著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.234-245, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
31
被引用文献数
1

Despite the accidental and purposeless nature of “biological evolution,” there is no end to the “Naturalistic Fallacy” borrowed for value judgment during social change. A previous study shows that elementary school students hold many misunderstandings concerning “biological evolution”; for example, several misconceptions such as “Lamarckism” and “teleology” (which are frequently applied even by university students). It has been pointed out that modern biology, which floats in a great sea of knowledge, should be integrated by “biological evolution.” Therefore, in this study, based on this “unified understanding of biology,” lower secondary school science was integrated from the viewpoints of “acquisition of scientific evolutionary concepts” and “elimination of misconceptions,” in order to examine the learning content and structure of biology education. By analyzing the data obtained from descriptions of the two tasks in the classes of two units (genetics and ecosystem) among lower secondary school students, it was suggested that a “unified understanding of biology” contributes to avoiding misuse of “evolution”. In conclusion, we proposed a curriculum that uses evolution as an overarching theme to integrate five units (classification, cells, genetics, evolution, and ecosystem) to create a new biology course.
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.397-407, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

本研究の目的は中学校の新入生に「生物多様性」の理解と,その多様性の解析手法である「進化思考」の形成過程を探ることにある。現行(平成20年改訂学習指導要領準拠)の中学校第1学年理科教科書における「生命編」の最初には,近隣のいろいろな環境に生息する「身近な生物」を観察しながら,顕微鏡の使い方など基本的技能の習得が目的とされてきた。平成29年改訂の新学習指導要領では,そこに「分類」の記述が加わり,「生物多様性」の理解が重視されるように改訂された。しかし,中学校現場では「身近な生物の観察」も通り一遍で終えられることが多い。そこで,新入生による初めての観察実習として,科学的な見方・考え方という観点を踏まえた授業を展開した。一方,「生物多様性の理解には進化に関する知識の習得が重要」であり,かつ「分類思考と系統樹思考を柱とした進化思考が多様性の解析手法の基盤である」という2つの提言がある。そこで,本研究ではその2つの提言に基づいて,「身近な植物」としてのタンポポの「分類」を手始めに,雑種タンポポ出現による「多様化」や,水中の小さな生物の「系統的分類」を事例に,進化の入門編を意図した授業を開発した。ワークシートの記述分析や質問紙調査の結果から,「生物多様性」や「科学的進化概念」の理解を一定程度促進することが明らかになった。
著者
名倉 昌巳
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.417-420, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
19

平成20年告示の中学校学習指導要領において,「進化」と「遺伝(の規則性)」が復活し,平成29年改訂では「進化」が第2学年から第3学年に移行し,「遺伝」の学習後に扱われるようになった.「進化」と「遺伝」は「細胞説」と並び生物学上の重要な概念である.しかしながら,過去の学習指導要領においては,「進化」と「遺伝」は削減と復活を繰り返してきた学習内容である。本研究では,このように重要な科学的概念がなぜ学習内容から消え去る時期があるのかを究明することを目的とした.この点に鑑み,戦後8回にわたる学習指導要領・その解説・教科書などの記述を調査し,さらに当時風靡した言説・進化論争・優生学など社会的歴史的背景を論じた文献を調査した。その結果,優生保護法・遺伝決定論・反ダーウィニズムの台頭などの共通項が浮かび上がってきた.一時の要請に左右されない科学的進化理論・遺伝理論を中心置いた生命教育が望まれる.