著者
上田 政和 神野 浩光 宮田 量平 城戸 啓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年から17年度にかけての3年間の研究により以下のような成果が得られた。1.HBs抗原L粒子のC末端側に緑色蛍光タンパクを結合させたL粒子を作製し、in vitroおよびヒト肝細胞癌およびヒト大腸癌細胞をヌードマウス皮下に移植したモデルに投与すると、in vitroおよびin vivoでヒト肝細胞癌でのみ緑色蛍光が認められ、ヒト大腸癌では緑色蛍光は検出されなかった。2.HBs抗原のpreS1を削除しランダムペプチドを結合させるとあらゆる細胞に遺伝子および蛍光物質が取り込まれた。3.アドリアマイシン封入L粒子によるヒト肝細胞癌に対する殺細胞効果:アドリアマシン封入L粒子を作製・精製してヒト肝細胞癌株にin vitroで添加し、細胞数をMTT assayで測定すると、濃度依存的な殺細胞効果が認められた4.HBs抗原結合GFPcDNA封入MPCポリマーに関する研究:cationic portionを導入したMPCポリマーに緑色蛍光cDNAを結合させてエステル基にHBs抗原を反応させたHBs抗原結合遺伝子封入MPCポリマーを作製して、in vitroおよびin vivoでヒト肝細胞癌に投与すると7日後にと殺して各種臓器の蛍光を測定するとヒト肝細胞癌組織でのみ緑色蛍光物質の発現が認められた5.RNase挿入FGFタンパクによるin vivoにおける血管新生阻害:小さなチャンバー内でがん細胞株であるA431を培養し、培養液内にRNase挿入FGFを添加し、その後チャンバーをマウス背部皮下に置きその部位の血管新生を形態学的に測定し、対照群と比較すると、腫瘍細胞であるA431を培養しているチャンバーを皮下に植え込んだマウス背部では培養液のみの対照群より蛇行した血管新生が著明に認められたが、A431に加えてRNase挿入FGFを添加したチャンバーを植え込んだマウス背部では血管新生が抑制され、対照群と有意の差を認めなかった。