著者
一丸 禎子
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.97-117, 2010

本論は現在進行中の「マザリナード文書の電子化──次世代型コーパスの構築と新しい研究環境に関する総合研究」(平成22 年度科学研究費補助金:課題番号22320066)によりWeb 公開されることになったマザリナード文書の資料解題である。この資料は17 世紀フランスのフロンドの乱の時期に手書きや印刷で流布された文書である。しかし、膨大なその量により資料体としての活用が困難であった。このたびのWeb 公開でマザリナード文書の研究は確実に新たな局面を迎える。そこでこの資料体の特色(とりわけフロンドの乱との関連)と価値、さらに今回データベース化され、コーパスの重要な核となる東京大学コレクションのこれまで全く不明であったその由来と希少性の高い文書について記述する。なお、この文献調査は2008 年に逝去されたマザリナード研究の第一人者ユベール・キャリエ教授の協力なくしては成し遂げられなかったことをここに記しておく。With the support of a Governmental Grant (Kakenhi n°22320066), the whole corpus of Mazarinades from the collection at the University of Tokyo will soon be available in a web site entitled" Projet Mazarinades, to built a new type of corpus and change the research environment". The Mazarinades consist of the numerous and various texts published during the Fronde, a Civil War in France that occurred in the middle of the 17th century. Considered today as a precious Corpus, both historically and literarily, the Mazarinades are relatively diffi cult to access, as they are dispersed worldwide and are often stored in restricted areas. From early 2011, however, computers and networks will permit the control and open access to a large number of the original documents. Prior to the opening of this online database, it is necessary to fi rst evaluate the consistency of this corpus with respect to the historical relation with the Fronde, and concerning the origin of the corpus itself. This is particularly important for the collection of the University of Tokyo, which represents the core of the digitalized corpus we are promoting, as it has yet to be described until now. The philological analysis of the Mazarinades collection I am presenting here for the fi rst time would not have been possible without the help and advice of Hubert Carrier, a Tours University Emeritus Professor who passed away in 2008, and was the fi rst researcher to consider Mazarinades an independent research fi eld.
著者
一丸 禎子
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.87-106, 2009-03-28

本論は学習院大学から申請した科学研究補助金(平成20 年度)によりデジタル化されることになった日本の「マザリナードコレクション」をインターネット上で次世代型の人文科学研究のコーパスとして構築するための方法を考察する。初めに近年の人文科学研究をとりまくWeb 環境の例として、フランス語圏の電子図書館、研究用サイトの歴史的発展の経過を分析し、新しい技術を応用して、より開かれた形態での共同作業が今後の人文科学研究を活性化することを確認する。つぎにその分析結果を生かしつつ、具体的事例として「マザリナードコレクション」をコーパスとしてWeb 上に公開することの意義および人文科学研究への貢献を考察する。
著者
一丸 禎子 Patrick Rebollar Mare Thierry 松村 剛 アヴォカ エリック PERRONCEL Morvan ソルデ ヤン メロ ジャン=ドミニク ツィンビディ ミリアム ハフマイヤー ステファン ベルナール ミシェル
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東大コレクション『マザリナード集成』電子化の次の段階として、資料体のデジタル化により可能になる新しい研究環境を考察し、実際に応用した。マザリナード研究の分野で日本は世界に先駆けてデジタル化と研究用プラットフォームの公開を実現しているが(マザリナード・プロジェクト)、さらに次の点でより鮮明にそれを可視化することに成功した。①資料体の非物質化によって閲覧利用の利便性と引き換えに失われる情報を展覧会等のオリジナルの展示によって補い(『マザリナード集成』展)、②二つの国際シンポジウムを組織・運営し、マザリナード研究自体を活性化(フランス)、電子コーパスの利用に特化した成果発表(東京)を行った。
著者
PATRICK Rebollar 松村 剛 丸岡 高弘 真野 倫平 クーロン ダヴィッド ペロンセル モルヴァン 一丸 禎子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』約2700点を完全デジタル化し、世界に先駆けマザリナード文書のオンライン・デジタルコーパスとしてインターネット上に公開した。これにより世界的にも貴重な原資料の保護と継承のみならず、新たな学術研究の可能性を開くことに貢献した。本研究により実現したコーパスの特徴は従来型データ・ベースと異なり、研究者によって絶えず更新され、最新の知識が一般にも共有されることである。日本が発信したこの新しい知の共有・集積方法(マザリナード・プロジェクト)は最も先端的かつ学際的な「マザリナード文書の研究用プラットフォーム」として国際的に機能し始めている。