著者
鏑木 陽子 大角 欣矢
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は、校訂譜の再検討、筆写譜の現地調査、成果発表の機会としてレクチャーコンサートの開催を予定し、準備を進めた。[研究代表者・米沢陽子] ザムエル・シャイト『カンツィオネス・サクレ』のうち、Nr. 6 O Domine Jesu Christe SSWV6、Nr. 10 Duo Seraphim SSWV10、Nr. 11 Gelobet seystu Jesu Christ SSWV11、Nr. 17 Gott der Vater wohn uns bey SSWV17、Nr. 20 Prima pars: Tulerunt Dominum: Prima pars SSWV20、Nr. 21 Secunda pars: Cum ergo fleret: Secunda pars SSWV21、Nr. 24 Prima pars: Richte mich Gott: Prima pars SSWV24、Nr. 25 Secunda pars: Sende dein Liecht: Secunda pars SSWV25、Nr. 27 Lobet den Heren, er ist sehr Freundlich SSWV27、Nr. 33 Zion spricht der Herr hat mich SSWV33、Nr. 34 Quaerite primum SSWV34、Nr. 38 Lobet den Herren in seinem SSWV37 以上、12曲の校訂作業を行い、校訂譜を作成した。校訂譜に基づき、楽曲分析を行ったところ、不協和音を斬新に、しかも効果的に使用している箇所が見つかった。シャイトの作風は保守的であり、作曲上、あまり大胆な和声付けはしないと捉えていたが、この最初期の声楽作品において、若きシャイトが和声に関する果敢な試みをしていることがわかり、収穫であった。このような和音の使用は同時代のシュッツがそうであるように、歌詞との関係によるものであることも確認できた。[研究分担者・大角欣矢] ドレスデン国立図書館、ベルリン国立図書館において『コンチェルトゥス・サクリ』筆写譜の現地調査を行った。また上記12曲の歌詞対訳および楽曲分析を行ない、レクチャーコンサートのための曲目解説執筆、講演準備を行った。[研究協力者・サリクス・カンマーコア]レクチャーコンサートのリハーサルを4回実施し、この作品を「神々しい響き」であると評価した。
著者
大角 欣矢 花岡 千春 塚原 康子 片山 杜秀 土田 英三郎 橋本 久美子 信時 裕子 石田 桜子 大河内 文恵 三枝 まり 須藤 まりな 中津川 侑紗 仲辻 真帆 吉田 学史
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代日本の洋楽作曲家第一世代を代表する作曲家の一人、信時潔(1887~1965)に関する音楽学的な研究基盤を確立するため、以下の各項目を実施した。①全作品オリジナル資料の調査とデータベース化、②全作品の主要資料のデジタル画像化、③信時旧蔵出版譜・音楽関係図書目録の作成、④作品の放送記録調査(1925~1955年のJOAKによる信時作品の全放送記録)、⑤作品研究(特に《Variationen(越天楽)》と《海道東征》を中心に)、⑥明治後期における「国楽」創成を巡る言説研究、⑦伝記関係資料調査。このうち、①から⑤までの成果は、著作権保護期間内の画像を除き原則としてウェブにて公開の予定。
著者
橋本 久美子 佐藤 道信 大角 欣矢 古田 亮 吉田 千鶴子 大西 純子
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

東京音楽学校と東京美術学校が明治から昭和戦後まで文部省、皇室、陸海軍、企業、財閥、学校、市町村からの依嘱により行った受託作には、全国各地の校歌・各種団体歌、皇居前の楠木正成銅像や上野公園の西郷隆盛銅像等がある。音楽と美術双方で学内文書調査、現地調査、現物撮影、現状調査、原資料のデータ化等を行った結果、両校の受託作は近代的共同体のイメージを感覚面から共有させ、近代国家形成の一翼を担った点では共通するが、受託の方法、規模、意義、受託作が社会に及ぼす影響や浸透の仕方は相異なることが明らかとなった。
著者
ゴチェフスキ ヘルマン 藤井 浩基 塚原 康子 酒井 健太郎 大角 欣矢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

28年度の研究活動は28年3月12日から29年6月26日まで開催された駒場博物館の「フランツ・エッケルト没後100周年記念特別展「近代アジアの音楽指導者エッケルト--プロイセンの山奥から東京・ソウルへ」」展示中に行われた行事とその準備に集中した。5月28日には東京大学駒場キャンパスで「フランツ・エッケルトとその時代」というタイトルで国際シンポジウムと吹奏楽の演奏会を実施した。シンポジウムには研究代表者と研究分担者全員に加えて安田寛(元奈良教育大学、研究協力者)、李京粉(ソウル大学、研究協力者)、曺允榮(梨花女子大学、招待講演)と文景楠(東京大学、通訳)が参加し、主にこの研究で明らかになった新たな事実の解釈と意義について議論した。演奏会では小澤俊朗の指揮と神奈川大学吹奏楽部の演奏でエッケルトの作品を一次資料から再現した。その中の複数の作品がエッケルトの時代から一度も演奏されていないものであった。作品の性質と再現に当たっての問題点については楽譜作成に協力した都賀城太郎(藤村女子高等学校)から説明があった。6月23日には渡辺克也(オーボエ)と松山元・松山優香(ピアノ)によって、エッケルトのオーボエとピアノの作品を中心とする演奏会を行い、オーボエの専門家成澤良一に解説を依頼した。展示された資料によって成澤氏はアジアのオーボエ受容史について新たな発見をし、本研究企画にも貢献した。特別展は多くの観客を迎えるのみならず、数多くの専門家が(一部繰り返して)展示会を訪れ、その結果研究代表者を含む企画者は多くの刺激を受けることになった。展示が終わってから研究代表者は改めてヨーロッパに渡り、エッケルトがプロイセンやドイツで経験した軍楽隊文化とその時代背景についてさらに調査した。