著者
根村 直美
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.73-88, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
22

本稿では,まず,押井守監督の映画『イノセンス』と欧米発の「サイボーグ映画」との比較考察を行った。そして,『イノセンス』には,「ポスト・モダン」状況の中で呼び起こされつつある理論的・思想的な懐疑がヒューマニズムへと回収されてしまうのを回避しようとする思考が認められることを明らかにし,そのような思考をポスト・ヒューマニズムと呼んだ。 続いて,そうしたポスト・ヒューマニズムがどのような身体図式・イメージをうみだしているのかを分析することを試みた。『イノセンス』においては,人形の身体は人工的に構築されたものとして捉えられている。その身体図式・イメージは,映画全体の基調となっているのであるが,人形の身体は,実は人間の身体の表現に他ならない。すなわち,『イノセンス』は,その<社会的に構築されたもの>という身体理解を通じて,<有機体>としての<人間の身体>に付与された<神秘性>から我々を解き放ったのである。 また,『イノセンス』の身体図式・イメージにおいては,構築される身体とは,<他者>と関わることにより立ち現れる具体的な状況において,画定された境界線をもつ。すなわち,その身体は,自分ではないが自分の一部であるような<他者>とのネットワークと相互作用がうみだす「偶発性」に基づくものである。しかも,そうした身体図式・イメージは,ヒューマニズムの枠組みには回収されえない<他者>への<敬意>とも結びついているのである。

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読み応えアリ 『イノセンス』に見るポスト・ヒューマニズムと<身体>の構築主義 https://t.co/ubfTuApOge
最近は素人でもこういうものを無料で読めるので ありがたい https://t.co/6NnUFuNx9E
根村直美 (2016). 「『イノセンス』に見るポスト・ヒューマニズムと<身体>の構築主義」『社会情報学』5(1), 73-88. https://t.co/cpcICmWtBV 時間ができたら読む
https://t.co/HspivbUcsQ 時雨さんに教えてもらって読んでるんだけど 俺はやっぱりヒューマニズムの権化なんだなと
初めから、何の思考もしていない者に「狂気」と言うのはあり得るのだろうか? 「ゴーストが信じられね えような野郎には,狂気だの精神分裂だのって結 構なもんもありゃしねえ」by バトー from 『イノセンス』 https://t.co/W8lkBT3lh3
『イノセンス』は, 身体の<不在>を通じて, <有機体>としての<人間の身体>に付与された <神秘性>から我々を解き放ったと言えるであろ う。>『イノセンス』に見るポスト・ヒューマニズムと<身体>の構築主義 https://t.co/e4i0KtgH9i
https://t.co/w5Zr3PfF3M ブレードランナーとの明確な違い(そしておそらく難解たらしめる要因)として、「ヒューマニズムに回収されない」というのがあるのか。なるほど https://t.co/wRVePfvVie
おァー https://t.co/PORZceQ6mt
J-STAGE Articles - 『イノセンス』に見るポスト・ヒューマニズムと<身体>の構築主義 https://t.co/mKIAUjb53U 攻殻機動隊の映画で論文が書けちまうんだな。
J-STAGE Articles - 『イノセンス』に見るポスト・ヒューマニズムと<身体>の構築主義 https://t.co/8FbbgHv7WS
3 3 https://t.co/Htd3kO1u0x

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