著者
織田 洋武 坪川 瑞樹 玉澤 賢 堀内 健次 鴨井 久博 中島 茂 佐藤 聡
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.384-392, 2011-12-31

銀は一般家庭において除菌,抗菌,脱臭などの目的で高頻度に使用されている.銀コロイド溶液は,銀を電気分解して精製される無色透明の溶液であり,銀イオンよりも安定した状態で殺菌力をもつことで注目されている.また,銀コロイドは,特殊イオン交換体の相乗作用により殺菌,抗菌,脱臭の効果が増強することが報告され,食品の消毒や医療分野への転用が期待されている.本研究は銀コロイド溶液の口腔内病原細菌に対する殺菌効果,ならびにヒト歯肉および歯根膜より分離培養した線維芽細胞への影響についてin vitroにて検証した.殺菌試験は,Streptococcus mutans (ATCC25175), Aggregatibacter actinomycetemcomitans (ATCC29522), Poyphyromonas gingivalis (W83, ATCC33277), Prevotella intermedia (ATCC25611), Fusobacterium nucleatum (ATCC25586)の6菌種を使用した.各細菌を洗浄後,滅菌蒸留水で希釈した銀コロイド溶液(1.5, 3, 30ppm)にて1分間処理した.その後希釈し,寒天培地に塗抹後A. actinomycetemcomitans, S. mutansは48時間, P. gingivalis, P. intermedia, F. nucleatumは72時間培養を行い,評価はColony Forming Units (CFU)で行った.細胞毒性試験は,ヒト歯肉線維芽細胞とヒト歯根膜線維芽細胞を用いた.細胞を培養後,滅菌蒸留水で希釈した銀コロイド溶液(1.5, 3, 30ppm)を30秒,1, 2, 4分間それぞれ作用させた.その後,8日間の細胞増殖の変化を測定した.また,歯肉線維芽細胞と歯根膜線維芽細胞に対し,銀コロイド溶液を1〜100ppmに調整した培養液にて培養し,検討を行った.その結果,30ppmの銀コロイド溶液はS. mutans (ATCC25175), A. actinomycetemcomitans (ATCC29522), P. gingivalis (W83, ATCC33277), P. intermedia (ATCC25611), F. nucleatum (ATCC25586)の6菌種に対して完全な殺菌効果を示し,1.5ppmと3ppmの濃度においても有意な細菌の殺菌力を示した.さらに銀コロイド溶液は30ppmの濃度において歯肉線維芽細胞と歯根膜線維芽細胞に抑制作用を示した.この作用は希釈により低下し,20ppmにおいては抑制作用を認めなかった.細胞生存率は,100ppm以下の濃度において歯肉および歯根膜線維芽細胞のLD50値は観察されなかった.以上の結果から,銀コロイド溶液は宿主細胞に影響しない濃度下で口腔内病原細菌に対して強い殺菌作用を示すことが認められた.
著者
赤澤 史朗 小関 素明 中島 茂樹 福井 純子 梶居 佳広
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、現在の憲法改正論議の枠組みが形成された1950年代の憲法論議を、総発行部数の約半数を占める地方紙の論説を主対象として資料収集し、検討するものである。その成果の刊行は、『立命館大学人文科学研究所紀要』97号の特集「1940~50年代の日本の憲法と政治」と、全国の地方紙論説を500点に絞った資料集である、報告書『1950年代の憲法論議-地方紙を中心として』によって実現された。
著者
中島 茂樹
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ポスト冷戦世界で進行するグローバリゼーションの下で、国家は、対外的に主権を有しており、国内的にはヒエラルヒー的従属関係によって特徴づけられており、議会によって制定された法律を基礎にして社会の発展を形づくる、というイメージはますます過去のものになっている。グローバリゼーション下の国家と経済との融合化によって、国家の性格は大きく変貌を遂げ、「国家」と「経済」、「国家」と「社会」、「公」と「私」の境界はますます不確かなものになっている。かくして、問題は、社会におけるもろもろの公的に重要な任務のうち、いかなるものを国家的任務とし、いかなるものを私的団体の自律に委ね、いかなるものを個人の自己決定に委ねるか、ということである。このような問題は、現行憲法の枠内では、本来的に立法者による民主的決定の問題であることはいうまでもないが、しかし、そもそも立法者はこのような問題についての決断の正当性を何によって根拠づけようとするのか、そしてまた、憲法は、私的団体や個人について、どのような仕方で、どこまでを規制対象におくことができるのか、等々の問題が問われることになる。本稿は、主としてドイツおよびわが国における「公共性」や「公共圏」に関する議論をもふまえながら、現代の議会民主政にとって不可欠な媒介機能のゆえに、国家と社会とのシステム境界上に位置づけられる政党への国庫補助の憲法上の許容性をめぐって、その場合に問題となる国家の正統性基準としての公共性という観点から検討し、その研究成果をまとめたものである。