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松尾 雄司
本稿ではまず既存の試算例を参考としてエネルギー源別の発電コスト評価の問題を検討・整理した上で,それを用いて2030 年の日本のエネルギーミックスに焦点を当て,その経済影響について評価を行った。2030 年に原子力発電比率を0%,15%,20 ~ 25% とするシナリオについて評価した場合,0% シナリオでは実質電力価格が2010 年比で2.1 ~ 2.6 倍程度まで上昇し,それに伴いGDP が減少する。特に輸送機械を中心とした輸出産業での生産・雇用減少が著しい。但しこの電力価格上昇の要因のうち最も大きなものはCO.削減コストの上昇であり,従ってその影響は原子力のみでなく,気候変動問題への対処に係る政治的・経済的な状況に強く依存する。また脱原子力の経済影響は,原子力と並ぶ低炭素電源である再生可能エネルギー発電のコスト低減やその導入可能性,国内生産比率等にも依存する。このため我々は常に長期の将来を見据え,明確なプランのもとに将来のエネルギーミックスを考えるとともに,各種エネルギー源の動向を適切に把握し,先入観にとらわれることなく,常に誤りのない判断を下す努力が必要である。