著者
松本 満 三谷 匡
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

哺乳動物の遺伝子機能の解析において、遺伝子ターゲティングによるノックアウトマウス作製技術は個体レベルでの解析システムとして、既に必須のツールとなっている。しかしながら、現行のノックアウトマウスの作製過程では胚性幹細胞(ES細胞)に遺伝子改変操作を行い、その後、キメラマウスの交配によってはじめてへテロマウスが樹立されるため、ホモ個体の樹立までには、長い時間を要する。しかしながら、もし仮に遺伝子改変操作を行った細胞から直接へテロマウスを作製することができれば、研究効率を著しく改善できることは論を特たない。このような視点から、最近報告された体細胞を用いたクローンマウス作製技術を応用し、遺伝子改変操作を行なった体細胞の核移植操作により、直接へテロマウスを取得する系の開発を以下のごとく試みた。1)ターゲティングベクターを導入する体細胞の選択過去に体細胞での相同遺伝子組換え効率はES細胞に比べ低いことが報告されたが、近年、その改善が著しいベクターや遺伝子導入方法用いた相同組換え効率については再検討の余地がある。そこで既存のベクターを用いて胎仔線維芽細胞への遺伝子導入を行なった。胎仔線維芽細胞は、遺伝子導入の効率については優れていたものの、相同組換え体を取得するには至らなかった。2)体細胞に由来する個体作製技術の確立上記と同じく、胎仔線維芽細胞の核移植により体細胞クローンの作出を試みたが、今回の研究では技術的に、依然、きわめて困難であった。以上、本年度の研究からは体細胞クローン技術を応用した簡便なノックアウトマウス作製方法を確立するには至らなかったが、理論的にも十分に可能性がおり、さらに研究を進める必要がある。
著者
西村 愛美 大本 夏未 西山 有依 柳 美穂 三谷 匡 細井 美彦 入谷 明 安齋 政幸
出版者
近畿大学先端技術総合研究所
雑誌
近畿大学先端技術総合研究所紀要 (ISSN:13468693)
巻号頁・発行日
no.15, pp.27-35, 2010-03

本実験では成熟齢C57BL/6J マウスから得られた体外成熟卵子を作出し、レーザー穿孔処理法を用いて各出力条件下(200, 150, 120μsec.)で透明帯穿孔処理を行ない、その後の体外受精および発生能を検討した。C57BL/6J 卵巣より回収した未成熟卵子の体外成熟成績は、91%(1, 517/1, 674)であった。レーザー穿孔処理時間による受精成績は、それぞれ、60%(191/316), 54%(103/192), 45%(196/439)であり、対照区(28%:129/463)と比較し有意な差が認められた(P<0.05)。また一部を培養した結果、胚盤胞期への発生率は31%(32/102), 51%(74/144), 53%(40/75)であった。2細胞期胚を移植した結果、レーザー出力を低出力にした場合、産子の発生向上が確認された〔6%(5/81), 13%(10/83), 21%(12/56)〕。さらにレーザー照射による熱変性を避けるため、卵細胞質を収縮させた透明帯穿孔卵子における受精成績も同様に対照区と比較し有意に向上した(p<0.05)。以上の結果より、C57BL/6J 未成熟卵子の体外成熟およびレーザー穿孔処理の条件を調整することにより、産子への発生を改善することが示唆された。