- 著者
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中俣 尚己
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.156, pp.16-30, 2013 (Released:2017-03-21)
- 参考文献数
- 11
「も」に関しては従来,意味による分類が行われていたが,この論文では構文のタイプが学習者の母語に存在するかしないかによって習得難易度に差があるのではないかという仮説を立て,JFL環境の中国語話者を対象に,3種の調査によってそれを検証した。理解について調べた文法性判断課題においては構文タイプによる差は見られなかった。しかし,産出について調べた翻訳課題ならびに作文課題においては,通常の「AもP」構文の使用に全く問題ない学習者であっても,「AもBもP」構文や「AもP,BもP」構文の使用は難しいという,母語の干渉の存在を支持する結果が得られた。この結果は,産出のための文法を考える際には,日本語学の視点のみから記述された文法では不十分で,学習者の母語についても考慮する必要があること,またJFL環境における検証調査の重要性を示している。