著者
矢口 美音里 河村 美穂
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本のマンガとアニメは、国内のみならず海外でも高い人気があり、漫画に関する社会学的研究も数多く発表されている。なかでも日本独自の「料理・グルメ」漫画はその時々の人々の食生活の状況を表し時代を反映したものとなっている。そこで本研究では、特に主人公が家庭でつくる料理がメインとして登場する漫画である「家庭料理漫画」に焦点を当て、家庭料理漫画の特徴を調理の視点から明らかにすることを目的とする。<br /><br />【方法】一般社団法人日本雑誌協会が発行部数を公表している雑誌59誌に掲載された家庭料理漫画のうちレシピが掲載されている10作品を対象とし、掲載料理に対して(ア)使用されている食材と使用頻度(イ)料理の種類(ウ)調理方法について分析した。<br /><br />【結果】対象とした10作品の家庭料理漫画は成人向け漫画のジャンルに属するものがほとんどであった(男性誌5作品、女性誌4作品)。主人公が自分のためというより家族や恋人等といった誰かの為に作った料理に対して栄養や見た目等のこだわり(彩り、1食当たりの料理数、味の変化)を強く示した内容となっている場合が多いことも特徴であった。また、掲載料理は初心者が試しやすいように基本的な調味料(塩、しょうゆ、砂糖)や入手可能な食材(たまねぎ、にんじん、卵、じゃがいも)を使用した再現可能な日常食が多く、料理の種類としては和食が多い(掲載料理の56%)ということが明らかになった。
著者
吉田 智美 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-134, 2009

The aim of this study is to explain the historical change of indoor shoes and their role in school life.Three points were used in researching about indoor shoes, because there have been no previous studies.(1) Explaining how the use of indoor shoes was influenced by the architecture of the school buildings from the Meiji era to the present, paying special attention to the school entrance.(2) Researching the use of indoor shoes using pictures of Saitama womens’ teacher’s school.(3) Taking a questionnaire for people above 50 about indoor shoes in their schooldays and explaining the role of the shoes.Japanese students have been removing their shoes at the school entrance for 130 years, from when the educational system started to the present.The custom of removing shoes at the school entrance, putting them into boxes, and changing into indoor shoes first appeared during the Taisho era. This custom originates from everyday life in Japan and was used as a teaching tool.
著者
河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

研究目的:家庭科の思い出として語られることの多い調理実習では多様な学びが展開されている。また、調理実習は子どもがよろこび手ごたえのある授業、生活と関連しやすい授業と多くの家庭科担当教師に捉えられている。近年、調理実習において学習者が何をどのように学んでいるのかということを、教育的な営みとしてとらえる研究が行われている。そもそも調理実習は実践的で体験的であるからこそ学びが多いとされてきた。しかし、実際に調理をやってみることについて、子どもたちがどう感じ、何を考えているのかは十分に明らかにされてはいない。具体的に調理を学ぶことによって、子どもたちはなにがわかったと感じているのであろうか。 本研究では、以上のような問題意識から、小学校2年生において電子レンジ調理に関する一連の学習を行い、その中の調理実習において児童が書いた学習記録を分析対象として、子どもたちが調理という体験を通して理解したことを明らかにすることを目的とする。 研究方法:研究対象としたのは、小学校2年生の食育の授業(10時間扱い)-1)電子レンジ加熱した食品の試食 2)電子レンジの機能に関する理解 3)キャベツのおひたしをつくる 4)ポテトサラダをつくる 5)電子レンジをもっと知る調べ学習 6)電子レンジ調理に関する研究発表-のうち 3)キャベツのおひたしをつくる 4)ポテトサラダをつくる という2回の「電子レンジを用いた調理実習」である。これらの調理実習は、電子レンジを用いるほかは、包丁やキッチンバサミを用いずすべて手作業で行うよう設定した。授業はクラス担任と埼玉大学教育学部の学生により、TTで行った。対象クラスは、埼玉県T市立小学校2年生1クラス27名(男子16、女子11)である。実施時期は、2010年9月~11月である。対象授業においては、調理実習を行った後、または翌日に調理実習をふり返って学習の記録を児童本人に記入させた。内容は、調理をしてわかったこと、気をつけること、おもったこととした。この記録をデータとして、児童自身が調理を経験して何を学んだと考えたのかを分析した。結果と考察:今回検討対象とした電子レンジの調理は、技能の学習としては電子レンジを使うことが主となるため、電子レンジのしくみを科学的に理解できるような教材を用いて授業を行ったうえで、対象の調理実習を行った。そのため「ぶんしくん(水分子のこと)とマイクロハで水じょうきが出てきて・・・」といったようにマイクロ波によって食品中の水分があたたまるという概念的知識についての記述が見られた。 一方で多く記述されたのは、やってみてわかったことである。具体的には「でんしれんじであたためるとさいしょよりすんごくこい色になりました。」「きゃべつがしなしなになってへってた。」といった見てわかることである。 また、電子レンジにより加熱した食品やその容器が体感的に「あつい」という記述も多く見られた。この「あつい」という体感的な理解は、「めちゃくちゃあつい」「大やけどするほどあつい」「あつくてびっくりした」というようにあつさの感じ方や驚き具合が多様であることを物語る記述がみられた。 さらに、「(ジャガイモが)あつあつのあいだにかわをむくこと」というように、調理の手順を概念的に理解している記述もあった。以上のことから、子どもたちは自分の言葉で調理することを理解していると言える。
著者
吉田 智美 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要 教育学部 (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-134, 2009

The aim of this study is to explain the historical change of indoor shoes and their role in school life.Three points were used in researching about indoor shoes, because there have been no previous studies.(1) Explaining how the use of indoor shoes was influenced by the architecture of the school buildings from the Meiji era to the present, paying special attention to the school entrance.(2) Researching the use of indoor shoes using pictures of Saitama womens' teacher's school.(3) Taking a questionnaire for people above 50 about indoor shoes in their schooldays and explaining the role of the shoes.Japanese students have been removing their shoes at the school entrance for 130 years, from when the educational system started to the present.The custom of removing shoes at the school entrance, putting them into boxes, and changing into indoor shoes first appeared during the Taisho era. This custom originates from everyday life in Japan and was used as a teaching tool.
著者
駒場 千佳子 松田 康子 加藤 和子 河村 美穂 木村 靖子 島田 玲子 土屋 京子 徳山 裕美 名倉 秀子 成田 亮子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】日本調理科学会特別研究平成24〜25年度「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の調査を通して,昭和30-40年代の行事食の特徴を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】東部低地:加須市,北足立台地:さいたま市,比企:東松山市,大里・児玉:熊谷市,入間台地:日高市,入間山間部:飯能市,秩父山地:秩父市,川越商家:川越市の8地域9か所で、対象者は食事作りに携わってきた19名(居住年数平均72.3年)である。当時の地域環境と共に、食料の入手方法、調理・加工・保存方法、日常食や行事食、食に関連する思い出や伝え継ぎたいと考える料理について聞き書き法で調査を行った。</p><p>【結果】食が関連する行事は、正月や盆などの年中行事や節句を祝うもの、農作業などの節目(収穫の願いや収穫祝い、農作業や養蚕業のひと段落した際の地域の祭事)、人寄せをする地域の祭事などがあった。</p><p>赤飯やおはぎ(ぼたもち)、いなり寿司や巻きずし、ちらし寿司は、多くの行事で作られ、祝い、楽しまれた様子が伺える。海なし県であるが、正月にはお頭付きの海の魚が利用されるなど、日常にない料理も多かった。埼玉県は、里芋の栽培が多く、芋がら(ずいきの茎)を甘酢漬けにしたり(十日夜)、芋は雑煮(角餅・すまし汁)の具としても利用されていた。地域の野菜を使ったかて飯、七福なます、ゆず巻きなども食べられている。また、小麦の栽培も多いことから、行事食にはうどんだけでなく、小麦を使ったお菓子(酢まんじゅう、炭酸まんじゅう、ゆでまんじゅう)がつくられた。特徴的な料理は、穀倉地帯のいがまんじゅう(季節の節目)、塩あんびん(十日夜)、山林地帯のとち餅(正月:栃の実を利用)、つとっこ(端午の節句:栃の葉を利用)などがあった。</p>
著者
河村 美穂 小清水 貴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.49, 2005

研究目的 数多くの実践がある調理実習に関しては、児童生徒の実習中の行動分析やグループにおける学びの様態について様々な知見が示されている。近年では、家庭科の学習を振り返る感想文分析から役立ち感と学習意欲の関連も明らかにされており、さらに生徒の側から学びの実態を明らかにすることが求められている。 そこで、本研究では生徒が調理実習の直後に何を学んだと感じているのかを生徒自身の記録から読み取り、さらに実施後約1ヵ月後の振り返りをあわせて検討することにより、生徒が調理実習で学んだことを明らかにすることを目的とする。研究方法表に示す調理実習3回を高校家庭科「家庭基礎」において実施し、実習直後に記述した実習記録をデータとして、生徒が学んだと考えることについて検討を加えた。○調査対象:国立大附属高校1年生(40名)。○調査時期:2005年1月_から_2月。○データの収集:毎回の授業後に生徒40名が記述した実習記録、 および、実習後約1ヶ月に記述した振り返りシートをデータとし て用いた。この他、生徒の実態を把握するために事前アンケート 調査を実施した。また、10班のうち2班を抽出し、実習中の様子 を観察、ビデオ録画、録音により記録し補足データとして用いた。全体的な目標<br>●1日に食べる食品の量と質を体験し、朝・昼・夕食に食べるものを理解する●包丁で切る技術を学ぶ。●料理にあう皿を選んで盛り付ける。●班で協力して作業を行い、時間内に手早く調理・試食・片づけをする。●食材を大切に扱い、できるだけ生ごみを出さないように工夫をする。<br>題材<br>オムレツ・ミネストローネ・ヨーク゛ルト・ロールハ゜ン・ハ゛ナナ<br>本時の目標●卵の調理性(熱凝固性)を理解する。(オムレツ)●食材の形をそろえて切ることを理解する。(ミネストローネ)●調理実習室に慣れる。<br>題材 スハ゜ケ゛ティミートソース・ク゛リーンサラタ゛・ハ゜ンナコッタ(いちご添え)<br>本時の目標●ミートソースを手作りする方法を知り、味わう。(スハ゜ケ゛ティ)●ハ゜スタのゆで方を知る。(スハ゜ケ゛ティ)●ゼラチンの調理性と取り扱い方を知る。(ハ゜ンナコッタ)●ドレッシングを手づくりできることを知る。(サラタ゛)<br>題材 肉じゃが・ほうれん草の胡麻和え・米飯・味噌汁(豆腐とワカメ)・うさぎりんごと木の葉りんご<br>本時の目標●混合だしの取り方を理解する。(肉じゃが・味噌汁)●調味料の浸透性を理解し、手順よく調味料を扱うことができる。(肉じゃが)●無洗米の扱い方を知る。(米飯)●青菜のゆで方を理解する。(ほうれん草の胡麻和え)●肉じゃがが簡単にできることを知る。(肉じゃが)●りんごの飾り切りができる。(りんご)<br>結果と考察<br> 生徒が調理実習で身についたと考えていることは、「実習した料理そのものの作り方」「その後に応用可能な知識・技能」「グループ学習としての学び」の3つに大別できる。「その後に応用可能な知識・技能」のうち多くを占めるのは「材料を切る」など包丁を使う技能であった。包丁を使う技能は、調理実習で多く使用されるだけでなく、生徒にとっては技能の習得を実感しやすいと考えられる。また、振り返りにおいて調理に対する自信を持つようになった生徒は、直後の記録においては「その後に応用可能な知識・技能」を多く記述していた。これは、調理を一つ一つの料理を作る方法としてではなく、複数の調理方法や知識・技能が複合して成立するものとして捉えていることを示していると考えられる。
著者
望月 朋子 河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>研究目的</b><b></b><br><br>DeCeCoによるキーコンピテンシーが世界的な注目を集め、教育現場では関連した科学的リテラシーの育成が急務の課題とされている。PISA調査(2003)では科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によってつくり変えていった自然の変化について理解し、意思決定できるために、科学知識を駆使し、問題を見分け証拠に基づく結論を引き出すことのできるような能力」と定義している。家庭科では、教科として成立して以来、生活を科学的に理解し、科学的知識を応用しながら生活を営むことを目指してきたが、PISAが定義したこの科学的リテラシーでは、十分に生活を科学するということを説明できないと考えられる。<br><br>そこで、本研究では家庭科における科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によって変化した自然や生活、社会状況について理解し、必要に応じて意思決定するために、文化的、社会的、自然科学的な知識を活用し、自らの生活に即して問題を見分け、証拠に基づき生活がよりよくなるような結論を導く能力」と仮に定義する。本研究は、実際の調理実習の授業において文化的、自然科学的知識を学んだ生徒が、どのようにそれらの知識を捉えているのかということを生徒の授業記録を対象として探究し、明らかにするものである。<br><br><b>研究方法</b><b></b><br><br>対象とした授業は2016年1月~2月に実施した静岡県東部公立中学校2年生2クラス84名(男子44名、女子40人)「ちらしずしを作ろう」である。本研究では、授業前(2016年1月)と授業後(2016年2月)の2回に同一の質問紙調査を実施し分析データとした。調査項目は、以下の通りである。(1)食文化に関する設問(1問):どんなときにちらしずしを食べると「おいしい」と感じるか。それはなぜですか。(2)食品科学に関する設問(2問):①さやいんげんをゆでてからざるにとって水にさらす理由について書いてください。②うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること書いてください。いずれも生徒に自由記述させ、それぞれの設問の記述についてカテゴリーを生成、分類して検討を行った。<br><br>&nbsp;<br><br><b>結果と考察</b><br><br>設問(1)の「どんなときにちらしずしを食べるとおいしく感じるか」では、授業前には、行事、ひなまつり、お祝いのときが44人で、授業後には57人であった。その理由として、「ひな祭りのときにだいたい食べるから」、「お祝いするときに食べる料理だから」等行事の時に特別に食べる記述や「親せきなど、みんなが集まったとき」といった大勢で食べる場面を想定した回答が増加していた。<br><br> 設問(2)「さやいんげんをゆでたあとに水にさらす理由」には、授業前の回答は、「色が鮮やかに、濃くなる」4人、「食感がよくなる」14人、「わからない」42人であり、授業後はそれぞれ60人、10人、4人であった。<br><br>設問(3)「うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること」についての記述を分析したところ、授業前はとき卵をなるべくうすくひくというような「うすさ」に関することが29、こがさないように気をつける「焼き加減」に関すること21、「火加減」に関することが15であった。授業後は、卵を全部ではなく、何回かにわけてやくというような「うすさ」に関すること43、こげないように注意したという「焼き加減」に関すること24、卵を焼く温度を保つという「火加減」に関すること31、であった。記述総数は調理実習後に増加していた。以上のことから、調理実習を通しても食文化について理解可能であること、調理科学についてはゆでて水にさらすと色が鮮やかになる「さやいんげん」について理解しやすいこと、一方でうすやき卵を作ることに関しては、科学的な理解よりも作る手順をより必要なものとして学ぶことがわかった。
著者
原 千尋 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.47-57, 2014

There are two problems during school lunch. One is that lunch time is too short. Another is that eating in the classroom should be a good experience eating with friends. How do teachers solve these problems? This study aims to make clear how teachers act and talk to students during schoollunch.This study targeted four elementary school female teachers. This study used two types of methodology ; direct observation and voice recording. Direct observation was analyzed to find some patterns. The script of the voice recording was categorized using 7categories by Kishi and Nojima(2006) based on Flanders (1970).These four teachers struggled to get enough time for eating. For example, one teacher included the break time after lunch to increase the time for eating. The other teacher shortened y preparation to have enough time to eat. 67-87% of all script is direct speaking including the indication of the time and caution by teacher about table manners, etc. 13-26% of all script is indirect speaking that revealed each teacher’s character. Teachers talked about food and eating during the lunch time and eating together with someone is a happy occasion.
著者
島田 玲子 加藤 和子 河村 美穂 名倉 秀子 木村 靖子 徳山 裕美 松田 康子 駒場 千佳子 土屋 京子 成田 亮子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の調査を通して,昭和30~40年代に定着した埼玉県の家庭料理について検証し,主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】埼玉県の東部低地:加須市,北足立台地:さいたま市,比企:東松山市,大里・児玉:熊谷市,入間台地:日高市,入間山間部:飯能市,秩父山地:秩父市,川越商家:川越市の8地域9か所における対象者は,家庭の食事作りに携わってきた19名で,居住年数は平均72.3年である。当時の地域環境と共に,食料の入手法,調理・加工・保存方法,日常食や行事食,食に関連する思い出や,次世代に伝え継ぎたいと考える料理について,聞き書き法で調査を行った。<br>【結果】埼玉県は内陸県(海なし県)である一方,荒川や利根川などの一級河川が流れ,川魚を入手するには恵まれた環境であった。そのため,動物性の食材にはコイやフナ,カジカ,ハヤなどの川魚のほか,ウナギ,タニシなど,川で獲れる魚介類を利用している地域が多かった。ウナギは現在でも名物であるが,昭和30~40年頃には,家庭で調理するよりも,中食・外食としての利用が多かった。その他の魚は,家庭で甘露煮や焼き魚,天ぷらなどにしていた。一方,海産魚は缶詰や干物,塩蔵品が利用され,昭和40年頃から家庭で作られるようになったカレーライスには,畜肉ではなく,サバの水煮缶やちくわが用いられていた。日常的な畜肉の利用は少なく,卵を得るために鶏やアヒルを飼育し,特別なときにつぶして食べることが行われていた。昭和40年代になると流通網の発達や冷蔵庫の普及などによりとんかつやハンバーグなどの洋食として畜肉も食べるようになった。
著者
小清水 貴子 松岡 文子 山本 光世 艮 香織 小倉 礼子 河村 美穂 千葉 悦子 仲井 志乃 仲田 郁子 中村 恵美子 松井 洋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.65, 2008

<B>研究目的</B><BR> 保育の学習は、母性の保護や子どもの成長・発達がメインである。平成12年高等学校学習指導要領解説(家庭編)では、「少子化の進展に対応して、子どもがどのように育つのかに関心をもち、子どもを生み育てることの意義を理解する学習を重視するために、子どもの発達と保育に関する内容の充実を図った」と述べられている。しかし、少子高齢社会を迎えたいま、中・高校生が小さい子どもとかかわる機会は減少している。生徒たちにとって、赤ちゃんをイメージし、小さい生命に対して自分と同じ命の重みを感じることは難しい。また児童虐待など子育ての困難さから、将来、子どもをもつことに否定的な生徒もいる。そのような生徒たちが、生命について考え、子どもを生み育てることの意義を理解するためには、保育の学習で何を取り上げ、どのような視点に立った授業をすればよいだろうか。<BR> そこで、死から生をとらえ直す授業として『誕生死』を教材にした授業を行い、その実践報告を通して保育で生徒に何を教えるか、保育の学習目標を明らかにすることを目的とする。<BR><BR><B>研究方法</B><BR> (1)メンバーの一人が『誕生死』(流産・死産・新生児死で子をなくした親の会著、2002、三省堂)を教材にした授業実践を報告する。(2)実践報告を聞いて教材や授業の視点について議論する。(3)議論を通して自身の保育の授業を振り返り、メールを利用して意見交換を行う。その後、メンバーが記述した意見をもとに議論・考察を行い、学習目標を検討する。<BR><BR><B>結果と考察</B><BR><U>(1)『誕生死』を教材とした授業実践の概要</U><BR> 授業は平成18年6月、高校2年生の選択科目「発達と保育」で実践した。『誕生死』から一組の夫婦の手記をプリントして、教師が読み聞かせを行い、読後に感想を記述させた。多くの生徒が、出産が必ずしも喜びをもたらすものではないことに気づき、生命の重みを感じていた。また、母親だけでなく父親や祖父母の胎児に対する愛情の深さを感じた様子だった。<BR><U>(2)実践報告後の議論</U><BR> 報告者は生徒の反応に手応えを感じたことから、一教材の提案として実践を報告した。しかし議論では、教材としての妥当性について賛否両論に分かれた。賛成意見では、夫婦の感情が手記に溢れてインパクトが強く、生徒の心に響くなどがあがった。反対意見では、逆にインパクトが強過ぎて生徒の心の揺らぎを受け止めるのは難しいなどがあがった。議論から、生徒に何を教え、考えさせるか、個々の教師が授業を振り返り、学習目標を明らかにすることが必要であることが分かった。<BR><U>(3)教材選択と教師が設定する学習目標</U><BR> 議論後の各自の振り返りから、保育学習の課題として「教材選択と妥当性」と「保育の学習目標」の二つの論点が明らかになった。「教材選択と妥当性」では、教師および生徒の問題意識、教師と生徒との関係性、教師の年齢や生活経験など教師自身のもつ背景が関係していることが分かった。「保育の学習目標」では、とくに生命の誕生に関する学習において、性感染症や中絶などの恐ろしさから生徒の行動抑制に重きをおく授業や、生徒自身の性をみつめることに重きをおく授業など、幅広い学習目標が設定可能である。どのような目標を設定するかは、生徒の実態から教師自身が必要と考える目標を明確にすることが必要である。<BR><U>(4)保育で何を教えるか―私たちが考える保育の学習―</U><BR> 保育では、誕生前より誕生後の子どもの発達にウエイトが置かれている。しかし、人の一生をトータルにみていくことが家庭科独自の視点である。そこで、家庭科教育の中でしか扱えない、誕生前後をつなぐ「性」「生命」を視野に入れた授業が必要である。
著者
河村 美穂 高橋 愛
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.37-46, 2008

Recently there has been discussion about problems concerning children and foods they eat. This has been especially true for learning how to use chopsticks.Using chopsticks is not only about technique and discipline, but about culture. The aim of this study is to examine the relationship between using chopsticks and the eating of foods in daily life.Authors examined how 95' students used chopsticks while eating school lunch using digital cameras, and then compared the results with the preresearch. Interviews about the eating of foods in daily life for all 95 students were used.The results were as followed1) Only 16 students used chopsticks correctly. (Under 20%)2) The main point in correct use of chopsticks is the position of the second finger and use of the thumb.3) Breakfast was insufficient for most students.4) Students using chopsticks correctly have a better balanced dinner than students using chopsticks incorrectly.It is so important to teach not only using the techniques for chopsticks, but correct eating habits. Though these are essentially learned at home, they must be taught in school because of present family conditions.
著者
神澤 佳子 片平 理子 千歳 万里 金坂 尚人 清水 きよみ 河村 美穂 上村 協子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

目的:神戸市のA児童館は、18歳未満の子どもが利用可能な地域住民に開かれた施設であり、放課後児童クラブと一体的に運営されている。ここでは平成21年度より毎年10~12月の3か月間、遊びの一つとして「どんぐり」を通貨とした買い物体験プログラム「どんぐりマーケット」を行っている。このプログラムを消費者教育の視点からとらえなおして特徴を抽出し、今後の内容の広がりの可能性を考察する。 <br>方法:「どんぐりマーケット」の見学と利用児童の観察、職員へのヒアリングを行い(2016年10~12月)、「子どものまち」等の体験型プログラムと内容を比較検討した。 <br>結果:このプログラムで子ども達は、地域でどんぐりを収集し、マーケットの商品を選択・購入する。そのマーケットで販売する商品を製作し、自ら値段をつけ、会社を組織し販売と通貨管理を行い、売上の一部と労働によって給料を得る。消費者・生産者・労働者の立場を体験しながら、主体的な価値選択と意思決定を行っている。これらは、バイマンシップだけでなく、組織の運営とルールを守りプログラムに参画するシチズンシップの要素も含む「消費者市民」教育の具体的な形といえる。さらに、住民参加による「地域社会との共生」、どんぐりを発芽させ植樹する自然循環体験の内容を持ち、日常に溶け込む継続的な消費者教育という特徴がある。今後、子ども達の企画への参加等を加えることで、一層の内容充実が期待される。
著者
吉田 智美 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要 教育学部 (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-134, 2009

The aim of this study is to explain the historical change of indoor shoes and their role in school life.Three points were used in researching about indoor shoes, because there have been no previous studies.(1) Explaining how the use of indoor shoes was influenced by the architecture of the school buildings from the Meiji era to the present, paying special attention to the school entrance.(2) Researching the use of indoor shoes using pictures of Saitama womens' teacher's school.(3) Taking a questionnaire for people above 50 about indoor shoes in their schooldays and explaining the role of the shoes.Japanese students have been removing their shoes at the school entrance for 130 years, from when the educational system started to the present.The custom of removing shoes at the school entrance, putting them into boxes, and changing into indoor shoes first appeared during the Taisho era. This custom originates from everyday life in Japan and was used as a teaching tool.
著者
河村 美穂 山地 瑞紀 松岡 文子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第57回大会・2014例会
巻号頁・発行日
pp.59, 2014 (Released:2015-01-10)

研究目的 家庭科の時間が減少するなかにあって、調理実習では調理技能の習得は難しいと考えられるようになっている。本研究は限られた調理実習でも適切な指導法により確実に包丁を使う技能を習得することを可能するための方策を考えたい。なぜなら包丁を使う技能は生徒にとって料理ができると実感しやすい技能であり、その後の食生活を主体的に営むための基盤となると考えるからである。限られた時間の中で効果的に包丁を使う技能を習得する方法を示すことができれば、その後の生活で有用となるためにどのような学びが必要なのかが明らかになり、調理実習という家庭科固有の授業の意義もより一層明確にできると考えた。 そこで、本研究では中学校の家庭科授業において2回のりんごの皮むき調査を実施し、中学生の技能実態を測定し、技能の習得に関わる要因を探究することを目的とする。具体的には、食生活領域の授業の一環として冬季休業前後に2回の包丁指導(兼調査)を行い冬季休業中の課題も含めて生徒の学びの実態を多面的に検討する。研究方法 公立中学校1年生60名(男子33名女子27名)を対象として、食生活領域の学習に1.包丁の使い方(リンゴの皮むき・技能調査事前)2.冬季休業中の皮むき・料理課題 3.フルーツポンチをつくる実習(含リンゴの皮むき・技能調査事後)を組み込み実施した。技能調査は各班にビデオカメラを固定して授業時間内に録画し、この録画記録をデータとしてA親指の位置、B手の動き、C皮のむき具合についてそれぞれ3段階の評価基準を設けて評価した。さらにこの授業の前後で家事の参加度、料理の頻度、調理技能に対する認知について質問紙調査を行った。本授業の授業記録及び冬季休業中の課題記録からも可能な範囲でデータを収集した。データ収集に際しては、研究目的とともに事前に生徒に説明し了承を得て行った。実施時期は、2013年12月~2014年1月である。結果と考察収集したデータの分析結果のうち次の3点を示す。1包丁技能に対する認知(質問紙調査)得点:調理技能のうち包丁技能の認知得点だけは有意に得点が上がった。2技能評価(録画記録)得点:事前事後で有意な差はなかった。3むいたリンゴの廃棄率:事前事後で有意な差はなかった。  そこで、事後の技能評価得点(9点満点)をもとに日常生活で有用な包丁技能の習得という観点から対象者を4群に分けて習得の実態を詳細に検討した。A群:包丁技能が十分と考えられる群(9点/9点満点)B群:ほぼ大丈夫だがもう少しの群(8~7点/9点満点)C群:不十分な技能である群1(6点/9点満点・前後差無)D群:不十分な技能である群2((6~0点/9点満点・前後差有)以上の群ごとに比較すると廃棄率は事前事後とも大きな変化は見られず、包丁技能に対する認知はD群以外の3群で事後に有意に高い得点を示した。  ここで特徴的なD群は、技能に対する認知得点が事前で高く事後に変化がなかったが、実際には事前から事後へと技能評価得点3項目すべてにおいて有意に低下した生徒により構成されている。この得点の低下、つまり下手になるという状態は録画記録を分析した結果、むく手の親指を刃先にのせず刃をスムーズに動かせないという現象として認められた。  ちょっとやってみて器用にできたと思っても、それが継続的に身についた技能となるためには、自分の技能の状態を正しく認識することがカギとなる。偶然できたことを評価するだけではなくどのようにしてできたのかを科学的に理解するということが大切なのではないだろうか。
著者
河村 美穂 高島 彩
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
no.7, pp.269-277, 2008

子どもの食の乱れが叫ばれるようになって久しい。とくに近年では、食育基本法の制定などに見られるように、食育は社会全体でとりくむ重要課題と認識されている。なかでも、なにをどのように食べるかということについて、子どもたち自身が学び自立した食生活を送ることが目指されている。しかし、現実には、朝食の簡略化、孤食の問題など、子どもにとっては厳しい食生活の状況が続いている。従来食に関する教育は、学校教育のなかでは給食の時間に主として学級担任、栄養士が行ってきた。さらに、2005年からは、栄養教諭制度が実施され、その職務として食育が重要視されるようなり、給食における食の教育は一層重視されつつある。一方、家庭科教育でも戦後一貫して小学校高学年および中学校・高等学校において食に関する教育の実践を積み重ねてきている。とくに小学校高学年における食教育は人生の基礎となる食生活に関する教育として重要性が認識されてきている九さらに近年では、食教育が小学校低学年から必要との考えから、その実践を提案する研究もみられるへそこで、これまでの家庭科教育での実践の蓄積をベースとして、より早い時期から食教育を実施することを目指して、保育園児を対象とした食教育プログラムの実践を試みた。本稿では、まず、食教育プログラムの実践に先だって行った園児の食生活の実態調査の結果を示し、その結果からプログラムをどのように立案したかを詳述した上で、実践の概要、実践後の考察を示して本研究の食教育プログラムの有効性を検証する。
著者
川嶋 かほる 小西 史子 石井 克枝 河村 美穂 武田 紀久子 武藤 八恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.216-225, 2003-10-01
被引用文献数
4

小中高の家庭科担当教師に調理実習の学習目標について質問紙調査をした結果,以下の点が明らかになった。1.実習の学習目標を「基本的な調理法や調理器具の扱いができる」や「安全衛生に気をつけて調理する」などにおく教師が多く,技能技術の習得を中心において調理実習観が根強いと考えられる。しかし,授業時間や子どもの生活体験の低下等の制約の中で,技能技術の習得達成を期待していない教師も多く、また技能技術の習得を確実にするための工夫は積極的におこなわれているとは言いがたかった。2.調理実習の学習目標には,社会的認識の目標設定が少なく,食生活教育の総合の場ととらえる視点は弱かった。3.調理実習を「楽しければよい」とする考えが一部に強くみられた。調理実習の楽しさを友達との共同的な学びとすることや技能技術の上達ととらえる回答は少なかった。4.食生活状況や子どもの問題状況の把握が学習目標にいかされているとはいえない結果だった。
著者
河村 美穂
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

調理技能の習得を中核とした食生活カリキュラム開発のための要件を、カリキュラムの構成要素であるシークエンス(Sequence)とコンテンツ(Contents)に分けて示すことができた。必ずしも調理技能の難易度によるのではなく、子どもの生活実態を考慮して配列すること(Sequence)、概念的知識、手続き的知識の両方を、調理を見合い、学びあう内容とすること(Contents)が重要である。
著者
伊藤 葉子 河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.257-264, 2001-01-01

The authors abstracted the problem through teaching practice called Planning your Life Course. It showed that students, who had a lower concern about their own life, might have difficulty in finding interest in Home Economics class. Boys especially had such a tendency to be that way. Then, the authors investigated the relationship between identity and achievement motive, results were tabulated from responses gained from questionnaires given to 435 1^<st> and 2^<nd> grade students, aimed to study about students' concerns in life and their motivation to study in class. The result were summarized as follows. (1)Identity development was related to the self-fulfilmentive achievement motive. (2)There was a difference between males and females. Males had a high level of competitive achievement motive, on the other hand, females had a high level of self-fulfilmentive achievement motive. The authors propose that it is necessary that self-fulfilmentive achievement motive is focused upon in Home Economics Education. Teachers should make Home Economics classes considering the difference in the achievement motive between males and females.