著者
井川 正道 米田 誠 岡沢 秀彦
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では,酸化ストレスが運動ニューロンの変性に関与していることが家族性ALSやモデル動物による研究から示唆されているが,患者生体脳における実証はまだない.本研究では,申請者らが開発した62Cu-ATSM PETによる酸化ストレスイメージングによって,ALSにおける神経変性への酸化ストレスの関与を明らかにした.62Cu-ATSMは,過還元状態と呼ばれる,おもにミトコンドリア呼吸鎖の機能不全により電子が過剰に滞留し,酸化ストレスを惹起している部位に集積するため,本PETは酸化ストレスを生体で画像化できる.12名のALS患者(平均年齢65歳)と同年代の健常対照者を対象とし,頭部の62Cu-ATSM PETを施行した.30分間のダイナミックPET撮影を行い,各被験者のstandardized uptake value(SUV)画像を作成し,Statistical Parametric Mapping 2(SPM2)を用いて,解剖学的標準化および全脳平均を行った.さらにSPM2を用いて患者群と対照者群で集積を比較し,SPM上で患者群で有意な集積増加が認められた領域のSUV値を算出し,群間での比較および重症度との相関を検討した.その結果,SPMにて両側の運動皮質と右頭頂葉皮質に,対照者群と比較して患者群で有意な集積増加が認められた.患者群における両側運動皮質のSUV値は対照者群より有意に増加しており,さらに患者群における同部のSUV値は,重症度と正の相関を示した.以上より,ALSでは,運動皮質における酸化ストレスが増加しており,症状が強いほど,すなわち神経変性が進むほど,酸化ストレスが増加することが示された.したがって本研究により,ALSにおける神経変性には,酸化ストレスが関与することが明らかとなった.
著者
嘉田 真平 林 正彦 岡沢 秀彦
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部腫瘍 (ISSN:09114335)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.191-196, 2003-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

頭頸部悪性腫瘍患者への全身18FDG-PET検査の有用性を検討した。当院では2年間に全身FDG-PETを54件45例に施行した。原発巣やリンパ節転移に関して, FDG-PETのみの診断能力とCT・MRI・診察所見のFDG-PET以外の検査を用いた従来の診断能力とを比較し検討した。FDG-PET診断の原発巣に対する感度は90%・特異度は93%であり, FDG-PET以外の診断では感度は95%・特異度は100%であった。リンパ節転移に対するFDG-PET診断の感度は90%・特異度は84%, FDG-PET以外の診断では感度は72%・特異度は80%であった。リンパ節転移に対する診断はFDG-PETが優れていた。しかし, FDG-PETでの診断では, 炎症に集積し偽陽性となることや, 早期の喉頭癌や食道癌などの薄い腫瘍では集積せず偽陰性となる点に注意が必要である。FDG-PETは他の診断と組み合わせることでほとんどの症例で的確な診断ができたが, FDG-PETを用い定期的に経過観察することでさらに正確な診断が期待できる。
著者
(公社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会 放射性医薬品安全性専門委員会 松田 博史 上原 知也 岡沢 秀彦 水村 直 横山 邦彦 吉村 真奈
出版者
一般社団法人 日本核医学会
雑誌
核医学 (ISSN:21899932)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.509-519, 2017 (Released:2017-02-24)
参考文献数
4

要旨:本調査は,平成27 年度に投与された放射性医薬品に関連して発生した副作用事例の発生頻度とその内容を調べる目的で実施された.調査は,調査票を核医学診療施設に送付して回答を求めるアンケート方式で実施した.調査対象1,274 施設のうち,981 施設より回答が得られた.副作用事例は15 件報告された.回答を得た981 施設における放射性医薬品の投与件数は1,056,828 件であった.副作用発生率は100,000 件あたり1.4 件であった.不良品事例の報告はなかった.
著者
定藤 規弘 岡沢 秀彦 小坂 浩隆 飯高 哲也 板倉 昭二 小枝 達也
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

「向社会行動は、自他相同性を出発点として発達し、広義の心の理論を中心とした認知的社会能力を基盤として、共感による情動変化ならびに、社会的報酬により誘導される」との仮説のもと、他者行為を自己の運動表象に写像することにより他者行為理解に至るという直接照合仮説を証明し、2個体同時計測fMRIシステムを用いて間主観性の神経基盤を明らかにした。自己認知と自己意識情動の神経基盤並びに自閉症群での変異を描出したうえで、向社会行動が他者からの承認という社会報酬によって動機づけられる一方、援助行動に起因する満足感(温情効果)共感を介して援助行動の動因として働きうることを機能的MRI実験により示した。