著者
松村 剛志
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-36, 2005
被引用文献数
1

従前の高齢者介護研究においては、主に家族介護者に焦点があてられ、要介護者の視点が欠如していたといえる。また、家族介護といった場合、老親扶養がその着目点の中心であった。そこで本論文では、在宅で介護を継続している9組の夫婦にインタビュー調査を行い、介護関係の発生による夫婦関係の変化を明らかにしようと試みた。その結果、夫婦双方の語りの中から、性規範に基づいて家庭内で分業されていた役割が、夫権支配は残存しながらも、要介護状態の発生により、双方の能力に応じて再配分されていく様子が浮かび上がってきた。夫婦間介護における関係性には、勢力の偏重による支配と依存という側面とお互いに気遣い合うという相補的な側面の共存が認められた。また、夫婦関係と介護関係という二つの関係は、特定場面で調和的に使用されているわけではなく、そのズレは夫婦間の不満や葛藤の原因となっており、その多くは感情労働を求められる妻に生起していた。
著者
松村 剛 齊藤 利雄 藤村 晴俊 佐古田 三郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.211-217, 2012 (Released:2012-04-25)
参考文献数
18
被引用文献数
20 22

呼吸管理や心筋保護治療により,Duchenne型筋ジストロフィーの生命予後はいちじるしく改善したが,心機能障害の遷延により循環動態の脆弱性が課題となる.われわれは,最近心機能指標が比較的保たれたまま腎不全で死亡した症例を6例経験し,本症における腎機能障害に関心を抱いた.筋萎縮症例ではcreatinineが低下するため,筋量に影響されないcystatin CをもちいてDMD 103例を評価したところ,30歳以上の患者では3割以上が異常値を示し,貧血と腎機能障害の関連も示唆された.本症の医療管理では心腎貧血連関に留意すべきで,適切な水分バランスや貧血に対する積極的治療などが必要と思われる.
著者
一丸 禎子 Patrick Rebollar Mare Thierry 松村 剛 アヴォカ エリック PERRONCEL Morvan ソルデ ヤン メロ ジャン=ドミニク ツィンビディ ミリアム ハフマイヤー ステファン ベルナール ミシェル
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東大コレクション『マザリナード集成』電子化の次の段階として、資料体のデジタル化により可能になる新しい研究環境を考察し、実際に応用した。マザリナード研究の分野で日本は世界に先駆けてデジタル化と研究用プラットフォームの公開を実現しているが(マザリナード・プロジェクト)、さらに次の点でより鮮明にそれを可視化することに成功した。①資料体の非物質化によって閲覧利用の利便性と引き換えに失われる情報を展覧会等のオリジナルの展示によって補い(『マザリナード集成』展)、②二つの国際シンポジウムを組織・運営し、マザリナード研究自体を活性化(フランス)、電子コーパスの利用に特化した成果発表(東京)を行った。
著者
松村 剛志 山田 順志 吉田 英雄 楯 人士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101744, 2013

【はじめに、目的】 近年、高齢者の世帯構造は大きく変化しており、夫婦のみ世帯、単独世帯が増加している。夫婦のみ世帯で要介護者が生じた場合、「今後も二人の生活を継続したい」との希望から、配偶者が介護者になることが多いと報告されている。通所リハビリテーション(通所リハ)利用者においても、夫婦間介護形態は多く認められ、リハ・サービスの提供だけでなく、介護負担軽減も期待されている。しかし、リハ機能に特化している1時間以上2時間未満(短時間)の通所リハの場合、要介護者と介護者が物理的に離れている時間が短く、介護負担の軽減効果は小さいことが想定される。そこで今回、夫婦間介護における介護者から見た短時間通所リハ利用の意味付けの変化を明らかにし、短時間通所リハ・サービスが要介護者の生活機能を介してどのように夫婦間介護生活の安定に寄与できるのかを検討した。【方法】 対象は、夫婦間介護における要介護者がA短時間通所リハ事業所(定員20名/日)を6カ月以上利用しており、かつ2度の対面調査(平成23年9~10月と平成24年8月)が可能であった10名の介護者(うち女性6名、平均年齢73.8歳)である。利用者本人の要介護度は「3」が5名、「2」が2名、他の要介護度は1名ずつであった。 対面調査においては、録音の許可を取った後に半構成的インタビューを20~60分実施した。インタビュー終了後に、録音内容の逐語録を作成した。逐語録の中から短時間通所リハ利用に関係する語りを抽出し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を参考に質的分析を試みた。M-GTAは、逐語録の注目箇所を抽出した分析ワークシートを用いて概念生成およびカテゴリー生成を行い、得られた概念やカテゴリーから事象の説明モデルを構築する分析手法である。研究内容の質の確保には信頼性や妥当性という概念を適用できないため、複数の地域リハ従事者に分析結果を開示し、信用可能性の確保に努めた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は浜松大学研究倫理委員会の承認を得た上で、対象者に対して研究者が書面での説明を行い、同意書への署名を得た。【結果】 分析の結果、16個の概念が生成され、それを9個のカテゴリーにまとめることが出来た。これらのカテゴリー名(「 」内)を用いて構築された説明モデルは以下の通りである。 夫婦間介護における介護者からみた短時間通所リハの意味付けには、「短時間通所リハ限定の利用希望」から「サービス効果の認識」を経て、「不安の相対的増加」、そして「悪くならないように個別リハを続けたい」と考えるようになるプロセスが認められた。同時に、介護者は短時間通所リハを利用することによる生活全般の肯定的変化を認識出来ているものの、家庭と施設の間におけるパフォーマンスギャップといった「要介護者の心身状況に対する不満」や「介護者自身の健康問題」の影響で、「不安の相対的増加」が生じ、個別リハの利用継続を希望するようになる様子が明確化された。サービス利用の継続は、要介護者の「状態は変わらない」という認知や「新たな身体的トラブルの発生」を招く。要介護者の「状態は変わらない」状況にあっても、「介護者の健康問題」から「不安の相対的増加」が生じる。一方、新たなトラブルの発生は直接的に「不安の相対的増加」を招くが、通所介護の追加や生活環境調整の実施等による「リハ・サービス以外の対処法を追加」することで、ニーズを個別リハの継続に留めておくことを可能にしている。【考察】 今回、短時間通所リハを利用している夫婦間介護の介護者という範囲に限定される結果ではあるが、介護者が個別リハの提供という短時間通所リハの特徴を理解した上で、将来に対する不安へ対処するために個別リハの利用継続を希望している様子が明確となった。同時に、アクシデントが発生し、個別リハで対応しきれないニーズが生じた場合、リハ・サービス以外の対処法を追加するという現実的対応を行っている様子も明らかとなった。一方で介護者がサービスの効果を認識しても、介護者自身の健康問題や要介護者への不満によって将来への不安は増加していた。このことは、要介護者のADL能力向上を働きかけるだけでは、夫婦間介護の安定は難しいことを示している。今回明らかとなった説明モデルに基づけば、要介護者のパフォーマンスギャップを埋める働き掛けや安定的な個別リハの提供に努めることが、介護者の不安感の軽減に役立つものと想定された。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、夫婦間介護における介護者が短時間通所リハに個別リハの継続を求めている様子を明らかとした。さらに、他のサービスとの連携によって介護者の抱く不安感を軽減し得るという説明モデルを提示することが出来た。
著者
松村 剛志 大場 美恵 山田 順志 楯 人士 青田 安史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】介護保険制度においてリハビリテーション(リハ)専門職は,生活機能全般,特に活動の向上に働きかける役割を求められている。役割にはこうした社会や制度の中で付与される集団的役割だけでなく,関係的地位の相手方の期待に基づく関係的役割も存在する。外来理学療法では患者の期待と理学療法士(PT)の役割認識にズレが生じていることが明らかとされているが,介護保険サービスにおいて要介護者が抱くPTへの役割期待は十分に解明されておらず,その変化を捉えようとする試みも見当たらない。そこで今回,通所リハ利用者の抱くPTへの役割期待の変化を質的研究手法を用いて明確にすることを試みた。【方法】対象者は静岡県中部地域にある2カ所の通所リハ事業所にてPTによる通所リハ・サービスを受けており,重度の記憶障害がなく言語によるコミュニケーションが可能で,かつ同意が得られた14名の要介護高齢者であった(男性10名,女性4名,平均年齢76.9±4.1歳)。主要疾患は脳血管障害9名,パーキンソン病3名,その他2名である。2012年9月に11名,追加調査として2013年3月に3名の対面調査を行った。面接は録音の許可を取った後に,通所リハ利用の目的,PTへの期待とその変化等について半構成的インタビューを行った。20~40分の面接終了後に,録音内容の逐語録を作成し,Steps for Coding And Theorization(SCAT)を用いて分析した。SCATによる分析では,まずSCATフォームの手順に沿って文字データから構成概念の生成を進めた。同時に,データに潜在する研究テーマに関する意味や意義を,得られた構成概念を用いてストーリーライン(SL)として記述した。次に,個々の対象者においてSLを断片化することで個別的・限定的な理論記述を行った。得られた理論記述の内容をサブカテゴリーと位置づけ,その関係性を検討した上でカテゴリーを構築した。最後に集約されたカテゴリーを分析テーマに沿って配列し直し,研究対象領域に関するSLを再構築した。対象者14名にて理論的飽和の判断が可能かどうかは,シュナーベル法を用いて構成概念の捕獲率を求め,捕獲率90%以上にて理論的飽和に達していると判断した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は平成24年度浜松大学研究倫理委員会の承認を受けており,対象者に対して書面ならびに口頭での説明を行った後に同意書への署名を得た。【結果】本研究では,76種類154個の構成概念が構築され,14例目における捕獲率は93.54%であった。また,全対象者から37個の理論記述が生成され,6つのカテゴリーに分類された。これらのカテゴリーから構築されたSLは以下の通りである。通所リハ利用者は,サービス開始当初,PTに対して身体機能や歩行能力の回復に対する働きかけを期待していた。ただし,脳血管障害の対象者にその傾向が強く,慢性進行性疾患の場合は悪化防止に焦点が当てられていた。リハ効果は,自己による自己評価と他者による自己評価の認知によって確認されており,息切れや歩行といったモニタリング指標を各自が持っていた。リハ効果が期待通り或いは期待以上であれば,PTへの信頼感に基づく全面的委任や担当者の固定による現状の継続が希望され,PTには得られた効果の維持が期待されるようになった。一方,転倒のような失敗体験の反復は,自己信頼感を低下させ,リハ効果が期待外れや不十分と認識される要因となっていた。この場合,サービスへのアクセスそのもの(回数増加や治療時間の延長)が期待されるようになり,治療効果を生み出すことは期待されなくなっていた。さらに,利用者に回復の限界に関する気づきがみられると,利用者は通所リハをピアと会える新たなコミュニティと位置づけていた。【考察】本研究においては,利用者のPTに対する役割期待に変化が認められ,その変化にはモニタリングされたリハ効果をどのように自己評価しているかが大きく影響しているものと考えられた。通所リハにおける利用者の満足感に関する背景要因には,(1)設備や雰囲気といった場,(2)サービス担当者の知識・技術・言動,(3)プログラムの多様性や治療機会,(4)心身の治療効果が挙げられている。利用者がPTから満足感を得ようとする場合,これら要因を組み合わせてPTへの役割期待を作り上げているものと考えられ,モニタリングの結果によって役割期待を能動的に変更している可能性も示唆された。【理学療法学研究としての意義】本結果は一地域の通所リハ利用者に限定されるものではあるが,通所リハ利用者の抱くPTへの役割期待の変化をSLとして明らかにし,PTが利用者理解を深めるためのモデルケースを提示できたものと考えられる。
著者
久米 悠太 平松 健司 長嶋 光樹 松村 剛毅 山崎 健二
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.154-160, 2016-07-15 (Released:2016-08-19)
参考文献数
23

[背景]小児期の人工弁置換術には術後の脳関連合併症や血栓弁,成長に伴うサイズミスマッチなどの懸念があり可及的に弁形成術を行うことが望ましいが,やむを得ず弁置換術となる症例が存在する.15歳以下の孤立性僧帽弁疾患(孤立性僧帽弁閉鎖不全症,孤立性僧帽弁狭窄症)に対する僧帽弁形成術,僧帽弁置換術の遠隔期成績を検討した.[対象]1981年1月から2010年12月までに当院で僧帽弁形成術を行った30例(P群:男児21例,平均年齢4.6±4.6歳,平均体重13.4±8.9 kg),および機械弁による僧帽弁置換術を行った26例(R群:男児9例,6.2±4.6歳,平均体重16.4±11.2 kg)の計56例を対象とした.平均追跡期間9.3±7.8年,最長27.7年であった.また,孤立性僧帽弁閉鎖不全症(iMR)群と孤立性僧帽弁狭窄症(iMS)群とに分けて追加検討を行った.[結果]P群,R群ともに周術期死亡例はなく,遠隔期にR群で4例を失った.再手術はP群で6例,R群で5例に認めた.脳関連合併症は両群とも遠隔期に1例ずつ認めたのみで,人工弁感染は認めなかった.10年時および20年時での生存率はP群100%,100%,R群88.0%,80.0%であり有意差が見られた(p=0.043).10年時および20年時での再手術回避率はP群77.6%,77.6%,R群77.0%,70.0%,10年時における脳関連合併症回避率はともに100%であり有意差は見られなかった.iMR群とiMS群の10年時における生存率は100%と53.3%であり有意差がみられた(p=0.001).iMR群とiMS群の10年時における再手術回避率は77.1%と64.3%,20年時では72.0%と64.3%であり有意差は見られなかった.[結語]15歳以下の孤立性僧帽弁疾患に対する僧帽弁形成術,僧帽弁置換術の遠隔期成績は,懸念していた機械弁置換術後の脳関連合併症回避率や再手術回避率も僧帽弁形成術と有意差なく,小児期の僧帽弁手術として許容されるものであった.特に孤立性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁手術の遠隔期成績は良好であった.孤立性僧帽弁狭窄症においては孤立性僧帽弁閉鎖不全症に劣らない再手術回避率であったが生存率には懸念が残る結果となった.
著者
松村 剛志 大場 美恵 山田 順志 楯 人士 青田 安史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1032, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】介護保険制度においてリハビリテーション(リハ)専門職は,生活機能全般,特に活動の向上に働きかける役割を求められている。役割にはこうした社会や制度の中で付与される集団的役割だけでなく,関係的地位の相手方の期待に基づく関係的役割も存在する。外来理学療法では患者の期待と理学療法士(PT)の役割認識にズレが生じていることが明らかとされているが,介護保険サービスにおいて要介護者が抱くPTへの役割期待は十分に解明されておらず,その変化を捉えようとする試みも見当たらない。そこで今回,通所リハ利用者の抱くPTへの役割期待の変化を質的研究手法を用いて明確にすることを試みた。【方法】対象者は静岡県中部地域にある2カ所の通所リハ事業所にてPTによる通所リハ・サービスを受けており,重度の記憶障害がなく言語によるコミュニケーションが可能で,かつ同意が得られた14名の要介護高齢者であった(男性10名,女性4名,平均年齢76.9±4.1歳)。主要疾患は脳血管障害9名,パーキンソン病3名,その他2名である。2012年9月に11名,追加調査として2013年3月に3名の対面調査を行った。面接は録音の許可を取った後に,通所リハ利用の目的,PTへの期待とその変化等について半構成的インタビューを行った。20~40分の面接終了後に,録音内容の逐語録を作成し,Steps for Coding And Theorization(SCAT)を用いて分析した。SCATによる分析では,まずSCATフォームの手順に沿って文字データから構成概念の生成を進めた。同時に,データに潜在する研究テーマに関する意味や意義を,得られた構成概念を用いてストーリーライン(SL)として記述した。次に,個々の対象者においてSLを断片化することで個別的・限定的な理論記述を行った。得られた理論記述の内容をサブカテゴリーと位置づけ,その関係性を検討した上でカテゴリーを構築した。最後に集約されたカテゴリーを分析テーマに沿って配列し直し,研究対象領域に関するSLを再構築した。対象者14名にて理論的飽和の判断が可能かどうかは,シュナーベル法を用いて構成概念の捕獲率を求め,捕獲率90%以上にて理論的飽和に達していると判断した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は平成24年度浜松大学研究倫理委員会の承認を受けており,対象者に対して書面ならびに口頭での説明を行った後に同意書への署名を得た。【結果】本研究では,76種類154個の構成概念が構築され,14例目における捕獲率は93.54%であった。また,全対象者から37個の理論記述が生成され,6つのカテゴリーに分類された。これらのカテゴリーから構築されたSLは以下の通りである。通所リハ利用者は,サービス開始当初,PTに対して身体機能や歩行能力の回復に対する働きかけを期待していた。ただし,脳血管障害の対象者にその傾向が強く,慢性進行性疾患の場合は悪化防止に焦点が当てられていた。リハ効果は,自己による自己評価と他者による自己評価の認知によって確認されており,息切れや歩行といったモニタリング指標を各自が持っていた。リハ効果が期待通り或いは期待以上であれば,PTへの信頼感に基づく全面的委任や担当者の固定による現状の継続が希望され,PTには得られた効果の維持が期待されるようになった。一方,転倒のような失敗体験の反復は,自己信頼感を低下させ,リハ効果が期待外れや不十分と認識される要因となっていた。この場合,サービスへのアクセスそのもの(回数増加や治療時間の延長)が期待されるようになり,治療効果を生み出すことは期待されなくなっていた。さらに,利用者に回復の限界に関する気づきがみられると,利用者は通所リハをピアと会える新たなコミュニティと位置づけていた。【考察】本研究においては,利用者のPTに対する役割期待に変化が認められ,その変化にはモニタリングされたリハ効果をどのように自己評価しているかが大きく影響しているものと考えられた。通所リハにおける利用者の満足感に関する背景要因には,(1)設備や雰囲気といった場,(2)サービス担当者の知識・技術・言動,(3)プログラムの多様性や治療機会,(4)心身の治療効果が挙げられている。利用者がPTから満足感を得ようとする場合,これら要因を組み合わせてPTへの役割期待を作り上げているものと考えられ,モニタリングの結果によって役割期待を能動的に変更している可能性も示唆された。【理学療法学研究としての意義】本結果は一地域の通所リハ利用者に限定されるものではあるが,通所リハ利用者の抱くPTへの役割期待の変化をSLとして明らかにし,PTが利用者理解を深めるためのモデルケースを提示できたものと考えられる。
著者
武部 聡 横尾 尚哉 水橋 輝 松村 剛 駒野 徹
出版者
近畿大学先端技術総合研究所
雑誌
近畿大学先端技術総合研究所紀要 (ISSN:13468693)
巻号頁・発行日
no.10, pp.29-36, 2005-03

土壌細菌Bacillus thuringiensis subsp. israelensis が保有する遺伝子cyt1A のプロモーター領域およびcry4Aのターミネーター領域を用いてBt 細胞内ではたらく発現ベクターpPcyt1A を構築した。このベクターにCry タンパク質遺伝子をクローン化し、クリスタルを生産しないBt 細胞に導入したところ、Cry タンパク質の発現およびクリスタル形成が確認され、本発現系の有効性が示された。
著者
PATRICK Rebollar 松村 剛 丸岡 高弘 真野 倫平 クーロン ダヴィッド ペロンセル モルヴァン 一丸 禎子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』約2700点を完全デジタル化し、世界に先駆けマザリナード文書のオンライン・デジタルコーパスとしてインターネット上に公開した。これにより世界的にも貴重な原資料の保護と継承のみならず、新たな学術研究の可能性を開くことに貢献した。本研究により実現したコーパスの特徴は従来型データ・ベースと異なり、研究者によって絶えず更新され、最新の知識が一般にも共有されることである。日本が発信したこの新しい知の共有・集積方法(マザリナード・プロジェクト)は最も先端的かつ学際的な「マザリナード文書の研究用プラットフォーム」として国際的に機能し始めている。