著者
福岡 講平 柳澤 隆昭 渡辺 祐子 鈴木 智成 白畑 充章 安達 淳一 三島 一彦 藤巻 高光 松谷 雅生 西川 亮
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.387-391, 2015 (Released:2016-02-06)
参考文献数
11

【緒言】脳幹部腫瘍は, 極めて予後不良な疾患であり, 生存期間の延長に寄与したと証明された化学療法は, 未だ存在しない.今回我々は,放射線治療後再進行を来した脳幹部腫瘍に対する低用量持続経口エトポシド療法の投与経験を報告する.【方法】当院で加療した脳幹部腫瘍症例に対し,後方視的に経口エトポシド療法の効果および有害事象に関し検証した.【結果】対象症例は,11例で,診断時年齢中央値5歳(3–10歳),男女比は1:10であった.10例が画像所見のみで診断し,1例が他院にて生検施行され,膠芽腫と診断された.診断から中央値7か月(2–19か月)で放射線治療後の腫瘍再進行を認め,経口エトポシドが開始になっていた.経口エトポシドへの治療反応性に関しては,画像所見が改善,または変化無であった症例は,画像評価の行われた9例中3例であったのに対し,臨床症状は11例中8例で改善または維持,ステロイド投与量は投与中であった8例のうち,2例で中止,2例で減量を行うことができた.エトポシド投与期間は,中央値6か月で,最長24か月投与が可能であった症例も認められた.症例の全生存期間は,中央値19か月(6–38か月)であった.【結語】脳幹部腫瘍,放射線治療後再進行例において,経口エトポシド療法により明らかに臨床症状の改善が得られる症例が認められ,試みるべき治療方法であると考える.
著者
安部 鉄也 三島 一彦 内野 晃 佐々木 惇 棚橋 紀夫 髙尾 昌樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.627-632, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3 8

症例は84歳女性.緩徐進行性の認知機能障害の経過中に失行が出現した.神経学的所見は認知機能障害,失行に加え左上下肢の筋力低下を認めた.頭部magnetic resonance imaging(MRI)で右側頭頭頂葉の髄膜のfluid attenuated inversion recovery(FLAIR),diffusion weighted Imaging(DWI)高信号を認め造影効果を有し,血液検査で抗cyclic citrullinated peptides(CCP)抗体が高値であった.脳生検ではくも膜下腔を中心とした炎症細胞浸潤を認めた.ステロイドで加療し臨床症候,検査所見ともに改善した.全経過を通じて関節症状は認めていない.本例は慢性髄膜炎の診断治療を考える上で貴重な症例である.発症時に関節症状のないリウマチ性髄膜炎の報告は稀で,本例では特に抗CCP抗体が高値であり,リウマチ性髄膜炎の発症機序を考える上でも稀有な症例である.