- 著者
-
下郡 けい
- 出版者
- 日本リアルオプション学会
- 雑誌
- リアルオプションと戦略 (ISSN:21896585)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2019-01-31)
- 参考文献数
- 6
世界に先駆けて電力市場の自由化に取り
組んだ英国では,原子力発電事業が民営化
された1996 年に計画段階にあった加圧水
型原子炉(PWR)の新設計画が白紙撤回され
てから,EDF Energy のHinkley Point C 原子
力発電所建設計画が政府から計画承認を受
ける2013 年3 月まで,具体的な原子力発電
所の新規建設計画はなかった.
英国は,1989 年に電気法を制定し,1990
年には発電市場の自由化,1999 年には小売
市場の自由化が完了している.自由化され
た電力市場を背景に,英国はエネルギー政
策というよりも競争政策の中でエネルギー
安全保障や電源構成をとらえてきた.しか
し,2000 年代の環境変化を受けて,“競争”
から“支援”をともなうエネルギー政策へ
と転換する.2013 年12 月には,原子力発
電を含む低炭素電源導入促進へ向けた
FIT-CfD を盛り込んだ「エネルギー法」が成
立した.
本稿では,原子力発電の推進には政策的
な支援が重要な役割を果たしており,経済
性にのみ基づいて電源が選択されるような
競争的な市場の下では,原子力発電の新設
計画は困難に直面する,という仮説をたて,
英国においてこれまで原子力発電がどのよ
うに位置付けられ,それがどう変わってき
たのかを整理・分析し,日本への示唆を検
討する