著者
羽賀 祥二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

本研究の目的は、20世紀前期(明治末縲恟コ和戦前期)の地域社会の歴史像を構築した郷土史家の歴史学的方法論と歴史叙述に表れた歴史的構想力について考察を行い、彼らが地域社会のアイデンティティーの創出、地域の歴史的起源や文化的多様性の発見、地域の再生にどのような役割を果たしたのかを解明することである。本研究では、次の調査・研究を実施した。(1)愛知県の郷土史家である津田応助の関係史料(象山文庫)が所蔵されている小牧市図書館の調査を行い、彼が編纂した郡町誌関係の史料、津田日記などの所在を確認し、一部の撮影を実施した。(2)津田編『贈従五位林金兵衛伝』の編纂の過程を知ることができる『林金兵衛家文書』を購入し、整理作業を近代史料学の授業の際に実施した。ここには林金兵衛の地租改正反対運動に関する貴重な史料も含まれており、明治前期の尾張地域史の実証研究にも貢献することができる。(3)東海地域を中心として歴史遺産の発掘と保存、郷土史家の地域史研究、名古屋における郷土史の形成と歴史祭典の実施に関する論文を公表し、この地域の歴史意識の特徴、郷土史家の歴史的役割に関して考察をおこなった。また、暫定的ではあるが、『林金兵衛家文書』の目録を作成できたことは、今後郷土史研究を進めていく上で、基礎的な作業となった。
著者
福島 正也 砂川 正隆 片平 治人 渡辺 大士 草柳 肇 小林 喜之 樋口 毅史 久光 直子 久光 正
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.312-319, 2015 (Released:2015-11-21)
参考文献数
30
被引用文献数
2

円皮鍼は鍼治療に用いられる鍼の一種で,1mm前後の極めて短い鍼を絆創膏で皮膚に留置することによって,種々の生体の反応を引き出す.本研究では,ラット社会的孤立ストレスモデルを用い,ストレスに対する円皮鍼の効果を調べ,作用機序の検討としてオレキシン神経系の関与を検討した.8週齢Wistar系雄性ラットを使用し,コントロール群(Con群),ストレスモデルにシャム鍼を貼付した群(Sham群),ストレスモデルに円皮鍼を貼付した群(PTN群)の3群に分けた.社会的孤立ストレスモデルは8日間単独で飼育することで作製した.Con群は1ケージに3~4匹で飼育した.ストレス負荷7日目,PTN群とSham群には百会穴相当部への円皮鍼(パイオネックス®,セイリン社製)またはシャム鍼を貼付した.ストレス評価として,噛みつき行動時間の測定(7日目と8日目)と,EIA法にて血漿コルチコステロンの測定を行った.また,オレキシン神経系の関与を検討するために,EIA法にて血漿オレキシンA濃度を測定し,外側視床下部におけるオレキシンニューロンの変化を組織学的に検討した.ストレス負荷8日目,10分間の噛みつき行動時間は,Sham群(460.2±24.2秒)に対し,PTN群(263.3±53.7秒)で有意に抑制された(p<0.01).血漿コルチコステロン濃度は,Con群(44.0±8.2ng/ml)に対しSham群(128.6±26.4ng/ml)では有意に増加したが,PTN群(73.5±8.9ng/ml)ではその増加が有意に抑制された(P<0.05).血漿オレキシンA濃度は,Con群(0.17±0.01ng/ml)に対しSham群(0.36±0.04ng/ml)では有意に増加したが,PTN群(0.23±0.03ng/ml)ではその増加が有意に抑制された(P<0.05).外側視床下部におけるオレキシンAの発現もCon群(26.88±3.03 Optical Density:OD)に対しSham群(80.89±6.03 OD)では有意に上昇したが,PTN群(49.87±1.84 OD)ではその上昇が有意に抑制された.百会穴への円皮鍼治療は,ラット社会的孤立ストレスモデルにおけるストレス反応を抑制し,視床下部オレキシンニューロンの活性を抑制した.ストレスによる交感神経系や内分泌系の興奮に視床下部オレキシン神経系が関与することが報告されている.円皮鍼治療はオレキシン神経系を抑制することにより,ストレス反応を抑制したと考えられる.

4 3 3 0 OA 三国志物語

著者
最上哲夫 編
出版者
金蘭社
巻号頁・発行日
1926
著者
門脇 佳代子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 = Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum annual report (ISSN:21862699)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.63-74, 2016-06-23

静岡市立芹沢銈介美術館所蔵「中尊寺参詣曼荼羅二曲屏風」は、岩手県平泉地方の寺社と、そこを参詣する人々の賑わいを描いた絵画である。類例として岩手県中尊寺に伝来する「平泉諸寺参詣曼陀羅図」が知られており、天正元(1573)年に回禄した毛越寺や観自在王院の堂塔を再建するため制作された可能性が高いと考えられている。本稿では、描写および構図の比較を通して、この二作品が同一の工房で制作されたこと、また「平泉諸寺参詣曼荼羅図」が先行して描かれ、後に平泉古図などの影響も受けつつ「中尊寺参詣曼荼羅二曲屏風」が描かれたことを指摘する。Chuson-ji Sankei Mandara is a painting owned by the Shizuoka City Serizawa Keisuke Art Museum. It depicts temples of the Hiraizumi district and visitors to their grounds. Interestingly, another painting connected with Chuson-ji, known as Hiraizumi-shoji Sankei Mandarazu, is thought to have been produced to aid in rebuilding a temple building destroyed by fire in 1573.Comparing these two works, I found that both paintings were produced in the same studio, and that Chuson-ji Sankei Mandara was drawn after Hiraizumi-shoji Sankei Mandarazu.
著者
植田 弘師
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.3, pp.161-165, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
12

神経傷害に伴い誘導される慢性疼痛は難治性神経因性疼痛と呼ばれ,抗炎症薬や強力な鎮痛作用を有するモルヒネによって除痛されにくい.従って,急性の痛みとは仕組みが全く異なり,末梢神経傷害に伴う一次知覚神経と脊髄での可塑的機能変調がその基盤となると考えられる.著者らは近年,神経傷害後,長期に認められる痛覚過敏・アロディニア現象を誘導する初発原因分子として脂質メディエーターであるリゾホスファチジン酸(LPA)を同定した.このLPAは後根神経節や脊髄後角における疼痛伝達分子の発現増加や一次知覚神経の脱髄現象を誘導し,これらがそれぞれ痛覚過敏やアロディニア現象の分子基盤となることが明らかになった.
著者
永岡 正己
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.1-30, 2018-09-30

大阪府方面委員制度は1918 年に設置されて全国のモデルとして拡大していった.その初期の活動はよく知られるが,その後,昭和恐慌期から第二次世界大戦期にかけて,社会事業も地域組織も変化してゆく中で,方面委員の組織や活動がどのように進められたか,またそこにどのような両義的な関係や葛藤があったかについては十分明らかになっていない点がある.本稿では,『大阪府方面委員事業年報』,『大阪府方面常務委員会議事速記録』および当時大阪府社会課や各方面委員事務所が刊行した文書類にもとづいて展開過程を確認し,戦後の民生委員・児童委員制度の前提や歴史的課題について検討した. 方面設置と組織の変化,救護法や諸制度への対応や医療救護,災害救援等の展開が見られつつ,方面委員令以後次第に統制的組織強化が並行して進む.日中戦争後の第二期計画の具体化によって,対象の拡大が図られるとともに,軍事援護や徴用援護,労働力政策との関係が強まってゆく過程で,活動における質的変化や葛藤があったことも明らかになる.原点にあった主体的なあり方が形式的なものになり,他の戦時組織に二義的に組み込まれてゆく面もみられた.これらは戦後の民生委員制度改革における前提であり,歴史的課題として今日に引き継がれているものである. なお,本稿は①展開過程,②各方面における個別実践事例の検討,③方面委員および関係者群像,④戦後民生委員制度の歴史的課題のうち,前半の部分である.
著者
Nobuhiro Murata Yasuo Okumura Katsuaki Yokoyama Naoya Matsumoto Eizo Tachibana Keiichiro Kuronuma Koji Oiwa Michiaki Matsumoto Toshiaki Kojima Shoji Hanada Kazumiki Nomoto Ken Arima Fumiyuki Takahashi Tomobumi Kotani Yukitoshi Ikeya Seiji Fukushima Satoru Itoh Kunio Kondo Masaaki Chiku Yasumi Ohno Motoyuki Onikura Atsushi Hirayama for the SAKURA AF Registry Investigators
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.727-735, 2019-03-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
27

Background: Off-label dosing of direct oral anticoagulants (DOACs) is encountered clinically among patients with atrial fibrillation (AF), although data on the clinical outcomes of over- and under-dosing are lacking in Japan. Methods and Results: We examined the clinical outcomes of off-label DOAC dosing using the SAKURA AF Registry, a prospective multicenter registry in Japan. Among 3,237 enrollees, 1,676 under any of the 4 DOAC regimens were followed up for a median of 39.3 months: 746 (45.0%), appropriate standard-dose; 477 (28.7%), appropriate low-dose; 66 (4.0%), over-dose; and 369 (22.2%) under-dose. Compared with the standard-dose group, patients in the under- and over-dose groups were significantly older and had a higher stroke risk. After multivariate adjustment, stroke/systemic embolism (SE) and death events were equivalent between the standard- and under-dose groups, but major bleeding events tended to be lower in the under-dose group (hazard ratio [HR] 0.474, P=0.0739). Composite events (stroke/SE, major bleeding, or death) were higher in the over-dose than in the standard-dose group (HR 2.714, P=0.0081). Conclusions: Clinical outcomes were not worse for under-dose than for standard-dose users among patients with different backgrounds. Over-dose users, however, were at higher risk for all clinical events and required careful follow-up. Further studies are needed to clarify the safety and effectiveness of off-label DOAC dosing in Japan.
著者
山鳥 重
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.262-266, 1996-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

主として口頭言語の生成機構について, 鳥瞰的見取図を提示した.おおまかに考えて, 言語生成には環シルビウス溝言語領域, 環・環シルビウス溝言語領域, 右半球言語領域の3つの領域が重要である.環・環シルビウス溝言語領域の活動には補足運動野, 視床も加わる.環シルビウス溝言語領域は音声系列の生成, 環・環シルビウス溝言語領域は音声系列への言語的意味の充填, 右半球言語領域は意味ある音声系列への社会的意味の充填に働く.三者共同して生きた言語が生成する.
著者
蘆田伊人 編
出版者
雄山閣
巻号頁・発行日
vol.第1 第5冊 新編武蔵国風土記稿五, 1935
著者
多賀 太
出版者
国立女性教育会館
雑誌
NWEC実践研究
巻号頁・発行日
vol.9, pp.148-164, 2019-02-28
著者
辻本 惠 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.137-150, 2013-03-29

2009 年2 月15 日から23 日にかけて,オーストラリア南極局(AAD: Australian Antarctic Division,以下同様)で取り組まれている外来種持ち込み防止対策に関する調査を行った.(1)機材の管理,(2)装備品の管理,(3)積荷の管理,(4)観測隊員への教育の4 項目について施設見学やインタビューを行い,現場の状況と外来種持ち込み防止対策システムの全容を把握した.本調査により,AADでは南極における観測・設営活動に伴う外来種持ち込みの危険性を強く認識し,機材や装備品,積荷の管理から観測隊員への教育まで,細部にわたり包括的な外来種持ち込み防止対策を講じていることが明らかとなった.特にAAD で徹底されていた職員や観測隊員への教育活動は,我が国の南極観測事業においても極めて有効な手段であると考えられる.本調査結果を参考にした組織的な外来種持ち込み防止対策の立案により,昭和基地周辺の貴重な生態系の保全につながることが望まれる.