著者
竹内 裕紀 市田 公美 虎石 竜典 岩本 整 中村 有紀 今野 理 木原 優 横山 卓剛 池田 千絵 奥山 清 川口 崇 河地 茂行 尾田 高志 平野 俊彦 畝崎 榮
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.191-198, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)

背景:腎移植で使用される免疫抑制薬のアザチオプリンと高尿酸血症治療薬である尿酸合成阻害薬の併用は,アザチオプリンの活性代謝物6-メルカプトプリン(6-MP)の代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害することにより,6-MPの血中濃度が上昇し,重篤な骨髄抑制を起こす体内動態学的相互作用がある.しかし,添付文書の記載では,フェブキソスタットとトピロキソスタットは併用禁忌だが,アロプリノールは併用注意である.方法:アザチオプリンとアロプリノールの相互作用を起こした自験例や過去の報告により,併用の危険性を示し,添付文書におけるアザチオプリンと各尿酸合成阻害薬間における相互作用の記載内容の整合性について調査し,さらに文献値から求めた各尿酸合成阻害薬の臨床用量におけるキサンチオキシダーゼ阻害作用の効力比を比較することで,添付文書における尿酸合成阻害薬間の併用禁忌と併用注意記載の理論的な裏付けが存在するかも調べた.症例:生体腎移植後20年の女性患者で血清尿酸値が13mg/dLとなったためアロプリノールを開始することになった症例で,高度の腎機能低下患者(eGFR7.7mL/min)であったため,アロプリノールを50mg/ 日と減量して開始した.またアザチオプリンも75mg/ 日を服用していたため,,同時に50mg/ 日へ減量して併用を開始した.しかし,服用後に顕著な汎血球減少症が認められたため,即時アロプリノールを中止し,中止後は回復した.結果・考察:添付文書におけるフェブキソスタットとトピロキソスタットのアザチオプリンとの併用禁忌の理由は,「6-MPの血中濃度が上昇することがアロプリノール(類薬)で知られている.」からであり,実際のエビデンスはなかった.一方で,両剤の併用禁忌の理由の根拠薬であるアロプリノ-ルが併用禁忌となっていないことには矛盾があると考えられた.そこで,文献値から臨床用量におけるキサンチンオキシダーゼの阻害作用の相対効力比を算出した結果では,アロプリノールで弱く,相互作用は小さいことが推定された.しかし,5-FUとソリブジンの相互作用のように核 酸代謝拮抗薬の血中濃度を上げる相互作用は,骨髄抑制を起こす極めて危険な併用であり,本自験例や他の報告のように重篤な副作用を誘発する危険な相互作用であるため,併用注意のままでは問題があると考えられた.さらに,本症例を含め腎機能低下患者ではオキシプリノールの蓄積も加わり,6-MPの血中濃度が上昇しやすくなり,極めて危険な相互作用を起こす可能性が高くなると考えられ,少なくとも腎機能低下患者には併用禁忌とすべきと考えられた.
著者
若林 大雅 高野 公徳 千葉 斉一 芹澤 博美 島津 元秀 河地 茂行
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.99-105, 2016-03-31 (Released:2016-04-05)
参考文献数
20

症例は27歳,男性.眼球結膜黄染を主訴に受診し,閉塞性黄疸と診断され緊急入院した.十二指腸乳頭部癌と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後Gemcitabineによる補助化学療法を継続したが術後10カ月のCTで上腸間膜動脈および脾動脈幹近位リンパ節転移を認めた.化学療法をS-1に変更し,放射線治療を施行したところ再発巣の縮小とCA19-9の低下を認めた.しかし照射終了後に再発巣が増大しCA19-9も再上昇したため,術後26カ月よりS-1+Oxaliplatin併用療法(以下,SOX療法と略記)を開始したところ,一時CA19-9が低下し腫瘍縮小効果も示したが,徐々に無効となり術後40カ月で死亡された.本症例は,原発性硬化性胆管炎,膵・胆管合流異常,家族歴や印刷業の職業歴など胆道癌発症におけるリスク因子を認めない若年性十二指腸乳頭部癌である点に加え,術後のリンパ節転移再発に対して放射線治療やSOX療法といった集学的治療が予後延長効果を示した点において比較的まれな症例であった.
著者
竹内 裕紀 岩本 整 中村 有紀 河地 茂行 島津 元秀 畝崎 榮 平野 俊彦
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-22, 2015 (Released:2015-09-10)
参考文献数
59

Corticosteroids or steroids are useful drug in clinical renal transplantation because of multiple effects in immunosuppression. There are not a few renal transplant recipients who need steroid therapy, although various new immunosuppressive drugs have developed. However, steroid dosage should be kept as low as possible and preferably withdrawn, because adverse effects of steroids are the most problematical in immunosuppressive drugs. The individual difference of efficacy and adverse effects of steroids depends on pharmacodynamics factor. We have been tried to resolve the dual nature of steroid therapy by steroid sensitivities test using peripheral blood mononuclear cell(PBMC). We clarified significant relationship in steroid sensitivity and clinical outcome, relative immunosuppressive efficacy of steroid, availability of methylprednisolone as immunosuppressive drug, utility for selecting patients who can sustain steroid withdrawal, and pharmacodynamic interaction of calcineurin inhibitors and steroids. We describe here not only results of pharmacodynamic research of steroid sensitivity test, but also comprehensive issues, i. e., history of steroid therapy in renal transplantation, action mechanism of steroid and factor of individual difference of steroid sensitivity, pharmacokinetics of steroid, suppression of hypothalamic-pituitary-adrenal system and immune system, adverse effects of steroid, and practice toward optimal steroid therapy for individual renal recipients.