著者
貝塚 祐太 鈴木 博元 上原 知也
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
アイソトープ・放射線研究発表会
巻号頁・発行日
vol.1, 2021

<p>がん細胞では一般にアミノ酸などの栄養素に対する需要が増加しているため、アスタチン-211(<sup>211</sup>At)標識アミノ酸誘導体によりがんのα線治療を行うことができる。そこで当研究室が開発した<sup>211</sup>At標識母体であるネオペンチル構造をヒスチジンと結合させた薬剤を設計した。本研究では、<sup>211</sup>At標識薬剤を開発する前段階として、<sup>211</sup>Atと同族の<sup>125</sup>Iを標識した薬剤を用いて基礎的評価を行った。</p>
著者
(公社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会 放射性医薬品安全性専門委員会 松田 博史 上原 知也 岡沢 秀彦 水村 直 横山 邦彦 吉村 真奈
出版者
一般社団法人 日本核医学会
雑誌
核医学 (ISSN:21899932)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.509-519, 2017 (Released:2017-02-24)
参考文献数
4

要旨:本調査は,平成27 年度に投与された放射性医薬品に関連して発生した副作用事例の発生頻度とその内容を調べる目的で実施された.調査は,調査票を核医学診療施設に送付して回答を求めるアンケート方式で実施した.調査対象1,274 施設のうち,981 施設より回答が得られた.副作用事例は15 件報告された.回答を得た981 施設における放射性医薬品の投与件数は1,056,828 件であった.副作用発生率は100,000 件あたり1.4 件であった.不良品事例の報告はなかった.
著者
島本 直人 上原 知也
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

チャンネル・トランスポーター遺伝子は、数百あるといわれ、神経疾患やがんをはじめとする種々の疾患との関連性が指摘されているものも多い。近年、チャンネル・トランスポーターのポリクリロナル抗体やモノクロナル抗体が多く開発されてきており、診断・治療に応用できる放射性標識抗体の開発が期待されている。多くの腫瘍細胞に発現するとされるアミノ酸トランスポーターLAT1 を標的にした中性アミノ酸トランスポーターイメージング剤の開発を検討した。放射性標識抗体の評価実験系として、ヒト大腸がん株化細胞DLD-1 を移植した担癌マウス等とし、 腫瘍組織への集積性を評価することとした。 細胞については、リアルタイム PCR により、注目する主なアミノ酸トランスポーター等およびその補助因子(4F2hc, LAT1, LAT2, LAT3, LAT4, ATA1, ATA2, ASCT1, ASCT2, MCT8, TAT1, B0AT1等) に対して既に確立した方法で発現を確認した。 更に、 放射性標識抗体の評価実験系として、これら DLD-1 や AsPC-1 を移植した担癌マウスでの蛋白レベルの発現を確認し、腫瘍組織への集積性を免疫組織化学的な解析に有用であることが確かめられているモノクロナル抗体を125I 標識した放射性抗体とし評価した。用いたモノクロナル抗体は、ヒトの LAT1 タンパク質の N 末端近傍領域に特異的結合をする抗体であったためか、腫瘍組織切片で内在性レベルのLAT1 タンパク質を検出が可能であったが、インビボでの腫瘍検出には適さなかった。
著者
荒野 泰 上原 知也 遠藤 啓吾
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

3'-Iodohippuryl-N^ε-maleoyl-L-lysine (HML)で標識した抗体Fabフラグメントは腎臓の刷子縁膜酵素の作用で,ヨード馬尿酸を遊離して,腎臓での放射活性を投与早期から低減する.本薬剤設計を細胞滞留性の官能基を有するヨード化合物あるいは放射性金属核種へと展開するため,グリシルリジン以外の配列のペプチド結合について刷子縁膜小胞を用いて検討を行った.その結果,リジンをアスパラギン酸,チロシン,フェニルアラニンに変換したペプチド配列は,速やかに馬尿酸を遊離した.とりわけ,チロシンおよびフェニルアラニンが速やかな遊離を示したことから,タンパク質への結合部位の導入の可能なチロシンについてさらに検討を行った.その結果,グリシルチロシン配列は,シラスタチンにより大きく阻害を受けることから,腎刷子縁膜に存在する金属酵素のなかでもヒトにおいてもその高い発現が知られているジペプチーダーゼによる開裂を強く受けることが明らかとなった.次いで,チロシンのフェノール性水酸基にタンパク質との結合部位を導入した化合物を合成し,放射性ヨウ素標識後に抗体Fabフラグメントとの結合した.本標識抗体は,血液中でも安定に存在し,グリシルチロシン配列は,血液中で安定な構造を維持することが確認された.さらに,実験動物に投与したところ,投与早期から,腎臓への放射活性の集積を大きく低減した.本研究成果は,刷子縁膜酵素を利用した標識薬剤の開発において,ヨード馬尿酸以外の標識化合物を遊離する標識薬剤の設計の多様性を示すことを示すものであり,本薬剤設計のさらなる応用への可能性を強く示すと考えている.