKZx0C

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