著者
中富 康仁 倉恒 弘彦 渡辺 恭良
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.19-25, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は,慢性で深刻な原因不明の疲労,認知機能障害や,慢性的で広範な疼痛を特徴とする疾患である。われわれは世界で初めてME/CFS患者における脳内神経炎症をポジトロンエミッション断層撮影(PET)によって明らかにした。神経炎症は患者の広範な脳領域に存在し,神経心理学的症状の重症度と関連していた。現在,診断法および治療の開発につなげる研究がスタートしている。
著者
中富 康仁
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

CFS患者9名と健常者10名の脳を11C-(R)-PK11195を用いてPET検査で比較した。11C-(R)-PK11195はグリア細胞におけるTSPOと結合し炎症が起きた場所を可視化することができる。患者の脳内では主に、視床、中脳、橋、海馬、扁桃体や帯状回という部位での炎症が増加しており、炎症が強い患者ほど強い疲労感を訴えることが分かった。さらに、炎症が起きた部位とCFS/MEの各症状には相関があり、視床、中脳、扁桃体での炎症が強い場合は認知機能の障害が強く、帯状回や視床の炎症が強いほど痛みの症状が、また海馬での炎症が強いほど抑うつの症状が強いことが明らかとなった。