著者
横山 紀子 福永 由佳 森 篤嗣 王 瑞 ショリナ ダリヤグル
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.79-89, 2009 (Released:2017-06-21)
参考文献数
11

海外の日本語教育では,聴解技能が弱点であるばかりでなく,聴解技能開発の必要性やその方法論に対する認識が一般に低いことが指摘される。このような海外の日本語教育における課題を解決に導く事例として,カザフスタンおよび中国で非母語話者日本語教師が実践したピア・リスニングの試みを紹介した。ピア・リスニングとは聴解の過程をピア(学習仲間)で共有し,協力しながら理解を構築していく教室活動である。ピアの話し合いを文字化した資料および学習者からの意見聴取をデータとして,実践の成果を分析した。ピア活動では,言語知識の共有および欠落した理解を補う方策の共有が行われていた。また,ピア学習に合わせ,カザフスタンでは聴解を仮説検証的に進めていくためのタスク中国では学習者のモニターを促進するために「質問」を作るタスクを導入したが,これらのタスクとピア活動が相乗的な効果を上げたことを考察した。
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 森 篤嗣 川村 よし子 山本 和英 志村 ゆかり 早川 杏子 志賀 玲子 建石 始 中石 ゆうこ 宇佐美 洋 金田 智子 柳田 直美 三上 喜貴 湯川 高志 岩田 一成 松田 真希子
出版者
一橋大学
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-15)

平成27年度は、専属のプログラマーを9月末まで雇用し、横浜市との協働事業である公的文書書き換え支援システム、および、公的文書例文検索システムの開発を続けた。その過程で、「やさしい日本語」への書き換えの内容をチェックする「やさ日チェッカー」やその他、本事業に関連する言語ツールを開発した。JSL(日本語を母語としない)児童・生徒に対する言語教育(本研究において「バイパスとしての「やさしい日本語」」と称する活動)に関しては、教材開発の基盤となる文法シラバスについて、初級および中上級にわたり、包括的な新しいシラバスを作成し、論文として公刊した。それを踏まえ、横浜市教育委員会との協働のもと、横浜市内の中学校に日本語指導補助員として人員を派遣し、教材の試用を行い、本研究課題において作成する予定の教材のうち、第一段階(ステップ1)に当たる教材の試行版を完成した。漢字語研究については、中国語を母語とする大学院博士課程(日本語教育専攻)の学生3名を作業者として、日本語と中国語の漢語の語義の重なりとずれに関するデータベース作成に着手した。これは、本研究課題の射程をこれまでの非漢字圏話者だけでなく漢字圏話者にも拡張するための基礎研究である。ろう児に対する日本語教育に関しては、ろう児が聴児と同様、ごく早い時期から深層格を理解していることを実験的に明らかにし、ろう児に対する格助詞教育の基盤を確認した。本研究課題を含む、「やさしい日本語」研究のこれまでの成果をまとめた英文の論文を公刊し、海外の社会言語学への発信の基本的な情報提供に益することとした。
著者
齋藤 ひろみ 森 篤嗣 橋本 ゆかり 岩田 一成
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

平成27年度は次の3つの課題に取り組んだ。第1に、平成26年度(調査協力校が近隣の学校と合併した後)に収集した作文データを分析し、それ以前(平成20-25年、合併前)の結果との比較を行った。外国人児童比率の違いが作文力の発達に影響をもたらすのかに関し、作文産出量・文構造の複雑さ・内容(エピソード)構成に着目して、結果を考察した。その結果は、社会言語科学会(2015年9月・京都教育大学)で発表している。日本人児童の比率が高い学校の場合、低学年では日本人児童と外国人児童の差が大きく、高学年では日本人児童の作文に、内容の構造化や文章構成に統括型の整った作文が多いという特徴がみられた。今後も、継続的に学校内の外国人児童数の違いによる作文力の発達について探っていく。第2に、外国人児童のリテラシー発達のための教育・支援活動において、作文分析の結果をいかに生かせるか検討を行った。学校で実施されているリテラシー教育の現状を把握したうえで、科研のプロジェクトとしてこれまでに得られた知見を示し、国語科教育学領域の専門家とともに外国人児童のリテラシー発達のための授業の工夫や支援について、日本語教育学会のパネルでディスカッションを行った(2015年10月・沖縄国際大学)。第3に、関連のある他の科学研究費研究グループと、合同の科研報告会「多様な言語文化背景をもつ子どもたちのリテラシーフォーラム3 子どもたちの日本語の発達を可視化する ―語彙・文法の力に焦点を当てて―」(於:お茶の水女子大学)を開催し、現場の実践者や関連領域の研究者に対し広く成果を公開した。合同発表を行ったのは、基盤(C)「日本語を母語としない子どもの語彙とコロケーションの知識に関する研究」(西川朋美代表)と基盤(B)「多言語背景の児童を対象とした多層分岐適応型日本語力診断オンラインテストの開発」(酒井たか子代表)である。