著者
宮川 有希 上村 協子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.279, 2018

【目 的】フィンテック(金融とテクノロジーの接続)による情報化社会の進展で、消費者と生産者(事業者)の関係が変化し、金融リテラシーの有無とその内容が日常生活に及ぼす影響が大きくなっている。本研究はキャッシュフロー表と家計簿アプリを使った生涯を見通した「生活設計教育」の可能性を検討する。<br>【方 法】S女子大消費経済学履修者60名に、初回授業で金融リテラシーに関する質問(3問)と意識調査(7問)の全10問、15回目授業後に初回の10問と追加3問(金融経済情報の頻度、個人収支の把握方法、希望するライフコース)全13問のアンケート調査を実施。授業内でキャッシュフロー表を2回作成。<br>【結 果】①個人収支の把握方法は、家計簿記帳36.4%、家計簿アプリ等を利用しスマホで把握34.5%と家計簿を利用している学生が全体の7割を占めている。②希望するライフコースは、結婚し子どもを持ちいったん退職し子育て後に再び仕事を持つ50%。③生活設計の正解率は、初回50.0%、授業後88.3%と授業後の正解率が上昇。キャッシュフロー表によると、出産後安易に仕事を辞めることによる機会損失は大きいが考えられていない。家計簿アプリは、収支の把握をするだけではなく、収入が近い利用者の家計簿と比較することもできる。生涯を見通したキャッシュフロー表を作成するために、家計簿アプリを利用し家計管理だけではなく生活設計力をつけることの必要性が示唆された。
著者
宮川 有希 上村 協子 米元 みずほ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

【目 的】金融リテラシーマップ4分野(家計管理、生活設計、金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択、外部の知見の適切な活用)にあわせた「金融リテラシー」調査が金融広報中央委員会により2016年18~79歳の2万5千人を対象に実施された。高校生を対象に金融リテラシー調査を行い、高校家庭科における「家計管理と生活設計教育」を検討する。<br> 【方 法】千葉県の私立高等学校の家庭基礎履修者の2年生、668名に全10問の金融リテラシーに関する質問(3問)と意識調査(7問)のアンケート調査を実施した。問1(家計管理)問2(生活設計)問3(外部の知見の適切な活用)の3問は成人向けと比較するため選択肢を同じにした。 <br>【結 果】成人向け金融リテラシー調査の正解率は全国平均、家計管理55.1%、生活設計47.6%、外部知見73.7%。高校生全体の正解率は家計管理66.1%、生活設計36.8%、外部知見56.8%である。家計管理の正解率は、高校生が高く、さらに高校生男女で比較すると、女性が高い。全体にチャレンジクラス(高卒で経済的自立を求められる若者)と進学クラス別では、進学クラスの正解率が高く、特に外部の知見の適切な活用では進学クラスの男子の正解率が高かった。家計簿アプリなどを活用した高校生のニーズにあった家計管理と生活設計教育の必要性が示唆された。
著者
神澤 佳子 片平 理子 千歳 万里 金坂 尚人 清水 きよみ 河村 美穂 上村 協子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

目的:神戸市のA児童館は、18歳未満の子どもが利用可能な地域住民に開かれた施設であり、放課後児童クラブと一体的に運営されている。ここでは平成21年度より毎年10~12月の3か月間、遊びの一つとして「どんぐり」を通貨とした買い物体験プログラム「どんぐりマーケット」を行っている。このプログラムを消費者教育の視点からとらえなおして特徴を抽出し、今後の内容の広がりの可能性を考察する。 <br>方法:「どんぐりマーケット」の見学と利用児童の観察、職員へのヒアリングを行い(2016年10~12月)、「子どものまち」等の体験型プログラムと内容を比較検討した。 <br>結果:このプログラムで子ども達は、地域でどんぐりを収集し、マーケットの商品を選択・購入する。そのマーケットで販売する商品を製作し、自ら値段をつけ、会社を組織し販売と通貨管理を行い、売上の一部と労働によって給料を得る。消費者・生産者・労働者の立場を体験しながら、主体的な価値選択と意思決定を行っている。これらは、バイマンシップだけでなく、組織の運営とルールを守りプログラムに参画するシチズンシップの要素も含む「消費者市民」教育の具体的な形といえる。さらに、住民参加による「地域社会との共生」、どんぐりを発芽させ植樹する自然循環体験の内容を持ち、日常に溶け込む継続的な消費者教育という特徴がある。今後、子ども達の企画への参加等を加えることで、一層の内容充実が期待される。