著者
坂本 裕和 藤井 亮輔 光岡 裕一 坂井 友実 秋田 恵一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.218-225, 2011-08-01
参考文献数
20

【目的】経絡経穴とその周囲構造物との位置関係を形態学的に明らかにする一環として、 下肢後面における経穴について検討した。 <BR>【方法】東京医科歯科大学解剖学実習体3体6側を使用した。 下肢後面における足の太陽膀胱経に刺鍼を施し、 その部位を中心とした局所解剖を行った。 <BR>【結果】1. 承扶・殷門は、 大腿二頭筋の表層を走行する後大腿皮神経および深層を走る坐骨神経より内側に位置した。 <BR>2.浮ゲキ・委陽は、 大腿二頭筋停止腱の内側縁に沿って総腓骨神経の走路に位置した。 <BR>3.委中・合陽・承筋・承山・飛揚・フ陽・崑崙・申脈は、 内側腓腹皮神経、 腓腹神経およびは小伏在静脈に沿って位置した。 <BR>4. 委中・合陽・承筋・承山は、 深層では脛骨神経および膝窩動脈、 後脛骨動脈に沿って位置した。 <BR>【結論】1.後大腿皮神経および坐骨神経は承扶・殷門より外側を走行する傾向が強く、 これら神経への刺鍼は承扶・殷門より外側に施す必要性が示唆された。 <BR>2. 下腿後面の腓腹神経および小伏在静脈は、 末梢に向かうにつれて経穴に沿う傾向が強くなる。 <BR>3.下腿後面の深層を走る脛骨神経への刺鍼は、 委中・合陽・承筋・承山が効果的であることが示唆された。
著者
鈴木 一郎 清水 弘之 高橋 宏 石島 武一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.295-300, 1991-07-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
18
被引用文献数
8 5

We have originated cisternal irrigation combined with head shaking in order to remove subarachnoid clots rapidly and extensively. Eighteen patients with subarachnoid hemorrhage (SAH) due to ruptured intracranial aneurysms of the anterior part of the circle of Willis were studied. The degree of SAH as shown by CT was Group 3 on the Fisher's grading scale. Clipping was performed within 72 hours after the last bleeding. Continuous ventriculo-cisternal irrigation was carried out from 12 hours after the surgery, using solution with or without urokinase. The head was intermittently shaken (amplitude 4 cm, frequency 1.0-2.0 c/s) by a head-shaking device of our own making. The effect of head shaking on clot removal was evaluated by neurological examination, CT, and the volume of sedimentary clots in the draining fluid. Postoperative angiography was usually performed about 10 days after SAH.Although the number of patients was small for statistical analysis, the effect of head shaking on clot removal as shown by CT was remarkable. The subarachnoid clots with CT attenuation values of more than 60 in the basal and sylvian cisterns were usually washed out to the range (10-15) of normal cerebrospinal fluid within 48 hours. No delayed ischemic neurological deficits (DIND) occurred, and no low-density areas due to vasospasm were observed on computed tomography. Angiographic vasospasms were observed in only 2 cases, in which the diameter of the artery was less than 75% of that in the acute phase. But these vasospasms were limited to the area adjacent to the ruptured aneurysm.
著者
Fuyu Miyake Chimed-Ochir Odgerel Yuko Mine Tatsuhiko Kubo Toshiharu Ikaga Yoshihisa Fujino
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.165-171, 2021-03-05 (Released:2021-03-05)
参考文献数
29
被引用文献数
3

Background: Customarily, bedrooms in Japan are left unheated. Although several studies have reported that the use of a heating system has positive outcomes on respiratory infection and asthma, the preventive effect of heating systems against infectious diseases in children is not well known.Methods: We conducted a cohort study using two questionnaire surveys, one before the winter season in November, 2018 and the second after winter in March, 2019. Participants were 155 children who did not use a heating system in the bedroom and 156 children who did.Results: Having a heated bedroom with a heating system was associated with decreased odds for the frequency of cold (≥3 times) (adjust odds ratio [AOR] 0.35; 95% confidence interval [CI], 0.19–0.65), duration of fever (≥3 days) (AOR 0.38; 95% CI, 0.22–0.66), duration of medicine for a cold (≥3 days) (AOR 0.91; 95% CI, 0.87–0.95), hospital visit due to cold (≥3 days) (AOR 0.54; 95% CI, 0.31–0.94), absence from school or nursery (≥3 days) (AOR 0.43; 95% CI, 0.27–0.70), influenza infection (AOR 0.43; 95% CI, 0.26–0.71), and gastroenteritis (AOR 0.39; 95% CI, 0.21–0.72). Influenza vaccination reduced the odds of influenza infection (AOR 0.36; 95% CI, 0.22–0.59) and absence from school or nursery (≥3 days) (AOR 0.62; 95% CI, 0.39–0.99).Conclusion: This study implies that the heating of bedrooms may have a preventive effect against infections among children. Broader dissemination of this knowledge in Japan will require cultural change through public health awareness.
著者
畑中 恒夫 小林 史尚 宮崎 隼人
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.349-353, 2008-03
被引用文献数
3

電化生活が進むにつれ,そこから発生する電磁波にさらされる機会が増え,電磁波の影響が心配されている。この電磁波が動物の学習行動に影響を及ぼす例が報告されているが,矛盾する報告もある。そこで,下等な昆虫のミツバチを用い,単純な連合学習である花の匂いと,蜜を吸う吻伸展反射の条件づけを行い,電磁波の影響を調べた。市販のマウス駆除器から出る複合された低周波の電磁波に曝露すると,連合学習の学習率が低下した。超低周波の電磁波は磁場成分が生体に作用すると考えられるので,50Hz,200Hz,300Hzの変動磁場に曝露すると,200Hzの変動磁場で学習率が低下し,超低周波電磁波は学習を阻害することがミツバチでも実証された。一方,定常強磁場下では学習率が増加し,磁場や超低周波電磁場はミツバチの磁気受容器を介して学習行動に影響する可能性が示唆された。
著者
青柳 優
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.135-145, 2006-04-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

他覚的聴力検査法の最終目標は, 反応閾値から正確なオージオグラムを推定することである。ABRは低音域の聴力判定において信頼性が低く, 周波数特異性の点で問題がある。聴性定常反応 (ASSR) は繰り返し頻度の高い刺激音に対する聴性誘発反応であり, 反応各波が干渉しあって一定振幅のサイン波状の反応波形を呈する。正弦波的振幅変調音によるASSRは刺激音の周波数特異性が高いこと, 反応波形が高速フーリエ変換を用いた自動解析に適していることなどから, 他覚的聴力検査として理想的な誘発反応である。変調周波数 (MF) を40Hzとした40Hz ASSRは, 位相スペクトル解析により閾値を判定した場合には成人覚醒時の他覚的聴力検査法として周波数特異性が高く, 臨床応用が可能である。一方, MFを80Hzとした80Hz ASSRは, 睡眠時に安定した反応性を示し, 幼児に対する他覚的聴力検査法として有用である。本稿ではASSRについて概説すると共に, その解析法, 臨床応用について述べる。
著者
大久保 剛
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.157-162, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
22
被引用文献数
2

コリン化合物は,生体の細胞膜を構成し,神経伝達物質のアセチルコリンの前駆物質としての役割を担っている。このように生体にとっては重要な物質である。運動の視点で見ると,トップアスリートでも激しい運動をすると体内のコリン化合物は消費されていく。そして,神経伝達が上手く行かずにパーフォーマンスが落ちてくる。これらのメカニズムを検証しながらコリン化合物と運動機能との関係を概説する。
著者
黒川 知文
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.475-498, 2005-09-30 (Released:2017-07-14)

十字軍、レコンキスタ、フス戦争と近代以後に起きた諸宗教戦争は、宗派対立型、教派対立型、政治対立型に類型化することができる。その本質構造は、社会的危機、経済的危機、政治的危機、宗教的危機等の危機状態になった時に、宗教に民族主義が結合して、排他的教説が採用されると、排他的戦争へと変容するということにある。排他的教説とは、二項対立論と悪魔との「聖戦」論と終末における戦争論であり、キリスト教においては、その救済論と人間論と終末論から生起したと考えられる。民族紛争における宗教の要素は宗教戦争のそれとはかなり異なっていると推定される。
著者
野中 郁次郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.547-552, 2006-05-15

伝統的な認識論においては,知識とは「正当化された真なる信念(justified true belief)」と定義される.知識創造理論では,「個人の信念を真実に向かって正当化するダイナミックで人間的/社会的なプロセス(a dynamic human/ social process of justifying personal belief towards the truth)」と知識を定義する2).つまり,信念(思い)を真実に向かって正当化していく人間的でダイナミックなプロセスそのものが知識であると定義するのである.個人の抱いた思い(主観)は,他者や環境との間で行われる社会的ダイナミクスの中で正当化(客観化)され,「真」とされていく.知識とは他者との相互作用を通じて,未来に向かって何が真・善・美であるかを問い続けるプロセスであり,そうした信念(主観)と正当化(客観)の相互作用にこそ知識の本質がある.そして,知識創造企業の戦略は,その存在をかけた「未来創造」なのである.本稿の目的は,既存の戦略論との対比を通じて,知識経営(Knowledge-based Management)の戦略論を展開することである.
著者
三輪 修
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.850, 2013-07-15
著者
矢ケ崎 信子 豊川 裕之
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.100-112, 1989 (Released:2011-02-25)
参考文献数
30
被引用文献数
5 6

The subcutaneous fat thickness was investigated to obtain the general characteristics of Japanese fat distribution by sex and age. Our subjects consist of 1, 477 males and 1, 933 females of all age groups in various localities in Japan. The newly developed A-mode type ultrasonic instrument was utilized to measure fat thickness including such locations as biceps, triceps, subscapula, suprailiac, thigh anterior, thigh posterior, and calf. The data obtained were analyzed by mean, standard deviation, and percentile. Our findings are summarized as follows: 1) It is confirmed that the subcutaneous fat layer of females is thicker than that of males. 2) Examining the ratio of upper-arm and trunk in subcutaneous fat layer, i.e. (biceps+triceps)/(subscapula + suprailiac), the adults' ratios are smaller than those of infants, and adult males accumulate more fat abdominally than adult females do. 3) The percentiles we obtained will provide the criteria for subcutaneous fat thickness of the Japanese by sex and age.
著者
久代 育生 鈴木 桂輔
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.1103-1110, 2016 (Released:2018-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ジャーク最小操作モデルを基に,基本式のパラメータ変更で,あらゆる走行パターンができる,簡単なサイン関数を用いた近似ジャーク最少モデルを構築. 本モデルを熟練運転者の運転操舵の解析に用いた結果,熟練運転者は,レーンチェンジや修正操舵などの走行タスクにおいてジャークを最小にするような操舵を行っている事を確認した.
著者
光永 亜希子 光永 悠彦
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は大綱化以降に設立された新設大学の変遷を検証する。新設大学は短期大学や専門学校からの昇格が多く、また学校法人内に他の学校種を併設していることが多い。そのため学校法人単位で検討する。大学昇格をする/しないは併設校の財務的余裕や、高学歴化志向だけで決まるわけではない。またその行動や成否は地方の産業構造や人口構成、進学構造などの特性に左右される。そのため学校法人については、受験案内書などを参照して量的指標を作成し、財務指標データを加え、これらを用いた多変量解析によって分類する。加えて学校法人の属する地方の特性を踏まえ、定員充足の構造を探り、大学昇格や学部構成の指針となるモデルを探索する。
著者
高橋 望
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

平成3年の大学設置基準の大綱化以降、大学の個別化により学部・学科名称が多様化している。この多様化により、専攻分野と卒後の進路との対応関係が不明確となったことが、大学進学希望者らにとって、将来のキャリアを見据えた進路選びを阻害する一因となっている。本研究は、適切な進路選択を支援するため、まず、学位に付記する専攻分野の名称を専攻分野の代理指標として、専攻分野と卒後の進路選択との対応関係の変遷を解明することを試みる。そして、この対応関係に基づき、希望する進路と関係する専攻分野や大学を検索し、結果を比較表示するアプリケーションを開発し、大学進学希望者らへ進路選択支援システムとして提供する。
著者
喜多村 和之 大膳 司 安原 義仁 手塚 武彦 潮木 守一
出版者
広島大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

アメリカ合衆国:アメリカ合衆国の高等教育機関の設置認可は、従来は大学の自由設立の原則にもとづき、その認可機関たる州政府の関与はゆるやかで、認可の基準や手続きも簡素であったが、近年では学位の乱造の防止や消費者保護の見地から、州政府の関与の度合いもつよまり、規制が厳格化される傾向にある。いくつかの州では設置認可基準の厳格化や法制度の整備、さらには新設大学の視察・監督の強化が進行しつつある。また、アメリカ合衆国においてはすでに1930年代より民間の基準協会が一定の質的基準に到達した大学のみを会員校としてみとめ、一定期間の実地調査や事後審査にもとづいて大学の質的向上をはかる基準認定活動(Accreditation)を行なっている。連邦政府や州政府は、基準協会の認定をうけた会員校のみに公費援助の受給資格を認めており、このことが更には大学内部に自己点検と自己改善を刺激する源泉ともなっている。連合王国:イギリス高等教育の水準維持方式にはチャータリング方式とCNAA方式の2つがあり、前者は自治権を有する大学セクターにおいて、また後者はパブリック・セクターにおいて採られているものである。これらのうちCNAA方式は1964年に始まって以来20有余年間、パブリック・セクター高等教育の水準の維持・向上に大きな役割を果たしてきた。しかし最近では、形式化・官僚化の弊もみられるようになり、その改革が論議されるようになってきた。本研究ではCNAA方式によるパブリック・セクター高等教育水準維持方式の実際(とくにコース認定の手順)とその問題点および改革の基本方向について現地調査に基づき、具体的に解明した。西ドイツ:大学の設置主体はほとんどが州政府であり、私立大学の存在は例外的である。私立大学としては、従来、教会系の大学が若干存在するにすぎず、その設置根拠は、法的に明確になっていなかった。しかしながら、1976年に「大学大綱法(Hochschulrahmengesetz)」が制定されたことにより、州立大学と同等の内容を有する私立大学については、州政府により国家による認可が与えられることとなり、そのために必要な規程が、州の大学法で定められることとなった。現実に州政府が私立大学の設置認可を行うかどうか決定する際に、最も大きなウエイトを占めるものは財政状況である。西ドイツで現在最も注目されている私立大学であるヴィッテン/ヘアデッケ大学の設置認可に当たっては、所管の州であるノルトライン・ヴェストファレン州学術研究省は、最低5年間大学を運営していくに十分な資金を有しているかという点から審査した。また、認可後も、毎年その後5年間の財政計画を提出させ審査させている。しかしながら、同大学の財政状況は厳しく、一部を除き学部の大半をバーデン・ヴュルテンブルク州に移転するとともに、授業料を徴収することを計画している。フランス:ローラン・シュヴァルフ教授を委員長とする全国評価委員会(CNE)を政府レベルで設置し、既存大学の評価の作業に着手した。評価の方法に関しては、「大学の作成資料」「運用の指標12項目」「指標」の具体的項目が判明した。残された課題として、この委員会の活動が各大学の評価を一巡すればそれで終了するのか、恒常的大学評価機関として存続するのか、またその評価の結果が評価を受けた大学にどのような形でどの様な方法による改善ないし効果をもたらしたのか、さらにはCNEの評価活動が国の高等教育行政にどのようなフィード・バックするのか、等が残されている。