著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1+2, pp.1-8, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
18

猫の肥満細胞腫(MCT)24例の臨床的特徴と治療成績を検討した。病型は皮膚型17例、脾臓型2例、皮膚・脾臓型5例で、皮膚病巣は手術ないしグルココルチコイド(GC)で治療し、脾臓浸潤の6/7例では脾摘を実施した。皮膚型と皮膚・脾臓型の22例では、初回治療後に6例(皮膚型4、皮膚・脾臓型2)で1~3回の皮膚の遠隔再発が認められた。皮膚の31腫瘍(再発巣を含む)のうち、GC治療を行った7/8腫瘍(88%)は消失して同部での再発は認められず、手術切除した23腫瘍で切除部での再発がみられたのは1例(4%)のみであった。再発転移は全24症例の33%でみられたものの、追跡中(30~2,364日、中央値537日)に腫瘍死が確認されたのは皮膚・脾臓型の1例(4%)のみであった。以上から、猫の皮膚MCTでは手術やGC治療が局所制御に有効で予後は良好であり、脾臓MCTの猫でも脾摘後の長期生存が期待できることが示唆された。
著者
伊東 輝夫 西 敦子 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.77-79, 2015 (Released:2016-07-15)
参考文献数
6
被引用文献数
2

An 8-month-old female cat presented with a 1-month history of open-mouth breathing and intermittent regurgitation. Contrast radiography revealed megaesophagus (ME) with a large pharyngeal mass. The mass was removed by gentle traction under general anesthesia, after which the ME resolved within 9 days. The mass was diagnosed as a nasopharyngeal polyp based on clinical and histopathological findings. A similar polyp recurred 50 days postoperatively, and was also removed by traction followed by four treatments with methylprednisolone acetate. The cat remained asymptomatic for 9 months after the second surgery. This report demonstrates that ME resulting from a nasopharyngeal polyp may resolve spontaneously after polyp removal, but post-surgical glucocorticoid therapy may also be needed to decrease the chance of recurrence.
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.8-12, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
13

眼球以外に発生するメラニン細胞腫瘍(NOMT)は猫では稀な腫瘍である。鼻に発生する増殖活性の高いNOMTは予後が悪いことが示唆されているが、その治療に関する情報はほとんどない。我々は急速に増大した鼻鏡のNOMTに対して鼻鏡切除術を実施した。腫瘍は組織学的に顆粒を持たない上皮様ないし紡錘形の細胞から構成され、中等度の異型性と高い分裂頻度から悪性メラノーマと診断された。腫瘍は尾側の切除縁に近接していたが完全に切除されており、再発や転移は術後5年間みられなかった。猫の鼻鏡に発生するNOMTでは鼻鏡切除術が治療選択肢のひとつになると思われる。
著者
伊東 輝夫 柑本 敦子 内田 和幸 伊藤 宗磨 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.12-16, 2022 (Released:2022-09-22)
参考文献数
26

雑種猫、15歳、避妊雌が外耳道腹側の皮下腫瘤を訴えて来院した。唾液腺腫瘍が疑われ、その後も増大した。49日目に、耳下腺の腹側端から突出する腫瘤を外科的に切除した。病理組織検査、組織化学染色、チトクロームCの免疫染色の結果から、腫瘤はオンコサイトーマと診断された。術後17ヶ月経過した現在も再発や転移は認められていない。本症例は術後に長期生存した猫の耳下腺オンコサイトーマの初めての報告である。
著者
入江 充洋 鵤 満 伊藤 良一 三好 拓馬 栗谷川 優子 藤木 範之 チェンバーズ ジェームズ 内田 和幸
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.503-507, 2021-08-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
10

トラネキサム酸(以下,「TXA」)は,本邦では安全性の高い催吐薬と認識されており,犬の催吐薬として多く用いられている.しかし,TXAを用いた催吐処置後に重篤な有害事象を呈した2例を経験した.1例は投与数日後にショック状態となり死亡し,病理組織学的検査により肺動脈血栓,肝臓のび漫性うっ血及び腎臓にアミロイド沈着が認められた.他の1例は,TXA投与後にてんかん重積状態を発症したが,数日間の抗てんかん薬の投与にて改善した.そこで,TXAによる催吐処置後の有害事象発生状況を把握する目的で,臨床獣医師にアンケート調査を実施した.その結果,15%の獣医師が有害事象を経験していた.最も多い有害事象は痙攣であった.
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1+2, pp.9-13, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
9

8 歳、避妊雌のジャック・ラッセル・テリアに急性細菌性腹膜炎が認められた。開腹手術で空腸に2つの穿孔部位が見つかり、それぞれを切除し、病理組織検査と免疫染色から組織球性肉腫と診断された。術後は順調に回復し、カルボプラチンの投与を7回行い、術後185日目の慢性下痢による死亡時まで穿孔性腹膜炎や腫瘤の再発はみられなかった。本症例は犬の小腸原発組織球性肉腫の最初の報告例であるが、本腫瘍では小病巣でも自然穿孔が生じる可能性があり、それに対しては手術切除が有効であることが示唆された。
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 小島 一優 椎 宏樹
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.30-35, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
25

去勢雄の雑種猫が、喉頭尾側の気管腫瘤により急性の呼吸困難を示した。気管切開術による減量によって呼吸状態は速やかに改善し、患猫はその日に帰宅した。摘出した腫瘤は病理組織検査、免疫染色、遺伝子検査からび漫性大細胞B細胞性リンパ腫と診断された。細胞診に基づき手術当日からCOP療法を16回(5サイクル)、続いてドキソルビシン治療を4回実施して治療を終了した。術後958日を過ぎた現在も再発することなく生存中である。
著者
蟻川 奈緒子 チェンバーズ ジェームズ 林 幸太郎 内田 和幸 苅谷 卓郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.77-82, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

メルケル細胞癌を含む多発性皮膚腫瘍が発生した15歳齢の猫の臨床転帰および病理所見について報告する。腰背部に皮膚腫瘤を認め,病理組織検査からリンパ節転移を伴うメルケル細胞癌と診断した。背部にも多発性皮膚病変を認め,病理組織学的にボーエン様表皮内癌,基底細胞癌,および皮膚肥満細胞腫と診断した。第154病日に斃死し,病理解剖にて骨盤腔内にメルケル細胞癌の浸潤病変を確認した。本論文では,他の複数の皮膚腫瘍との併発がみられた猫のメルケル細胞癌の病理解剖および組織検査所見の詳細を述べる。
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.9-13, 2017

8 歳、避妊雌のジャック・ラッセル・テリアに急性細菌性腹膜炎が認められた。開腹手術で空腸に2つの穿孔部位が見つかり、それぞれを切除し、病理組織検査と免疫染色から組織球性肉腫と診断された。術後は順調に回復し、カルボプラチンの投与を7回行い、術後185日目の慢性下痢による死亡時まで穿孔性腹膜炎や腫瘤の再発はみられなかった。本症例は犬の小腸原発組織球性肉腫の最初の報告例であるが、本腫瘍では小病巣でも自然穿孔が生じる可能性があり、それに対しては手術切除が有効であることが示唆された。
著者
合田 麻衣 宮 豊 三重 慧一郎 チェンバーズ ジェームズ 内田 和幸 秋吉 秀保
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-47, 2019-01-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
12

Hansen Ⅱ型椎間板ヘルニアと診断し,治療及び経過観察していた避妊雌のシェットランド・シープドッグが進行性運動失調,声のかすれを示した.スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)1遺伝子変異解析は変異型ホモ接合だった.第859病日に呼吸不全で死亡したため,病理解剖を実施し脳と脊髄の組織検査を行った.病理組織学的に脊髄白質のミエリン脱落と軸索変性及び,び漫性の星状膠細胞増殖を認め,腹角の神経細胞の消失や残存する神経細胞の色質融解が認められた.これらの変化は変性性脊髄症(DM)とほぼ一致していた.SOD1遺伝子の変異型ホモ接合を持ち,進行性の運動失調を呈するシェットランド・シープドッグは,DMの可能性を鑑別診断として考慮する必要があると考えられた.
著者
伊東 輝夫 西 敦子 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.37-41, 2015 (Released:2015-11-24)
参考文献数
14

脊椎原発骨肉腫は犬では稀な疾患であり、その治療や予後に関する報告は少ない。本報告では減容積手術を実施した3例について述べる。症例1は雑種犬、12歳、雌、体重10kgで、第3腰椎の骨肉腫による進行性の後肢麻痺がみられた。減容積手術で麻痺は一時的に改善したが、その後麻痺が進行し、術後46日目に安楽死させた。症例2は雑種犬、8歳、雌、体重15 kgで、第12胸椎の骨肉腫による急性の後肢麻痺がみられた。減容積手術と6回のカルボプラチン治療により7ヶ月以上歩行機能の維持が可能であった。症例3はウエルッシュ・コーギー・ペンブローク、10歳、雄、体重11 kgで、第5胸椎骨の肉腫による後肢麻痺を急性発症した。減容積手術を実施したが麻痺は改善せず、術後27日目に死亡した。以上の症例の治療経過から、脊椎骨肉腫の減容積切除は診断と緩和に有効であるが、予後は症例によって大きく異なることが示唆された。