著者
三條 伸夫 水澤 英洋
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.287-300, 2010 (Released:2010-06-03)
参考文献数
40
被引用文献数
1 4

プリオン病は正常プリオン蛋白が伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し蓄積することにより発症する.孤発性,遺伝性,獲得性の3種類があり,本邦では1999年からの約10年間のサーベイランス調査で1,320名の患者が確認され,硬膜移植CJD例が多いことや遺伝性CJDで本邦に特異的な変異例が多いなどの特徴がある.孤発性古典型では急速進行性の認知症,四肢のミオクローヌス,MRI拡散強調画像で大脳皮質と基底核の高信号,脳波でPSDなどの特徴的な所見をみとめるが,非典型例も少なくない.臨床症状,髄液検査,遺伝子検索により的確な診断をくだすことが,病態の解明,二次感染予防,心理サポートにおいて重要である.
著者
新井 雅信 中津 雅美 袖山 信幸 三條 伸夫 三谷 雅人 小林 一成 織茂 智之 芝 紀代子
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
生物物理化学 (ISSN:00319082)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.243-248, 1994

著者らはα<sub>1</sub>-antichymotrypsin (ACT) の糖鎖の違いが疾患特異的に存在するか否かを検討する目的で, 交差親和免疫電気泳動法 (CIAE) に着目した. CIAEは一次元, 二次元とも支持体に1%アガロース, 親和性リガンドにはコンカナバリンA (Con A) を用いた. 基礎的検討から一次元ゲルのCon A濃度は0.1%, 二次元ゲルの抗ACT抗体濃度は0.3%, 染色法は4-methoxy-1-naphthol 法が最も優れていることが判明した. 数例の対照群, アルツハイマー型痴呆 (DAT) 患者, パーキンソン病 (PD) 患者の血清, 髄液を本法に適用した. いずれのサンプルも類似した4本より構成されるピークが認められたので, 最も陰極側のピークからACT1~4と名づけた. 血清ACT4は対照群に比べ, PD, DATでは増加傾向を示し, 髄液ACT1, ACT4では対照群に比べDATで低下傾向を示した. 本法は蛋白濃度の低い体液の糖蛋白の検討に有用と思われた.
著者
宍戸-原 由紀子 内原 俊記 三條 伸夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.479-488, 2016-04-01

進行性多巣性白質脳症(PML)は,宿主の免疫低下に伴いJCウイルスが再活性化して起こる脱髄脳症である。臨床的に免疫低下の原因が不明瞭で,髄液ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でウイルス陰性でもなお,画像上PMLの可能性を否定できず脳生検を施行する場合がある。こうした症例では,病理診断の指標となる典型的な核内ウイルス封入体を有する細胞に乏しく,高度な炎症細胞浸潤を伴う場合がある。JCウイルスに対する宿主免疫応答が保たれている状態と考えられ,予後は良好である。本稿では,炎症反応を伴ったPMLについて,近年問題となっている免疫再構築症候群も含め,概説する。