- 著者
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仁平 典宏
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.96, pp.175-196, 2015
- 被引用文献数
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20世紀後半から進行する福祉国家の再編にともない,社会保障制度は,教育や訓練を通じて雇用可能性を高めることを目指すワークフェアとしての性格を持つようになってきた。このワークフェアは社会的排除を改善するベクトルと悪化させるベクトルを孕む。本稿の目的は,その分岐の条件を,主にイギリスのニューレイバーの「第三の道」の社会政策の検討を通じて,導出することである。<BR> ニューレイバーは,人的資本への社会的投資を通じた社会的包摂政策を掲げ,子どもの貧困や若年失業の改善に取り組んできた。それらは一定の成果を上げたと評価される一方で,批判的社会政策論からは,むしろそれが貧困家庭や脆弱性のある若者に対する抑圧や排除を深刻化させたと批判されている。問題の所在は,第三の道のワークフェアが,社会構造の転換によってではなく,個人のハビトゥスの矯正によって社会的排除に対応するように仕向ける統治性として性格をもっていた点にある。<BR> 以上を踏まえて,社会的排除を避ける方向性が,福祉国家レジーム論や生産レジーム論の知見も参照しつつ,教育の内部と外部においてそれぞれ示される。ワークフェアは――教育と同様――成功可能性が確率に委ねられるゲームとしての側面を幾重にも有している。よって社会的排除を回避する掛金は,ワークフェアへの参加/離脱の前提として,無条件で普遍主義的な社会権保障を論理的かつ制度的に先行させることにある。