著者
納 敏 麻生 節子 柳尾 和広 一条 茂
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.927-929, 1992
被引用文献数
1

分娩数日前の軽種馬に対してビタミンE1,000mgを1回または5日間隔で2ないし3回筋肉内に投与し, 分娩後の胎盤排泄時間に及ぼす効果を検討した.ビタミンE非投与例では, 血清トコフェロール値300μg/100m<I>l</I>以上例のうち胎盤排泄時間が60分以上を要した例が11.1%であったのに対し, 300μg/100ml以下例では33.3%と多数にみられた. ビタミンE投与例では, 血清トコフェロール値300μg/100m<I>l</I>以下例で全例が60分以内に胎盤が自然排泄し, ビタミンE非投与例に対して有意 (p<0.05) な効果がみられた. いっぽう, 供試馬の血清セレニウムと血液グルタチオンペルオキシダーゼ活性は正常値を示し, かっ胎盤排泄時間との関連がみられなかった.
著者
高鳥 浩介 一条 茂 小西 辰雄 田中 一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.307-313, 1981-06-25
被引用文献数
1

本邦における馬の皮膚真菌症の最近の発生状況については十分検討されていない. そこでわれわれは, 1978年に本邦でも馬の生産地として知られる北海道内での発生状況について, 臨床的ならびに真菌学的検索を行なった. 対象地域は北海道内上川, 日高, 十勝および北見の4支庁管内で, 軽種馬育成牧場と競走用輓馬を繋留している競馬場であった. 7軽種馬育成牧場での発病率は, 21.9〜100%であり, 対象牧場すべてに馬の皮膚真菌症発生を認めた. また, 3競馬場での発病率をみたところ, 8.6〜18.8%であり, いずれの競馬場でも本症の発生を認めた. 発病の時期をみると, 軽種馬では7〜9月の放牧期に多く, 輓馬では7〜10月の競馬開催時に多く, いずれも感染馬や原因菌で汚染された馬具との接触が発病に関係深いものと考えられた. 皮膚病巣の発生部位は, 育成馬では全身各所にわたることが多く, 輓馬ではゼッケンの装着部位である胸部から病巣が始まる例が多かった. すべての発病馬の病巣から共通してTrichophyton equinumが分離され, 本菌が発病の主な原因と考えられた. また一部の発病馬からは, Microsporum canisが分離された. M. canisの本症発生における原因菌としての役割については, 今後の検討すべき問題と思われた. 以上の成績から, 北海道おける馬の皮膚真菌症は定着した疾患となっており, また本病が全国的に認められるものと考えられた. したがって, 今後本病に対する適切な予防と治療対策が重要な衛生上の課題であると思われた.
著者
一条 茂 小野 悌二 本多 道明
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.106-110, 1959-03-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

In a certain animal farm in the Tokachi district of Hokkaido, 10 sheep which were housed in the same shed were attacked one after another, in the fall of 1956, by a febrile disease with anemia and hemoglobinuria as its principal symptoms. The investigation of the affected animals made it clear that this disease was piroplasmosis which had been reported very little in Japan.The symptoms revealed on these cases consisted of anemia, jaundice, hemoglobinuria, pyrexia of about 40.5°C, and lumbar paralysis. In the hematological examination, organisms of Piroplasma, pear-and twin-pear-shaped, spherical, and rodlike, were demonstrated in red blood corpuscles.When inoculated intravenously with the blood drawn from the infected animals, healthy sheep ran fever at about 40.5°C for 3 to 13 days after inoculation, showing remittent fever. Since the onset of fever, anemia became gradually conspicuous, the erythrocyte count dropping to 4 million on the 10 th day. With the advancement in anemia, a remarkable polychromasia and basophilic petechiasis of erythrocytes, erythroblasts, pessary corpuscles, and reticulocytes appeared. Piroplasma was also demonstrated. The urine gave positive tests of protein, hemoglobin, and sugar. In general, the symptoms were almost the same with those manifested by the animal naturally infected.With these observations in mind, the authors performed an epizootiological survey on this outbreak of piroplasmosis. The results indicate that the initial case was a breeding ram which was imported in Japan from New Zealand in 1953 and which might have been infected with this disease by ticks, acting as vectors, while it was grazed with some infected sheep in the meadow where the ticks were prevailing. It was possible that this ram had been in the state of carrier of the protozoa when it was brought into Japan.
著者
一条 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.217-228,図4p, 1966-10

犬における腎,上皮小体および骨の病変の関連性(骨腎系症候群)を知るため,腎・上皮小体・骨検索例26例,腎・骨検索例4例,腎・上皮小体検索例8例および参考としての腎検索例375例を加えた合計413例について,病理組織学的研究を行ない,次の結果を得た.1.腎・上皮小体・骨検索例,腎・骨検索例および腎・上皮小体検索例の合計38例のうち,28例に骨腎症候群を肖定すべき所見が認められた.2.骨腎症候群の発現は,一般的には,腎病変に継発した上皮小体機能冗進および繊維性骨栄養障害症の組合わせによると解される.3.本症候群における骨病変は,従来,一義的に腎性上皮小体機能冗進の結果招来されるとされている。しかし著者は,上皮体の介在性変化を認め得ないで,むしろ腎および骨の両病変の直接的関連性を首肯される例にも遭遇したj4.以上の点から,骨腎症候群の病理発生については,今後さらに検討の必要がある所以を知り得た。5.犬の骨腎症候群における原発性腎病変としては,慢性間質性腎炎または慢性糸球体腎炎などの終末腎病変に限られるべきものではなく,亜急性間質性腎炎,さらにはネフローゼなどの早期病変の場合にまで,拡張されるべきものと解された.6.上皮小体変化として,主細胞の淡明化と肥大・増生およびwatcrcIearcc11の出現,ならびに腺胞構造の不規則化を示す実質細胞配列の異常などを含めた上皮小体機能冗進像が指摘された.7.骨病変は,発端病巣に始まって,管腔性ないし非管性の多中心性小孔形成におよぶOstcodystro一phiafibrosagcneraIisataの像を呈していた.8.石灰転移は,本症候群例較に比的頻発する所 見であって,28例中10例に腎を始めとして,胃粘?膜,肺胞壁,胸膜,牌柱,気管支軟骨,子宮粘膜,・骨格筋々間動脈壁,心内膜,大動脈壁などに,その.州現を認め得た.この変化は,腎障害に多くを帰丁べきものと思考される.9.非腎性の繊維性骨栄養障害症に,上皮小体の増生性変化を伴った4例を得た.犬におけるこの例′に類した報告は,従来皆無である。このような例の存在は,骨賢症候群の検索に当たり,批判的態度を保持する必要性を示唆するものと思われる.10.腎検索例375例のうち,病変が認められたものは175例の多数におよんだ.腎病変の主体をなすものは間質性腎炎で,101例の高頻度に達した.以上,著者は,犬における骨腎症候群の存在を病理組織学的に確認し,あわせて従来の報告にみられない本症候群に属する腎病変の種々相を系統的に解明し,進んで本症候群発病病理学説における一元的解釈に批判を加えた.また,腎病変とは無関係に,繊維性骨栄養障害症および上皮小体機能冗進像を呈する例を得て,犬の小皮十体機龍冗進像の発現の一元的でないことをも明らかにした.