著者
藤井 達哉 一井 啓介 谷口 航太郎 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_259-I_268, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
28

我が国では,若年者の地方から都市への人口流出が,量の観点から問題視されているが,質に関して議論が行われていない.海外への頭脳流出は問題視されても,それより身近な国内における地方からの頭脳流出は看過されているのである.本稿では,大学入試偏差値を用いて地方からの頭脳流出の実態を分析し,その累積的影響を推計する方法を提案した.まず,大学進学者と大卒就職者を都道府県間移動の有無で集計し,地方別に各偏差値の学生が占める割合を分析した.次に,地方別・偏差値別の大卒残留者数を推計した.分析から,高偏差値の大卒者が地方から首都圏へ流出する構造を定量的に明らかにした.また,現在の大学進学者と大卒就職者の人口移動が将来にわたり続いた場合,地方から高偏差値の大卒残留者が累積的に減少していくことを示した.
著者
一井 啓介 御手洗 陽 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.569-576, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
34

近年,分散型電源の活用に向けてスマートタウンの検討が行われているが,それらの多くは街で不足する電力を系統電力から賄っているという課題がある.そこで本研究では,街から離れた分散型電源から不足する電力を賄う「サテライト型スマートタウン」の実現に向けて,分散型電源から街までの電力輸送に自営線に代わって電気自動車を用いることで,電力輸送にかかるコストを削減できる可能性を検証している.その結果,以下のことが示された.1) 分散型電源から8km程度離れ,かつ世帯数が100世帯未満の街で導入可能性が高いこと,2)直流電力の活用など技術革新によって導入可能性は大きく向上すること,3)蓄電容量の大きい電力輸送EVよりも低コストの電力輸送EVの方が活用可能性は高いこと.
著者
寺部 慎太郎 一井 啓介 柳沼 秀樹 小野 瑞樹 田中 皓介 康 楠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_669-I_679, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
37

観光客の回遊行動の把握は,従来はアンケートによる調査やGPSを用いた調査に依っていたが,近年ではWi-Fiパケットセンサーを用いた調査がなされている.本論文の目的は,Wi-Fiパケットセンサーを用いて歩行者や観光客の行動を把握し分析した研究論文をレビューすることと,それを踏まえて筆者らの取り組みからまだ発表されていない分析例を提示することである.特に,歩行が主な交通手段である比較的狭い地域内での観光スポット間OD交通量は従来の手法ではなかなか得にくいものである.そこで,1年目から3年目における2日分の成果を比較する.3時点のセンサー設置地点間のODパターンを比較したところ,その相関係数は高いものの少数のOD交通量が多いため,当センサーで得られたデータの範囲内では必ずしも類似性があるとはいえないことが分かった.