著者
高木 千恵
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.1-15, 2009-10

関西若年層が使用する文末形式クナイについて,自然傍受による用例収集と大学生対象のアンケート調査をもとに,韻律的・形態的・構文的特徴および文法的意味を中心に考察した。イ形容詞の否定疑問形式に由来するクナイは,疑問上昇調のイントネーションを伴い,主として動詞の基本形に後続することが多い。意味的には本来の<否定>としての機能を失っており,<同意要求>に特化したモダリティ形式である。関西におけるこのようなクナイの成立には,動詞述語の二重否定(疑問)形式であるンクナイ・ヘンクナイがすでに定着していたこと,および<同意要求>にコトナイという形式が使われていたことが関わっている。また,クナイを東京のことばと捉えている話者がおり,東京語化に対する抵抗感がクナイの浸透を阻む可能性もある。
著者
高木 千恵
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.1-15, 2009-10-01 (Released:2017-07-28)

関西若年層が使用する文末形式クナイについて,自然傍受による用例収集と大学生対象のアンケート調査をもとに,韻律的・形態的・構文的特徴および文法的意味を中心に考察した。イ形容詞の否定疑問形式に由来するクナイは,疑問上昇調のイントネーションを伴い,主として動詞の基本形に後続することが多い。意味的には本来の<否定>としての機能を失っており,<同意要求>に特化したモダリティ形式である。関西におけるこのようなクナイの成立には,動詞述語の二重否定(疑問)形式であるンクナイ・ヘンクナイがすでに定着していたこと,および<同意要求>にコトナイという形式が使われていたことが関わっている。また,クナイを東京のことばと捉えている話者がおり,東京語化に対する抵抗感がクナイの浸透を阻む可能性もある。
著者
高木 千恵
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.19-34, 2005-04-01

関西若年層は,カジュアルな場面における方言談話でも標準語形ジャナイ(カ)を使用している。1970年代生まれの男女70人分の談話資料を分析した結果,ジャナイ(カ)が方言形チャウ(カ)・ヤンカと用法を分担する形で受容されていることが明らかとなった。関西若年層が用いるジャナイは名詞・ナ形容詞述語の否定形であり,<否定><同意要求>の用法を担っている。旧形式であるチャウ(カ)は<推測>の,ヤンカは<認識要求>の形式として,棲み分けの形でジャナイ(カ)と併存している。ジャナイ(カ)の受容は標準語との接触によって起きた変化だが,これは方言が標準語に取って代わられる共通語化の一過程ではなく,方言体系の再編成という変化のメカニズムによって説明されるものである。
著者
真嶋 隆文 高木 千恵子 小池 雄太 重本 道香 山田 敬行 赤城 格
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.2197-2200, 2004-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は73歳女性.心不全の原因となった心房細動にコハク酸シベンゾリンを使用した際,低血糖が出現した.シベンゾリンによる低血糖の機序としてはATP感受性K+チャネル閉鎖によるインスリン分泌亢進が考えられており,本例でのインスリン分泌負荷試験の評価もそれに矛盾しなかった.また本例のような腎機能正常例でのシベンゾリンによる低血糖症の報告は少なく,その他ATP感受性K+チャネル作用薬併用の影響等も考えられた.本例はシベンゾリンの臨床的留意点や,その低血糖発症機序に関する有意義な症例と思われた.
著者
高木 千恵 タカギ チエ Takagi Chie
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-87, 2005-03

本稿では、大阪方言における述語の否定形式とそれを用いた否定疑問文を取り上げ、~コトナイという分析的な否定形式を中心に記述した。~コトナイは形容詞否定形式の一つだが、疑問形式と融合した~コトナイカは認識的モダリティとして固有の用法を持つ文末形式である。~コトナイカは、話し手にとって真偽が不明なことがらについての話し手の見込みを聞き手に伝え、話し手の判断の妥当性を聞き手に問うモダリティ形式であり、基本的に、話し手の認識を表す否定疑問文と置き換えることができる。否定疑問文はさまざまな用法を担っているが、~コトナイカはその中の一つの用法に特化したモダリティ形式であるということができる。また、「思う」の否定疑問形式にも~コトナイカに類似した用法がある。
著者
高木 千恵 Takagi Chie タカギ チエ
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
no.17, pp.39-51, 2021-03

本稿では、大阪方言の禁止形に現れる二つのアクセントを取り上げてそれぞれの用法を記述し、旧形式の意味の変容と有標化という観点から両者の使い分けについて考察した。本稿で明らかになったのは次の点である;(a)禁止形のアクセントには、後ろから2 拍目にアクセントの下がり目のあるタイプ(-2 型)と後ろから3 拍目に下がり目のあるタイプ(-3 型)がある。ただし低起無核型の2 拍動詞は-3 型を欠き、高起有核型の2 拍動詞(オル)は-2 型を欠く。(b)先行研究の記述に照らすと、-2 型が新しい終止形と、-3 型が古い終止形との共通点をもっている。(c)禁止形1(-2 型)が[指示][違反矯正][確認的指示][非難]の用法をもつのに対して、禁止形2(-3 型)は[指示][違反矯正][非難]の用法をもち、怒りやいらだちといった話し手のマイナス感情が併せて表示される。また禁止形2 には行為指示対象(聞き手)が必須である。(d)アクセントにおいて古い終止形と共通点をもつ禁止形2 のもつマイナス感情表示は、その他の項目にみられる新形式の誕生と旧形式の意味変容と軌を一にする変化である。