著者
松田 和之
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

本研究の最終年度にあたる平成28年度には、(1)平成26年度及び27年度の研究成果の取りまとめを行うとともに、(2)コクトーから最大限の信頼と賛辞を寄せられた文筆家でありながら、従来、学術的な研究対象とされることがほとんどなかったエメ・ミシェルに関する研究を進展させるために、フランスにおける資料閲覧・収集に取り組む予定であった。(2)に関しては、諸般の事情が重なり、出張の機会が持てなかったため、同年度中は、(1)に専念し、これまでの研究の成果を2本の学術論文を通じて公表することができた。(2)の課題については、補助事業期間の延長を申請し、その取り組みを翌年度に繰り越すことにした。(1)の成果として、まず、コクトーが残した大部の日記集『定過去』で取り上げられた数々のオカルト的な話題の中でも、記述内容の質量両面において双璧を成す「前衛考古学」と「空飛ぶ円盤」に焦点を当て、それらに関するコクトーの知見を把握する作業を通じて、現代物理学に代表されるアカデミックな科学に反旗を翻した「超科学」の考え方に彼が共鳴していたことを論証した。ちなみに、コクトーと「超科学」の連関をより深く掘り下げて理解するためのキーパーソンとなるのが、上述したエメ・ミシェルである。加えて、平成23年度から26年度にかけて行った科研費による研究の成果に本研究の成果を加味し、コクトーが晩年に制作したカトリックの礼拝堂の装飾に古代エジプトに特有の表象が密かに盛り込まれていたことを明らかにするとともに、彼の宗教観や死生観を理解する上で、その鍵を握るのがサンクレティスム(宗教的習合)という考え方であることを論証した。

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著者
白泉社 [編]
出版者
白泉社
巻号頁・発行日
1985
著者
山口 二郎 中村 研一 宮脇 淳 宮本 太郎 遠藤 乾 新川 敏光
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

この研究では、1990年代後半から21世紀にかけて急速に進んだグローバル化による福祉国家の解体現象と、これに対する平等概念を基調とした対抗策について、考察した。まず、21世紀初頭に起こった日本的福祉国家の崩壊現象について、「リスクの社会化、個人化」と「普遍的政策、裁量的政策」という2つの軸を組み合わせることで、体系的な説明のモデルを作った。戦後日本では、補助金、護送船団方式など、裁量的政策によりリスクの社会化が図られており、そのことが結果的に疑似福祉国家的効果をもたらした。しかし、市場原理の浸透や透明性を求める市民社会の要求の中で裁量的政策と不可分に結びついていたリスクの社会化の政策まで否定され、新自由主義的構造改革が優勢となったと説明される。また、西欧において福祉国家のモデルが、90年代から21世紀にかけていかに変容、再生したかを比較の観点から考察し、日本に対する教訓を明らかにした。特に、イギリス、スウェーデンなどにおける社会的包摂(social inclusion)の概念を分析し、グローバル化時代における社会的排除(social exclusion)の弊害を明らかにすると共に、社会的包摂を実現するための政策の枠組みやこれを実施する主体について考察した。さらに、格差社会の到来という現状において、市民が政治や政策に何を期待するかについて、東京と北海道において大規模な意識調査を行なった。その結果、平等や公共サービスに関して、多少の地域差はあるものの、市民は格差の小さい社会を望み、充実した公共サービスを望んでいることが明らかとなった。この知見は、これからの福祉国家再生策の重要な基盤となる。

71 11 4 0 OA 海上保安の現況

出版者
海上保安庁
巻号頁・発行日
vol.昭和34年, 0000
著者
中田 考
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.66-82, 1996 (Released:2010-03-12)

In the history of Islamic legal thought, al-Juwaini's al-Ghiyathi is a unique work, because he devotes himself in its last chapter to dealing with the possibility of Mappo (borrowed from a Buddhist concept), the era of extinction of the Shari'a, not in an eschatological way but in a juristical way.He says that the knowledge of the fundamentals of Shari'a will be lost among people after the disappearance of its legal authorities, i. e., mujtahids and transmitters of madhhabs, which will occur after the disappearance of the political authorities, i. e., caliphs and sultans.According to his understanding, the extinction of the knowledge will happen not because of the lack and decrease of books, but because of the increase of hairsplitting debates and pedantic disputes which occupy so much the minds of people and students as to make them tired at last.al-Juwaini compares Muslims in the era of extinction of the Shari'a with people whom the message of Islam has not reached. He concludes that, besides the beliefs in the unity of God and the prophethood of Muhammad, Muslim's sole obligation in such an era is to make himself ready for observance of the prescriptions of Shari'a, hoping to get to know them someday. Because there is no obligation without receiving the divine commandments according to the Ash'ari school to which al-Juwaini belongs.In his opinion the details of the Shari'a can not be understood without guidance of its authorities. So the utmost which can be hoped in case the legal authorities as well as the political authorities have disappeared, is that individual muslims reconstruct the fundamentals of the Shari'a from the remaining writings on the subject and apply the fundamentals to their own situations.
著者
坂東 慶太
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.43-49, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
9

近年,OverleafやAuthoreaといったオンラインLaTeXエディターの登場が相次いでいる。これらは単なる論文執筆のためのツールではなく,研究者のライフサイクルにおいて現在大学図書館がカバーしきれていない論文執筆から投稿・出版のプロセスをサポートし,研究ワークフローのミッシングリンクを埋める可能性をもっている。従来のライティングツールの枠組みを超え,論文投稿プロセスを変革する可能性を秘めたこの「共同ライティングツール」は,学術情報流通にかかわる出版社・研究機関などにどのような影響を与えるのか。本稿では,共同ライティングツールにおける代表的なサービスOverleafに着目し,その概要,特徴的な機能そして導入事例の紹介を通じて,論文投稿プロセス変革の可能性や大学図書館における研究支援のあり方を展望する。
著者
加藤 貴彦 藤原 悠基 中下 千尋 盧 渓 久田 文 宮崎 航 東 賢一 谷川 真理 内山 巌雄 欅田 尚樹
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.94-99, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
10

Multiple chemical sensitivity (MCS) is an acquired chronic disorder characterized by nonspecific symptoms in multiple organ systems associated with exposure to low-level chemicals. Diagnosis of MCS can be difficult because of the inability to assess the causal relationship between exposure and symptoms. No standardized objective measures for the identification of MCS and no precise definition of this disorder have been established. Recent technological advances in mass spectrometry have significantly improved our capacity to obtain more data from each biological sample. Metabolomics comprises the methods and techniques that are used to determine the small-level molecules in biofluids and tissues. The metabolomic profile—the metabolome—has multiple applications in many biological sciences, including the development of new diagnostic tools for medicine. We performed metabolomics to detect the difference between 9 patients with MCS and 9 controls. We identified 183 substances whose levels were beyond the normal detection limit. The most prominent differences included significant increases in the levels of both hexanoic acid and pelargonic acid, and also a significant decrease in the level of acetylcarnitine in patients with MCS. In conclusion, using metabolomics analysis, we uncovered a hitherto unrecognized alteration in the levels of metabolites in MCS. These changes may have important biological implications and may have a significant potential for use as biomarkers.
著者
YOUKICHI OHNO SHOETSU CHIBA SEISAKU UCHIGASAKI EIKOH UCHIMA HAJIME NAGAMORI MICHINAO MIZUGAKI YOSHIHARU OHYAMA KATSUHIKO KIMURA YASUO SUZUKI
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.167, no.2, pp.155-158, 1992 (Released:2006-08-31)
参考文献数
3
被引用文献数
9 or 0

OHNO, Y., CHIBA, S., UCHIGASAKI, S., UCHIMA, E., NAGAMORI, H., MIZUGAKI, M., OHYAMA, Y., KIMURA, K. and SUZUKI, Y. The Influence of Tetrodotoxin on the Toxic Effects of Aconitine in vivo. Tohoku J. Exp. Med., 1992, 167 (2), 155-158 -Both aconite toxins (aconitine, mesaconitine, and hypaconitine) and a pufferfish toxin (tetrodotoxin, TTX) were detected in the blood of a legal autopsy case. In order to elucidate the in vivo influence of TTX on the toxic effects of aconitine, a mixture of aconitine and TTX was administered to male ICR mice orally or intraperitoneally. The animal experiments revealed that the time of death due to aconitine was significantly delayed in proportion to the dose of TTX compared with the case for aconitine alone, and that the mortality of aconitine was lowered by TTX when the dose ratio of the two toxins was in a particular range. Accordingly, it is thought that the toxic effects of aconitine are attenuated by TTX in vivo.
著者
田中 邦明
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1-9, 2002-06-17
参考文献数
39
被引用文献数
2 or 0

我が国の現行の中学校理科教科書には,両生類の呼吸方法について,「オタマジャクシはえら呼吸し,カエルは肺呼吸(一部は皮膚呼吸)する」と記述されている。一方,カエル幼生の呼吸機能分担に関する最近の研究によれば,ヒキガエル類を除くカエル類のオタマジャクシ(無尾目の幼生)は,後肢が発達する変態期以前からすでに肺呼吸を始めており,オタマジャクシの肺呼吸は嫌気的水中で生き延びるのに役立っているという。また,系統進化の観点から,オタマジャクシの肺呼吸はセキツイ動物の肺の獲得と進化にかかわる痕跡的な行動とみられている。さらに,ふ化直後のオタマジャクシではエラ呼吸よりも皮膚呼吸の方が重要な役割を果たしていると考えられている。したがって,少なくとも「オタマジャクシはえら呼吸する」という見解は,厳密な意味では,誤りを含む一種のミスコンセプションとみなされる。オタマジャクシの肺呼吸は,すでに1931年にヨーロッパで発見され,1982年にはウシガエルの幼生で,肺と皮膚がエラとともに呼吸分担機能をもつことが明らかにされていた。しかしながら,オタマジャクシの呼吸についての不正確な扱いは,我が国の教科書や一部の専門書だけでなく,海外の生物学の専門書にもみられることが報告されている。このようなミスコンセプションが発生するメカニズムには,誤った教育時報の関与も考えられるが,魚類のような水生動物はエラ呼吸し,高等な陸生動物は肺呼吸するという,現生の脊椎動物についての認識から,両生類も水中生活のオタマジャクシはエラで呼吸し,陸上生活期のカエルは肺で呼吸するに違いないという演繹的推論が生まれやすいことも関与しているものと考えられる。このようなミスコンセプションを克服するためには,教育情報の訂正のほかに,オタマジャクシの呼吸生理実験を取り入れた教育プランの活用が必要と考えられる。