- 著者
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澤村 淳
菅野 正寛
久保田 信彦
上垣 慎二
早川 峰司
渡邉 昌也
丸藤 哲
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.5, pp.219-223, 2011-05-15 (Released:2011-07-23)
- 参考文献数
- 9
QT延長症候群には様々な原因があるが,水泳中に心室細動を発症したRomano-Ward症候群の1症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。症例は12歳女児で学校のプール学習で遊泳中に仰向けに浮いているのを発見され,引き上げたところ心肺停止状態であった。直ちに担任教師により心肺脳蘇生法が開始され,自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED) を装着し除細動を実施した(後の解析で心室細動と判明した)。除細動後,間もなく自己心拍が再開した。気管挿管後,ドクターヘリで当科へ搬送された。意識はJapan coma scale(JCS) 200,Glasgow coma scale(GCS) E1VTM3,瞳孔径左右とも3mm,対光反射は両側とも迅速。血圧136/74mmHg,脈拍84/min,呼吸回数 19/min, SpO2 100%(FIO2 1.0,気管挿管下)。12誘導心電図:完全右脚ブロック,QTc 0.49secとQT時間の延長を認めた。24時間の脳低温療法を行い,神経学的後遺症は残さず回復した。日本循環器学会のガイドラインに準拠して植え込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)の適応(class I)となり,第7病日にICDを挿入した。その後,問題なく経過し,第14病日に独歩退院した。若年発症のQT延長症候群の場合,先天性のRomano-Ward症候群をまず疑うことが重要である。またRomano-Ward症候群は常染色体優性遺伝であり,遺伝子診断まで検索が必要である。心室細動で発症するハイリスク例に対してはICDの挿入は必須の治療であると考えられた。