著者
厳島 行雄 内藤 佳津雄 臼井 信男 岡部 康成 小泉 昌司 横田 正夫 原 富夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1285-1292, 1997-08-25
参考文献数
22

精神分裂病患者の一つの特徴に認知的機能の障害が挙げられる. 本研究では精神分裂病患者の顔認識メカニズムに注目し, その機能的特徴を検討することを目的とした. 使用した方法は, 健常者の顔認識研究で有効な研究方法として採用されている反復プライミングである. 実験1では先行課題として有名人の同定課題(職業若しくは人名)を行い, その後主課題として既知性判断課題を行った. その結果, 精神分裂病患者では, 反応時間が健常者と比較的同程度の速さを示す群とそれより遅い群に分かれた. 健常者と類似した速さを示した精神分裂病患者群では, プライミング量も健常者と同程度であったが, 反応時間の遅い群ではプライミング量が大きいという結果であった. 実験2では長期の反復プライミング効果を検討した. ここでも長期のプライミング効果が健常者と共に観察されたが, 精神分裂病患者のプライミング効果は健常者のそれと比較しで大きいものであった. これらの結果は, 精神分裂病患者の顔認識システムにおける顔認識ユニットと人物同定ノードとの結合の活性化抑制機能の低下によって起こると解釈された.

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