著者
大井 隆夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.126-129, 2013-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8

通常の化学において,我々は特に同位体を意識することはないが,理工学の広い分野で,ある"元素"ではなく,ある元素の特定の"同位体"が必要とされる場合がある。純粋あるいは一定濃度以上の同位体が必要な場合,我々はそれを"濃縮"あるいは他の同位体から"分離"する必要がある。同位体の化学的性質は互いによく似ているため,化学物質や元素の単離や精製の場合と異なり,同位体の分離濃縮にはそれなりの工夫が必要である。目的とする同位体とその必要とされる量や濃度,さらに分離濃縮のためのコスト等により,様々な方法が考案され稼働している。
著者
大井 隆夫 掛川 一樹 小坂 知子 本多 照幸 垣花 秀武
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.5, pp.543-548, 1993-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

草津白根山の火口湖である湯釜について,二つの湖水試料,二つの湖底泥試料および一つの固体火山噴出物中のランタノイド元素を中性子放射化分析法により定量した。その結果,水試料では11~14元素がppbのオーダーで,固体試料では8~10元素がppmレベルでそれぞれ定量された。すべての試料において,定量された元素でみる限り元素の存在量に関するOddo-Harkins則が成り立っていた。各試料中のランタノイド元素濃度をLeedeyChandrzte中の対応する濃度で規格化して得られるランタノイド元素パターンを求めたところ,固体試料では軽ランタノイドで左上がり,重ランタノイドでほぼ水平の傾きをもった,岩石でよく見られる,互いによく似たパターンが得られた。水試料のパターンは,全体にわずかに左上がりのものであった。固相と液相との間でのランタノイド元素の分配係数をイオン半径に対してプロットしたところ,中程度のイオン半径(90~95pm)のところでピークをもつ特徴的な曲線が得られた。これより,閉鎖系の酸性環境下においては,三価イオンの場合このあたりのイオン半径を持つ元素が最も液相側に分配しやすいことが示唆された。
著者
小坂 丈予 小坂 知子 平林 順一 大井 隆夫 大場 武 野上 健治 木川田 喜一 山野 眞由美 油井 端明 福原 英城
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.119-128, 1997
被引用文献数
7

Geochemical study on Yugama, a crater lake at Kusatsu-Shirane volcano, has been conducted since 1966. Amounts of various cationic species in Yugama water started increasing around 1981, slightly before the phreatic eruptions in 1982-1983, and kept increasing until 1985. In 1986, they turned to decrease and at present restore their former levels before the eruptions. The concentration of sulfate ion showed a secular change similar to those of cationic species, but no such variation was observed for chloride ion even during the 1976 and 1982-1983 eruptions. However, it started increasing in 1989. A high correlation between the concentrations of chloride and hydrogen ions suggests an increasing influx of hydrogen chloride from the deep volcanic systems under the lake. A Cl<sup>-</sup>-SO<sub>4</sub><sup>2-</sup> is an excellent monitor of the variation in volcanic activity at Kusatsu-Shirane volcano; all of the three past activities since 1966, i.e., the high-level subsurface activity in 1968, the eruption in 1976 and the eruptions in 1982-1983, showed a reverse secular change with time in the Cl<sup>-</sup>-SO<sub>4</sub><sup>2-</sup> plot. This could be attributable to the function of Yugama water as a condenser of volatiles released underground.