- 著者
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並松 信久
- 出版者
- 京都産業大学
- 雑誌
- 京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
- 巻号頁・発行日
- no.54, pp.211-240, 2021-03-31
盆栽は日本文化を代表する芸術と考えられている。しかし,近代盆栽は純粋な日本文化を代表するものとは言えない。文化融合の産物であるからである。盆栽は中国由来であったが,江戸期に独特の発展を遂げた。江戸期に流行した「蛸作り」と「盆山」という二つの系譜をたどった。そして,幕末期に中国風の煎茶趣味の影響を受け,近代盆栽が誕生した。明治期に盆栽は政財界人の趣味として広がったが,日本の伝統文化として扱われなかった。しかし,明治後半期以降,国家意識の高まりとともに,伝統文化の見直しがあった。盆栽もその見直しに組み込まれた。盆栽は茶の湯や生け花の要素を取り込むことによって,伝統文化としての装いを整えていった。しかし,茶の湯や俳諧の借り物,あるいは流用感が否めなかった。そこで盆栽本来の特徴として,「盆栽は日本の風土に根ざした自然美を表現する固有の芸術である」とされ,国風化が唱えられた。明治期以降の近代盆栽は,文化融合の産物という特徴をもち続けながら,日本の伝統文化を代表するものとして捉えられていった。