著者
〆谷 直人
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.J91-J94, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
5
被引用文献数
2 4

医療の現場では早期診断,治療の方向づけをするうえでリアルタイムに得られる検査結果が求められている.そこで患者の傍らでリアルタイムに実施して診断,治療に役立つ有益な情報を得る検査がpoint of care testing(POCT)である.感染症領域でのPOCTは,初期治療に役立つ情報を診療時間内に得られる迅速検査として利用価値が高い.感染症迅速診断検査キットは,細菌,ウイルス,真菌,原虫疾患などを対象に多岐にわたり,多くの起炎病原体に対する製品が市販されている.これらのうちPOCTとして用いられている測定法は,イムノクロマトグラフィー法(immunochromatography assay:ICA)である.ICAは操作が簡便であるため,医師や看護師でも検査を行える.わが国の臨床現場では血清診断法を補助的に用いて深在性真菌症を早期に臨床診断し,治療に結びつける努力が行われてきた.しかし,検査法は煩雑で本格的な臨床検査の部類に入るため,POCTのカテゴリーからは外れる.近年,POCTとして米国では真菌感染症の診断にLAMP法が試みられている.深在性真菌症の早期診断のために簡便かつ精度の高いPOCTによる検査法の開発が期待される.
著者
〆谷 直人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.2913-2919, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

POCTとは,ポータブル分析器や迅速診断キットを用いて医療現場で行うリアルタイム検査であり,病院の検査室あるいは外注検査センター以外の場所で実施されるすべての臨床検査を包含している.そのため実施場所や活用法においては,広範かつ多様なケースが想定される.POCTは操作が簡単な迅速検査であるが,使用方法やメンテナンス法を十分に理解したうえで使用しないとデータに影響を及ぼすので,管理運用にはPOCTコーディネータが不可欠である.
著者
〆谷 直人 鉢村 和男 西田 陽 大谷 英樹
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.97-103, 1994-04-30
被引用文献数
2

CRP (C-reactive protein)は炎症マーカーとして血漿蛋白成分の中で臨床的にもっとも利用されているが,その微量定量法の臨床的意義については,なお十分に明らかにされていない。そこで, non-radioisotopic immunoassayの1種である高感度測定装置PAMIA-30 (Counting Immunoassay)によるCRPの微量定量について検討し,迅速性,再現性に優れ,測定感度が0.4μg/dlまで可能であることが分かった。本法を用いて成人の正常値について検討すると,20〜59歳の834名(男性472名,女性362名)では4.0〜235.3μg/dlの範囲にあり,年齢別では若年者よりは高齢者において高値を示し,また男性よりも女性に低い傾向が認められた。
著者
〆谷 直人
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.350-358, 1995-08-31
被引用文献数
1

血中CRP微量定量の臨床的意義を明らかにするために,non-radioisotopic immunoassayの一種である高感度測定装置を用い,我々が設定した成人年齢別の正常値に基づいて,各種病態における血中CRP低濃度域の変動について調べ,また他の急性相反応蛋白およびIL-6と比較検討した。成人においてCRP低濃度域ならびに異常低値を示す疾患としては,ホルモン産生腫瘍,乳癌・卵巣癌の一部などの女性の腫瘍があり,良性のものではSLEなどの膠原病に認められた。また,治療によりCRPは低下するが,ステロイド治療,ならびにホルモン剤投与症例では著明な低下が認められた。ステロイド1日投与量10mg以下ではCRPはほとんど変わらず,20mg以上で明らかに低下し,40mg以上では著明に低下した。ステロイド投与患者でCRP値が異常低値ないし低濃度域となる場合に,CRP値を1週間から10日間に2回程度経日的に測定し,CRP値の連続3回以上上昇した場合に,その上昇傾向から感染症合併の有無を判断する指標として有用であると考えられた。CRPは他の急性相反応蛋白およびIL-6の変動と比較し,ステロイド治療後CRPは顕著に低下するが,他の急性相反応蛋白は漸減する傾向が認められた。CRPの著減する機序についてはステロイドによる抗炎症効果とそれ以外の機序が考えられた。