著者
ゴチェフスキ ヘルマン 藤井 浩基 塚原 康子 酒井 健太郎 大角 欣矢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

28年度の研究活動は28年3月12日から29年6月26日まで開催された駒場博物館の「フランツ・エッケルト没後100周年記念特別展「近代アジアの音楽指導者エッケルト--プロイセンの山奥から東京・ソウルへ」」展示中に行われた行事とその準備に集中した。5月28日には東京大学駒場キャンパスで「フランツ・エッケルトとその時代」というタイトルで国際シンポジウムと吹奏楽の演奏会を実施した。シンポジウムには研究代表者と研究分担者全員に加えて安田寛(元奈良教育大学、研究協力者)、李京粉(ソウル大学、研究協力者)、曺允榮(梨花女子大学、招待講演)と文景楠(東京大学、通訳)が参加し、主にこの研究で明らかになった新たな事実の解釈と意義について議論した。演奏会では小澤俊朗の指揮と神奈川大学吹奏楽部の演奏でエッケルトの作品を一次資料から再現した。その中の複数の作品がエッケルトの時代から一度も演奏されていないものであった。作品の性質と再現に当たっての問題点については楽譜作成に協力した都賀城太郎(藤村女子高等学校)から説明があった。6月23日には渡辺克也(オーボエ)と松山元・松山優香(ピアノ)によって、エッケルトのオーボエとピアノの作品を中心とする演奏会を行い、オーボエの専門家成澤良一に解説を依頼した。展示された資料によって成澤氏はアジアのオーボエ受容史について新たな発見をし、本研究企画にも貢献した。特別展は多くの観客を迎えるのみならず、数多くの専門家が(一部繰り返して)展示会を訪れ、その結果研究代表者を含む企画者は多くの刺激を受けることになった。展示が終わってから研究代表者は改めてヨーロッパに渡り、エッケルトがプロイセンやドイツで経験した軍楽隊文化とその時代背景についてさらに調査した。
著者
ゴチェフスキ ヘルマン
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究のもっとも重要な目的は、音楽学に日本と韓国の研究交流を妨げるさまざまな理由を発見し、将来の交流の可能性と方法を具体的に示すことであった。この研究のために4ヶ月半韓国に滞在し現地調査を行う機会が与えられたので、今年度はこの現地調査に集中した。そこではまず多くの学会や音楽フェスティヴァルに参加し、大学の研究施設を訪問し、学術団体の活躍について調査し、多くの学者とのインターヴューを行った。そして自分でも数多くの学会発表や公開講演を行い、韓国の学界のありかたを広く知ることができた。その中では9月11日の音楽関連諸学会共同主催 韓独音楽学会創立20周年記念学術大会『音楽研究をどうするか-韓国での音楽学の過去・現在・未来』における発表「西洋音楽研究における(東)アジアの観点」(それを韓国語で行った)と11月13日の〓園大学校アジア文化研究所第三階国際学術大会『アジア・ナショナリズムの境界・主体・文化』における発表「「地域」・「国家」・「地方」または「人種」・「国民」・「集団」-音楽の分類に含まれている政治的な意味と音楽におけるアイデンティティーの形成」がもっとも重要だった。また英語の発表で参加したショパンの誕生200年記念を祝う国際大会『ショパンの神話と実際』(ソウル、10月)では、韓国の音楽界における学術研究と音楽実技の関わりを深く観察する事ができた。「音楽学の将来の日韓交流」に関しての実績としては、2011年秋に東京大学で行われる大学院生の日韓交流セミナーの企画、研究代表者の発起によって2011年に創立される国際音楽学会(IMS)のRegional Association of East Asiaと2012年に国際音楽学会のローマ大会で開かれる日本と韓国の音楽学者を含むラウンドテーブルの企画等があげられる。