著者
野口 さやか
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.48, pp.35-52, 2020-03-01

エンド・オブ・ライフ[ ターミナル期] に,在宅生活を希望するがん患者は多い。しかし,在宅での看取りは1割程度しかない。重度で死期が間近であるほど,家族の在宅介護の意思がターミナルでは揺らぎがちで,在宅生活を支え切れないとされている。重度要介護者の在宅生活の限界点を上げるために,看護小規模多機能型居宅介護(以下,看多機)は創設された。そのような看多機であれば,病状の変化や医療の内容決定によって生じる本人や家族の意思の揺らぎに対してもケアしやすく,利用者の意思決定支援にも有用ではないかと問いを立て,6事業所でインタビュー調査を行った。その結果,本人や家族の持つ様々な【心の揺れへの配慮】を行い,【"本人の意思を最優先"】にした【主体的な自己選択と自己決定】ができるように寄り添う【小回りのきく看多機】であれば,エンド・オブ・ライフの在宅がん患者の意思決定支援に有効な手段となりうる可能性が示唆された。意思決定支援エンド・オブ・ライフケア看護小規模多機能型居宅介護在宅看取り訪問看護師
著者
奥田 晴樹
出版者
金沢大学地域連携推進センター
雑誌
金沢大学サテライトプラザミニ講演記録
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, 2008-10-04

幕末政治が抱える「内憂外患」のジレンマの打開策を模索する中から立憲政体導入構想が登場してくる。この構想は、大政奉還後、「公議政体」論として政治的に具体化され、王政復古後、政体書の制定によって国制化の端緒をつかむ。さらに、廃藩置県後は、その導入への動きが、度重なる政変によって翻弄されながらも、一歩一歩、国家意思となる道を進んでいく。これが帝国憲法制定へと展開する過程を展望し、明治維新とは何かを考える。
著者
田口 めぐみ 宮坂 道夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.350-358, 2019

<p><b>目的:</b>看護師が自己規範とチーム規範との不一致によって経験するジレンマの内容,ジレンマ対応の様式,対応に影響を及ぼす因子を明らかにする.</p><p><b>方法:</b>ジレンマの内容と経験および対応について,看護経験2年以上の看護師21名にインタビューを行い,構造的ナラティヴ分析とテーマ的ナラティヴ分析を組み合わせた分析を行った.</p><p><b>結果と考察:</b>構造的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマを経験した際の対応は,イ)ジレンマに対してチーム規範に則って行動した,ロ)-①ジレンマに対して個人の可能な範囲で行動した,ロ)-②ジレンマに対して小集団から同意を得られた場合に行動した,ハ)-①ジレンマに対して自己規範に則って行動したがチーム規範に変化をもたらさなかった,ハ)-②ジレンマに対して自己規範に則って行動しチーム規範に変化をもたらした,に分類できた.テーマ的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマ対応に影響を及ぼす因子は,看護経験年数,異動経験の有無,周囲との対立回避,賛同者の獲得,役割意識に基づく行動であった.患者の多様なニーズへの対応には,看護師個人とチームの相互における継続的な検討が必要である.</p>

2 0 0 0 OA 伝教大師全集

著者
最澄 著
出版者
比叡山図書刊行所
巻号頁・発行日
vol.第三, 1927
著者
太刀川 宏志 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.687-692, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1

災害後には瓦礫が発生し、まず復旧復興に先駆け、瓦礫処理を行う必要がある。第二次世界大戦では全国215都市が被害を受け、戦災復興においても、広範囲で一度に一気に行う必要がある瓦礫処理は大きな課題であり、戦災地応急対策として最初に清掃事業(瓦礫処理)が実施された。東日本大震災の被害は非常に広範囲に及んでおり、広範囲で一度に一気に発生した災害における瓦礫の処理方策を学ぶ上で、戦災復興の瓦礫処理を解明して今後に活かす必要がある。あわせて、災害時における瓦礫処理についての備えを考えていく上でも、過去の災害復興を振り返り今後に生かしていくことは意義があると考える。そこで本研究は、戦災復興誌より戦災復興における瓦礫処理の方針を把握した上で、実際の戦災瓦礫処理を都市別に抽出し、処理内容毎にまとめる。さらに、特徴的な戦災瓦礫の処理方策を見出す。戦災瓦礫処理は、制度として戦災復興土地区画整理事業区域を対象としたことが本研究を通じて確認できたことから、見直しにより土地区画整理区域外となった地区を多く抱えた東京の戦災瓦礫処理について具体事例として述べることとする。
著者
貞広 幸雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100003, 2012 (Released:2013-03-08)

本論文では,GISとインターネット情報を用いて,江戸末期~明治初期の歴史空間データを簡便に作成する方法を提案する.ここでは初等中等教育や地域情報のインターネット上での発信などでの利用を念頭に置き,情報の厳密さよりも作成の簡便さを重視した方法を採用する.対象地域は現在の千葉県全域であり,主として江戸末期~明治初期の以下4種の空間データを整備した.1) 地形,2) 人口分布,3) 交通網,4) 行政区.
著者
田村 力
出版者
Hokkaido University(北海道大学)
巻号頁・発行日
1998-03-25

本研究は、北西北太平洋および南極海におけるミンククジラの食性と摂餌量を明らかにするために、採集された胃内容物を解析した。1994年-1996年の夏季、北西北太平洋において採集されたミンククジラ184個体の胃内容物から、カイアシ類1種、オキアミ類4種、頭足類1種および魚類10種の合計16種類が出現した。夏季のミンククジラの主要餌生物は、太平洋側ではオキアミ類、サンマおよびカタクチイワシ、オホーツク海ではツノナシオキアミであった。ミンククジラは索餅海域で資源量の多い生物を利用しており、環境の変化によってその餌生物を柔軟に変化させる広食性を有することが示唆された。摂餌されていたサンマなどの体長組成の経年および地理的な差異は、索餌海域における組成を反映した結果であると考えられた。1989/90年-1995/96年の夏季、南極海IV区において採集されたミンククジラ398個体の胃内容物から、端脚類1種、オキアミ類4種の合計5種類が出現した。夏季のミンククジラの主要餌生物は、プリッツ湾以外の海域ではナンキョクオキアミ、プリッツ湾ではナンキョクオキアミおよびE. crystallorophiasが主要餌生物であり、ミンククジラは索餌海域において資源量の多いオキアミ類を摂餌しているとみなされた。また、摂餌されていたナンキョクオキアミの体長や成熟度組成の経年および地理的な差異は、その海域でのナンキョクオキアミの体長や成熟度を反映した結果であると考えられた。ミンククジラの摂餌活動の日周期性の有無を検討した。北西北太平洋におけるミンククジラの摂餌活動は、主として昼間に表層で行われるが、利用している餌生物の分布状態によって摂餌回数や摂餌量が不規則であることが示唆された。一方、南極海におけるミンククジラの摂餌活動は、主として朝方に多量の餌生物(主としてナンキョクオキアミ)を摂餌するが、要求量が満たされない状況の時はそれ以降に数回の摂餌を行うことが示唆された。胃内容物重量の経時変化から求める直接的方法と、エネルギー要求量から求める間接的方法を用いて、ミンククジラの日間摂餌量を算出した結果、両海域とも体重の4%程度を摂餌していると試算された。最大摂餌量は、北西北太平洋のミンククジラで96.4kg、体重比で2.3%であったのに対し、南極海のミンククジラでは289.0kg、体重比で3.1%を示し、南極海のミンククジラは北西北太平洋のミンククジラに比べて重量で3.0倍、体重比で1.3倍の量を摂餌していた。北西北太平洋およびオホーツク海におけるミンククジラ個体群の年間摂餌量を算出した。北西北太平洋で12.5-19.2万トン(95%信頼区間: 6.1-39.3万トン)、オホーツク海で41.3-59.1万トン(同: 21.5-119.9万トン)と試算され、摂餌量の多さから、ミンククジラが夏季の北西北太平洋およびオホーツク海の生態系において鍵種として機能しているとみなされた。さらに摂餌されていた餌生物はサンマやイワシ類などの有用魚類で、その組成も漁業の対象となっている組成と同じであることから、人間の漁業活動にも影響している可能性が示唆された。南極海におけるミンククジラ個体群の年間摂餌量を算出した。IV区で174-193万トン(同: 105-316万トン)と試算され、IV区周辺のナンキョクオキアミ資源量の15.7-47.4%に相当した。また、南極海全体のミンククジラ個体群の年間摂餌量は1,771-1,965万トン(同: 1,069-3,217万トン)で、南極海に分布する全鳥類のそれに匹敵し、さらに、他のヒゲクジラ類の年間摂餌量の6.8-20.4倍に達すると試算された。この結果は、北西北太平洋やオホーツク海と同様、ミンククジラが夏季の南極海生態系において重要な鍵種として機能しているとみなされた。そのため、ミンククジラと索餌海域や餌生物が重複しているシロナガスクジラ、鰭脚類、海鳥類および魚類などは、餌資源を巡る種間競争において多くの影響を受けていると考えられた。

2 0 0 0 近代建築

出版者
近代建築社
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, 1981-07
著者
吉田 寛
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.73-95, 2007-09

市場は自発的な交換の場として発達する。市場が効率的なのは,取引に参加する当事者双方の効用が増加する点にある。一方,政府は強制を加えて税を徴収する。税収を超えた政府支出がおこなわれた状態は,税負担を承諾していない者に税の負担を強制している状態であり,略奪がおこなわれている。アメリカ合衆国第30代大統領カルビン・クーリッジの指摘した「必要以上の税を集めるのは合法的強盗である」という状態である。市場での取引と納税者からの承諾の得られない課税が存在する経済では税率は,50%を超えてはならない。生産・交換・課税から生じる効用はマイナスとなる。生産者にとって生産は苦痛となり,生産を放棄する。税率が50%から25%の間であれば,税率を下げる減税は効用を増加する効果がある。税率40%のとき税率を1%下げると,その効用は4%増加する。税率30%のとき税率を1%下げると,効用は1.5%増加する。税率25%のとき税率を1%下げると,効用が1.0%増加する。平成19年度の国民負担率は39.7%,将来の税金を増やさないために財政赤字分も含める潜在的な国民負担率となると43.7%。減税することで経済は活性化する。国民は富み,そして税収は増加する。税を扱う能力のない行政責任者は,税を無駄に使うだけでなく社会の経済活動を阻害する。主権者は,能力のない行政責任者を止めさせることで政府の略奪を止めることができる。選挙で選ぶ行政責任者の財政運営能力を「将来の税金」という会計情報として提供することで,主権者は合理的な決定が可能となる。
著者
外川 拓 石井 裕明 朴 宰佑
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.72-89, 2016-03-31 (Released:2020-04-21)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

近年の研究では,本来,消費者の判断と直接的に関連していない触覚情報,すなわち非診断的触覚情報が,意思決定に無意識のうちに影響を及ぼすことが明らかにされている。本稿では,非診断的触覚情報のなかでも特に硬さと重さに注目し,これらが消費者の意思決定に及ぼす影響について,身体化認知理論をもとに考察した。硬さに注目した実験1と実験2では,硬さの経験が本来関連のない製品に対する知覚品質を向上させたり,サービスの失敗に対する金銭的補償の要求水準を高めたりすることが明らかになった。重さに注目した実験3と実験4では,重さの経験が本来関連のない製品に対する信頼性や製品情報に関する記憶想起を高めることが明らかになった。最後に,これらの結果を踏まえ,本研究の意義と課題について議論を行った。
著者
宮川 安生
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1156, pp.138-141, 2002-09-02

「現代教養文庫」シリーズで親しまれてきた社会思想社は、6月25日に不渡りを出しました。1990年代に入ってから、売上高がじりじりと下がる苦しい時期を迎えました。何とかヒット企画を出して盛り返そうと模索してきましたが、力及びませんでした。 事実上の倒産——。6月28日に新聞紙上でそう報道されると、多くの読者から電話を頂きました。
著者
長沢 佳熊 樫田 義彦 城戸 靖雅
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.310-316, 1960

昭和33年10月,太平洋海域で漁獲した汚染度のいちじるしいマグロ類肝臓を入手したので,これらのうちの4検体についてTomskinsのイオン交換樹脂法および沈殿法によつて放射性核種を分離し,半減期,吸収およびエネルギーの測定によって<SUP>59</SUP>Fe,<SUP>65</SUP>Zn,<SUP>115m</SUP>Cdおよび<SUP>90</SUP>Sr+<SUP>90</SUP>Yを確認し,さらにそれぞれを定量した.<BR><SUP>65</SUP>Znならびに<SUP>59</SUP>Feは,<SUP>55</SUP>Feとともにビキニ海域で漁獲された魚類からすでに検出されている.また<SUP>113</SUP>Cd,<SUP>113m</SUP>Cdおよび<SUP>115m</SUP>Cd<SUP>9</SUP>がマグロ類から定性的に検出されているが,今回は<SUP>115m</SUP>Cdのみを確認し,定量をおこなった.<BR><SUP>65</SUP>Znおよび<SUP>59</SUP>Feは明らかに誘導放射性核種であり,また<SUP>115m</SUP>Cdはfission product中の生成率はきわめて少ないと考えられるにもかかわらず,これらが汚染の主要原因となっていることは興味深い.<BR>今回分析に供した以外の生肝臓数検体についてγ線スペクトルを測定した結果,<SUP>65</SUP>Znおよび<SUP>59</SUP>Feはいずれの検体についても共通に認められたが,さらに未確認ではあるが<SUP>54</SUP>Mnと思われるピークを認めた.
著者
梅本 堯夫
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.23-28, 1951
被引用文献数
3 7

In this study the writer has determined the association values of 1016 Japanese two syllable nonsense words. These syllables were divided into four groups, and each group was read to two classes of Ss in reversed order. Ss were 404 high school students. After giving sufficient information on the nature of the association performance, the E reads the syllables at the rate of one syllable per five seconds. Ss were instructed to write down any associated word, while attending to the experimenter's reading. When there was no time to write down any, Ss had to mark a circle on the syllable. When they found the word impressive, though not meaningful, Ss had to mark a triangle. The association values ranged from 82% (o-pe) to 3% (pu-nu), the average was 26.02%. The reliability was tested by caliculating the coefficients of correlation between the results of two classes of Ss, performed on the same list, and between boys and girls in the same class. These values were r=0.49 and r=0.76 respectively.